留年率が高い大学&学部の特徴 難関大で「6割」も

留年率が高い大学&学部の特徴 難関大で「6割」も

いまどきの留年事情とは(写真:アフロ)

 読売新聞社の調査によって、全国の大学の「留年率」が明るみになった。意外な学部における意外な留年理由とはなにか。コラムニストのオバタカズユキ氏が分析する。

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 日本人の中にある“常識”の一つに、「日本の大学は入るのが難しくて出るのは簡単、欧米の大学は入るのが簡単で出るのは難しい」というものがある。欧米の大学が本当にそうなのか、入るのも難しい大学だって結構あるような気もするが、一方の日本の大学は昔も今もそう思われている。

 大学入試さえ突破すれば後は楽勝だ、というイメージ。よっぽどサボらなきゃ、4年で卒業して当然という感覚。『大学図鑑!』という本を18年間も出し続けている私の中にも同じ“常識”があるのだが、実際の大学状況をつぶさに見ると、そんなの昔話だよ、と思う大学生がかなりいると分かる。

 読売新聞が毎年行っている大規模調査をまとめた『大学の実力2017』が、先日、子会社の中央公論新社から出版された。同調査は、全国の大学に調査票を送り、入試の内実から教育体制の詳細までさまざまなデータを明らかにするものだ。今回は調査票を送ったうちの91.4%、682大学から回答を得たとのこと。他にはないデータが多く、その信頼性も高い貴重な調査だ。

 その『大学の実力2017』を眺めていて、ふーむ、と思ったのが、上記の“常識”について。具体的には、大学・学部別に報告されている留年率(入学者数に占める留年者数の率)についてなのだが、「出るのは簡単」にしてはやたら高い数字が一覧表に散見されるのである。

 小さな文字がぎっしり詰まったデータの一覧表から目視で拾ってみると、留年率の高い順にこんな具合となっている(非公表の大学もあるので順位付はやめた)。大学・学部(学科)名のあとに留年率の%の数字を添えた。

〔50%オーバー〕
大阪・外国語67.8、東京外国語・国際社会65.7、東京外国語・言語文化64.5、神戸市外国語・外国語56.4、いわき明星・薬55.1、愛知県立・外国語54.3、金沢・国際(人間社会)52.0、第一薬科・薬51.8、東京神学・神50.0、鶴見・歯50.0

〔40%オーバー〕
神戸・国際文化48.6、国際教養・国際教養48.5、日本・松戸歯47.4、創価・経済45.6、上智・外国語44.8、朝日・歯44.3、宇都宮・国際43.6、青森・薬43.4、立命館アジア太平洋・アジア太平洋42.2、東京・医(健康総合科)41.7、明星・情報41.4、九州保健福祉・薬(薬)40.7

〔30%オーバー〕
筑波・社会・国際39.3、九州・21世紀プログラム39.3、東京・教養(後期課程)38.8、千葉科学・薬(薬)38.6、太成学院・経営37.5、東京・文37.3、就実・薬36.1、創価・文36.0、日本・薬35.8、広島国際・薬35.3、立命館アジア太平洋・国際経営35.1、徳島・歯(歯)35.0、北海道医療・薬34.6、京都・法33.6、京都・文33.3、名古屋市立・医32.6、星薬科・薬(創薬科)32.4、長崎・歯32.0、法政・グローバル教養31.9、苫小牧駒沢・国際文化31.7、東京・法30.9、獨協・国際教養30.9、帝京・医30.8、琉球・観光産業科30.3、四條畷学園・リハビリテーション30.0

 国公立か私立かの別を略し、学部の系統も一緒くたにしたので、パッと見、なんのことやらと感じるかもしれない。が、いまいちど「入学者の30%以上も留年者が出る大学・学部」という意識で、全体を見てほしい。いくつかの傾向が見えてくるはずだ。

 まず気になるのは留年率60%オーバーの3つの大学・学部だが、それについてはひとまず置いておく。目線を〔40%オーバー〕と〔30%オーバー〕のほうに移していただきたい。学部(学科)名で、目立つ漢字が拾えると思う。

 そう、「薬」「歯」「医」である。一般的には医歯薬系と括られる学部(学科)で高留年率のところが多いのである。特に、私立の薬学部、歯学部が目立つ。医学部についてもそうなのだが、その理由は、そこに入ったからには絶対に受からなきゃならない国家試験があるから。

 医歯薬系の学部(学科)の多くは、入学直後から頻繁に試験などを行い、一定レベルを超えられない学生をどんどん落としていく。そうやって国試を突破できるだけの学力を身につけさせるし、身につかなければ留年させてでも繰り返し勉強させる。その結果、退学者もけっこうな率で出しているのだが、それより大学は国試合格率を気にする。

 患者の命に関わる仕事に就こうという学生たちなのだから、そのくらい厳しくやってくれて助かる、と患者側の我々は思うが、当人やその保護者は大変だ。医歯薬系大学にたまたま合格したはいいが、やっぱり学力不足で入学してからついていけない……のは自業自得といえるけれど、その学問や職業が実は合わなかったというミスマッチの場合、ちょっと悲劇だ。

 18歳かそこらで職業適性を見極めるのは難しい。が、医歯薬系は高校生段階でそれを決めなければならず、どうしたって「ミス」が出る。それに本人が気づき、早いうちに他学部・他学科へ編入するなど、進路の変更ができればいいが、下手に頑張って留年が重なると、精神的にきついし、ただでさえ高い学費がドンドンかさんで保護者も大変だ(ただし、大学によっては留年者の学費を安価にするなどもしている)。そのへんの現実を、大学受験前に受験生と保護者はしっかり知っておく必要がある。

 で、先ほど横に置いておいた件に戻る。東京外国語大学の2学部、大阪大学外国語学部がトップ3になっている。それ以下を見ても、「外国語」「国際」がらみの大学・学部の留年率がとても高い。その理由は何か。

『大学の実力』は、〈海外に飛び立ち、学んだ結果、留年する学生が急増しています。大学間の協定に基づく交換留学に加えて、私費留学や、海外で働きながら学ぶことを選ぶ学生が増えているためで、留学を後押ししている大学では、留年率が7割近くにも達していました〉と解説している。

 また、それらの学部で留年をするケースの〈多くは就職活動と帰国時期が重なり、半端な時期から就職活動に参加するよりは留年し、次の年の就職戦線に臨みたいという学生だといいます〉ともある。

 つまり、つまりグローバルな学生がドメスティックな新卒一括採用という制度にはじかれて、留年を余儀なくされているわけだ。大学生や大学はそれなりにグローバル化しているが、日本の企業の人事面がまだグローバルのグの字にも追いつけていない、ともいえよう。

 この本もそうだったが、多くの識者が、「だから、新卒一括採用なんて古い風習を捨て、通年採用に切りかえよ」と言う。私は、企業の採用活動の負担面や、いっせーのせで就活が始まらないと自分から動かないでずるずるしちゃう学生が実はすごく多い、という観点から、新卒一括廃止論には反対だ。

 でも、学生たちは多様化してきているし、日本人はもっと多様であるべきである。だから、たとえばこうした留学で就活が困難になってしまう学生などをイメージして、体力のある大企業が採用の一部を通年化するなど、就活の複線化を推し進めるのが落としどころだと思う。

 それにしても、東外大や阪大外国語、秋田の新星・国際教養大、上智大外国語といった難関大に入っても半分前後が留年というのは異常だ。ザ・グローバル大の立命館アジア太平洋大も、かなりの留年者を出している。そこには、この国の保守的体質がリアルに表れている。

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