ノーベル賞の授賞者多い京大 首都圏からの合格者倍増の理由

京都大学出身者が2年連続ノーベル賞を受賞 全国化が進み、首都圏からの合格者増加

記事まとめ

  • 京都大学出身の吉野彰氏は、リチウムイオン電池を開発してノーベル化学賞に輝いた
  • 昨年、生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏に続き2年連続で京大出身者の受賞となった
  • 京大は10年前と比べ全国化が進み、首都圏からの合格者が増えているという

ノーベル賞の授賞者多い京大 首都圏からの合格者倍増の理由

ノーベル賞の授賞者多い京大 首都圏からの合格者倍増の理由

京都大学正門(時事通信フォト)

 リチウムイオン電池を開発してノーベル化学賞に輝いた吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)。同氏の出身大学は「自由な学風」として知られ、異才も多い京都大学。昨年の本庶佑氏に続き、2年連続で京大OBのノーベル賞受賞は快挙といえる。そんな京大は受験人気もぐんぐん高まっている。大学通信・常務取締役の安田賢治氏がレポートする。

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“研究の京大”の面目躍如だろう。昨年に続き、今年も京大(工学部石油化学科)出身の吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞した。昨年の医学部出身で生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏に続き2年連続で京大出身者の受賞となった。

 これで京大出身者のノーベル賞受賞者は8人になり、東京大学と同じになった。ただ、東大には文学賞2人(川端康成氏、大江健三郎氏)、平和賞1人(佐藤栄作氏)が含まれ、研究業績での受賞ということになると京大がトップだ。ちなみに、私立大出身者はいまだノーベル賞を受賞していない。

 その京大だが、最近、受験人気が上がってきている。大学通信の調べによると、10年前と比べて、京大は地元の2府4県(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)からの合格者の割合は55.3%から47.6%に下がっている。いずれの大手大学でも地元志向が高まる傾向にあるが、京大だけは明らかに全国化が進んでいる。

 一方、東大の首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)からの合格者の割合は、10年前の43.3%から55.8%に増え、関東ローカル化が進んでいる。地元からの合格者の割合が、10年前と比べて京大と東大で逆転してしまったのである。

 人気アップの京大だが、なかでも首都圏からの合格者が増えている。10年前の首都圏からの合格者の割合は全体の6.6%だったが、今年は13.4%に倍増している。

 今年の京大合格校の顔ぶれを見ると、首都圏では国立(東京)19人を筆頭に、浦和・県立(埼玉)18人、西(東京)16人、海城(東京)15人、麻布(東京)13人、千葉・県立、渋谷教育学園幕張(千葉)、桐朋(東京)各10人、小石川中教、開成、渋谷教育学園渋谷(いずれも東京)各9人などとなっている。トップ3はいずれも公立高だ。

 特にトップの国立は東大合格者が16人で、東京にある学校にもかかわらず、東大より京大合格者のほうが多い。京都で学びたい受験生も多いようだ。

 女子校では女子学院(東京)6人、桜蔭(東京)、雙葉(東京)、洗足学園(神奈川)各4人など。東京にも多くの大学があるが、一人暮らしをしてでも京大で学びたいということだ。1校当たりの合格者数は多くないが合格校は多い。

 学校事情に詳しい安田教育研究所の安田理代表は、「首都圏の優秀な女子層は、東大の権威主義的で縦割りの古い体質を嫌い、女性教員が少ないことも敬遠されている理由と聞きます。それもあって首都圏で自由な校風の京大人気が高まっているのでしょう」と言う。

 京大への首都圏からの合格者が増え始めたのは2012年からだ。合格者が前年の188人から244人に56人も増えた。これは2011年の3月11日に起こった東日本大震災の影響が大きかったと見られる。

 この年は余震が続く中、震災直後はコンビニで食料品、飲料水が品切れ状態になり、東京電力福島第一原発の事故により計画停電が実施され、首都圏では水道水のヨウ素が基準値を超え乳幼児に水が配られるなど、世の中は騒然としていた。この時の受験生は、東京にいてはゆっくり勉強できないと考え、京大志望に切り替えたと見られる。

 そのうえ、2012年には山中伸弥教授がノーベル賞の生理学・医学賞を受賞する。現役の京大教授ということもあって、京大人気はより一層高まり、2013年入試では首都圏からの合格者がさらに増えた。今年はじつに381人が合格している。

 京大人気が高まっている要因について、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は、こんな見方をしている。

「京大は高校や地方などでの説明会に力を入れていることが人気アップの一因です。模試の結果から見ると、来年入試でも京大の首都圏からの志望者は増えており、その分、東京工業大、一橋大の志望者が減っています。

 ただ、ノーベル賞受賞者が京大出身といっても、受験生は今からでは志望変更はしないので大きな影響はないでしょう」

 昔のように東大がダメなら京大という選択は今はない。東大がダメなら東京工業大や一橋大を目指すのが普通だ。京大は高校3年の早い段階から目指すようになってきている。入試では京大は学部学科別に募集しており、東大のように入学後は文科I類など学類別に分かれ、学部学科への進学は3年生からというのとは異なる。大学で何を学びたいか決まっている受験生にとっては、京大のほうが自分のやりたいことをすぐに学べる利点がある。

 ノーベル賞を受賞した吉野氏は北野高校出身だが、その北野は2年連続で京大合格者数トップだ。興味深いことに、27人いるノーベル賞受賞者は公立高出身者が圧倒的に多い。

 私立高では1973年に物理学賞を受賞した江崎玲於奈氏が同志社(京都)、2001年に化学賞を受賞した野依良治氏が灘(兵庫)出身と、この2人だけが私立校出身者だ。ちなみに野依氏も京大出身だ。生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏は、大阪教育大付天王寺高出身で国立高出身は1人だけ。

 日本で最初にノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹氏は洛北(京都)〜京大で、2番目に物理学賞を受賞した朝永振一郎氏もまったく同じ。ノーベル賞を2人も輩出した高校は洛北だけだが、かつては府立高校だった洛北も今や公立一貫校に変わっている。

 時代とともに、京大入学者の高校の顔ぶれが変わってきているように、ノーベル賞受賞者の出身高校も変わっていきそうだ。

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