富山県民はリッチなのに、なぜ世帯主の小遣いは少ないのか

富山県民はリッチなのに、なぜ世帯主の小遣いは少ないのか

サラリーマンの小遣い額は地域によって大きな格差も

 今年も早いもので、残すところ2か月を切った。年末は忘年会やクリスマスなど何かと出費が多い時季。そこでサラリーマンの小遣い最新事情を探ってみると、意外な事実が続々と判明した。『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』の著者でジャーナリストの山田稔氏が小遣い事情の“謎”を追う。

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 まずは新生銀行の「2019年サラリーマンのお小遣い調査」(調査対象2717人)の結果をみてみよう。男性会社員の毎月のお小遣い額は3万6747円で前年よりも3089円の減少で、1979年の調査開始以来2番目に低い金額だ(最低は1982年の3万4100円)。女性会社員は3万3269円で過去最低額。1日あたり1100円から1200円だから厳しい数字だ。

 男性会社員の中で最も低いのは40代で3万3938円。住宅ローンや教育費で小遣いが削られているのだろう。男女含めた世代別の最高は20代女性会社員の4万1122円だった。

 ところで小遣いの使途はどうなっているのだろう。使用額でみると男性の上位は、(1)飲み代1万2665円(2)趣味の費用1万2316円(3)車関係・ガソリン代1万1385円(4)昼食代9235円(5)携帯電話代9180円と続いている。

 女性の場合は、(1)趣味の費用1万1185円(2)ファッション費用9824円(3)車関係・ガソリン代9457円(4)携帯電話代8995円(5)飲み代8778円の順。

 毎日欠かせない昼食代は、男性の1日平均額は555円(前年比15円減)、女性は581円(同5円減)と、女性の方がわずかにお金をかけている。いずれにしても、ほぼワンコインランチだ。

 これからの時季に増える飲み代は、男性1万3175円(1回5415円)、女性9493円(同4288円)となっている。男性の29.1%は「外で飲む回数を減らしている」、女性の49.1%は「弁当を持参するようにしている」と回答。やりくりに苦労している様子が伝わってくる。

◆家計調査で浮かび上がった小遣い格差〜最多の高松市は最少・宮崎市の2倍以上

 次に、小遣いの地域別の状況を探っていこう。ここで取り上げるのは総務省統計局が毎月実施している家計調査。食料、住居、交通・通信、教育など家計収支の実態を調査したもので、その中に「こづかい(使途不明)」という項目がある。

 気になるのは「使途不明」の4文字。総務省に確認すると、民間調査でいう小遣いには、昼食代や飲み代、携帯電話代などが含まれるが、家計調査ではそういった日常的な費用は外食や通信費などに計上されるため含まれないという。

 そのため「こづかい」の額は民間調査の3分の1程度になる。あくまで推測だが、旅行の際に持っていくお金(交通費、宿泊費以外)や、へそくり、ギャンブルなど家計簿にあらわれないものが含まれているのではないか。

 ともあれ県庁所在地、政令指定都市別に2人以上世帯の年間の額を調べてみた。全国平均は、世帯10万6188円(月額8849円)で、内訳は世帯主8万5250円(同7104円)と、その他(同居家族)2万938円(同1745円)だ。

 上位5都市は下記の通り(金額は左から順に、世帯合計、世帯主、その他。カッコ内は月額)。

【1位】高松市/17万7641円(1万4803円)/13万4349円(1万1196円)/4万3292円(3608円)
【2位】富山市/16万9597円(1万4133円)/4万8149円(4012円)/12万1447円(1万121円)
【3位】水戸市/14万5703円(1万2142円)/12万1787円(1万149円)/2万3916円(1993円)
【4位】福岡市/14万3620円(1万1968円)/10万7596円(8966円)/3万6023円(3002円)
【5位】岡山市/12万9812円(1万818円)/10万2823円(8569円)/2万6989円(2249円)

 最も低いのは宮崎市で、世帯7万3806円(月額6151円)、世帯主6万1568円(同5131円)、その他1万2238円(同1020円)となっている。世帯で見ると、最多の高松市の「こづかい」は最少の宮崎市の2.41倍となる。ちなみに、東京都区部は世帯9万9918円で全国平均以下だった。

 上位5都市の勤労者世帯の実収入(月額)を調べてみたが、高松、富山、水戸の3市は全国平均を上回っているが、福岡、岡山の両市は平均以下。最下位の宮崎市は実収入も全国平均を大きく下回っているので、ここは相関関係がありそうだが、上位に関しては収入との関係性よりも県民性や居住環境などが影響しているのかもしれない。

◆最大の謎は「富山市」世帯主よりも同居家族の方が3倍近い!

