67歳・男性観光ガイド 新宿飲み歩きツアーの収入は月5万円
2019年10月26日 16時00分 NEWSポストセブン

観光ガイドの下牧眞さん
「定年後の働き先」の第1選択肢となるのが継続雇用だ。内閣府の「高齢社会白書」によると、定年退職者の約8割が選択している。ただし、給与は大幅減額となることがほとんど。仕事内容も責任を感じられなくなり、肩身の狭い思いをすることも少なくない。
定年後世代の働き方のサポートをするライフシフト・ジャパンの大野誠一代表は、「アルバイト生活に転じる」という選択肢に注目してほしいとする。
「やりがいのない仕事を長く続けるというのは体力的にも精神的にも厳しい。それなら自分のやりたかった仕事や社会に貢献できる仕事をアルバイトで実現するのも手です。収入が減ることを気にする方もいますが、“老後資金2000万円不足問題”は、30年間の総額なので、年金プラス月5万円あればいい。この額ならアルバイトで十分賄えます」
本誌・週刊ポスト読者アンケートで「これからやってみたいアルバイト」を調査すると、コンビニ店員や警備員といった定番だけでなく、社会に役立てる、人々から感謝される仕事をしたいという声が多数寄せられた。
東京五輪を控え、需要が高まっているのが外国人向けの観光ガイドだ。
「新宿での飲み歩きツアーや築地食べ歩きツアーなどの案内をしています。いろんな国の人と話ができて楽しい仕事で、『またお願いします』と言われるのが、何ものにも代えがたい喜びですね」
そう話すのは下牧眞さん(67)。ベビー用品会社を65歳で退職したあと、訪日観光客向けツアーを提供する「マジカルトリップ」でアルバイトを始めた。この日も外国人観光客を連れて新宿の「思い出横丁」などで3軒の居酒屋をハシゴして、日本の文化や歴史について語り合ってきたという。
もともと、現役時代の海外出張で鍛えたビジネス英語を活かした仕事がしたいという思いがあった。
「定年後に『全国通訳案内士』という資格を取得しました。その後、インターネットで、マジカルトリップを見つけ、試験を受けてガイドとして登録されました」(下牧さん)
同社では、全国で約40種類の観光ガイド付きツアーがあり、報酬や勤務時間の希望に応じて働ける。
「新宿飲み歩きツアーなら、ガイド料は1回3時間5000円で、別途、交通費と飲食費の一部が出ます。月に10回くらいで収入は月5万円ほど。決して高くないですが、やはり楽しい。定年後に出かける場所があるのはいいこと。家にいないので女房も喜んでいます(笑い)」(下牧さん)
有償で通訳ガイドをするには、「全国通訳案内士」の資格が必要だったが、2018年1月に規制緩和され不要になった。運営元のライブラ社の広報はこういう。
「ガイドの登録に必要な選考としては、書類審査や面接、テストに加え、ツアー帯同の実地研修があります。資格が不要な分、応募者が多いので、合格率は20%ほど。60代の方は下牧さんが初めてでしたが、知識も豊富で話術に長け、今やツアーの看板ガイドです」
日本の文化や歴史の知識も求められるため、若い世代よりも定年後世代が重用されることが増えそうだ。
※週刊ポスト2019年11月1日号