 地域によって小遣い額にずいぶんと差があることが分かったが、ここでひとつ大きな謎が生じた。富山市の小遣いの内訳である。

 世帯全体の小遣い(月額)1万4133円のうち、世帯主はわずか4012円。3分の1にも満たない。逆に他の同居家族は1万121円もある。他の都市は世帯主の小遣いが7割から8割を占めているのに、富山市だけが正反対の結果となっている。47都道府県の県庁所在地、政令指定都市のデータを再度チェックしたが、世帯主の小遣いが少ないのは富山だけである。いったいなぜなのか?

 富山県の統計調査課の方に素朴な疑問をぶつけてみたところ、返ってきた答えは……。

「ご指摘いただいて初めて気が付きました。過去3年分を調べてみたのですが、やはり同様の結果でした。どうしてか、はっきりした理由はわかりません」

 小遣いの絶対額が多いのは、世帯収入の多さ(勤労者世帯の月間の実収入は61万8950円で全国平均の55万8718円を6万232円も上回り、全国7位)や、世帯構成員の多さ(全国3位)、有業人員の多さ(共働き世帯の多さ=全国2位)、配偶者の収入の高さ(全国6位)、持ち家率の高さ(全国1位)などが背景にあると思われる。これは県の担当者の方も指摘していた。

 しかし、世帯主の小遣いが圧倒的に少ない理由の謎は解けない。ということは、やはり奥さんが家計の実権を握っていて、夫への配分が少なくなっているのだろうか。県の担当者に確認すると、「奥さまが家計を握っていらっしゃるのは一定の世代(高齢世代)だけではないでしょうか。若い世代は違うと思いますね」とのこと。どうもスッキリしない。

 そこで富山在住30年以上の知人夫妻(60代)に、夫の小遣い事情を尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。

「最近はスタバやコメダ珈琲が出てきたけど、もともと喫茶店も少なく昼食も弁当が当たり前。ふだんは会社に行くときにランチジャーとスープジャー、水筒を持たされ、外で物を買うといったら週刊誌ぐらい。使うことがないから銀行のカードも持ち歩かない。持っているのはガソリンスタンドで使うクレジットカードぐらい。休日は遊ぶ場所も少ないから、自宅でDIYが多いかなあ」(夫)

 別の富山在住者(50代男性)は「海も山も車で行けばすぐ。アウトドアで遊ぶ分には金はかからないよ」とおおらかだ。

 これならば多額の小遣いは不要かもしれない。しかし、他の家族の小遣いが多いのはなぜか。

「3世代同居で夫婦共働きという家庭が多いことが関係しているかも。家ではおばあちゃんが家事をして、おじいちゃんが孫の保育園や学校、野球やサッカーの送り迎えをしている。それが日常的な光景です」(妻)

 都会ではほとんどみられない、ほのぼのとした家庭像が浮かんでくる。そうした環境の中で、世帯主だけでなく、奥さんと同居する両親、そして子ども(複数かもしれない)、合わせて4人以上の小遣いが、分け隔てなく割り振られているのだろうか。あるいは同居する両親に家事や、子供の面倒を見てもらっているので多めに渡しているのだろうか。

 謎の完全な解明には至らなかったが、一連の取材で富山の人々の裕福な経済環境と堅実なライフスタイルを垣間見ることができた。標高3000メートル級の山々が聳える立山連峰と天然のいけすと言われる富山湾という大自然に囲まれ、おいしい水と海産物、そして自然の遊び場に恵まれた豊かな暮らし。これならば小遣いなんて少なくてもいいか。

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