ヤクザの葬儀は組の「興行」 数百万円の香典を包むことも

溝口敦氏と鈴木智彦氏が暴力団の葬儀語る 香典は組のもの、遺族にはほとんど渡さず

記事まとめ

  • 共著『教養としてのヤクザ』が話題の溝口敦氏と鈴木智彦氏が暴力団の葬儀を語った
  • ヤクザの葬儀は組にとって"興行"であり、遺族に香典はほとんど渡さないという
  • ある組長の妻が葬儀の後、「香典がもらえない」と泣いていたこともあったとか

ヤクザの葬儀は組の「興行」 数百万円の香典を包むことも

ヤクザの葬儀は組の「興行」 数百万円の香典を包むことも

溝口敦氏(左)と鈴木智彦氏

 ヤクザは冠婚葬祭など“義理ごと”を大事にするのが特徴。彼らには彼らなりの独特のルールがある。共著『教養としてのヤクザ』(小学館新書)が話題を呼ぶ溝口敦氏と鈴木智彦氏の2人が語り合った。

溝口:彼らは死んだ後もヤクザ社会のルールに縛られます。ヤクザの葬儀は、組にとっては“興行”であって、香典は組のもの、遺族にはほとんど渡しません。

鈴木:ヤクザの看板でやる葬儀は組の行事であって、遺族は遺族で別に葬儀をすればいいという考え方ですからね。ある組長の奥さんが、葬儀の後に「香典がもらえない」って泣いていたこともありました。

溝口:祝儀、不祝儀の包み金を「義理かけ」と言います。知り合いの組の者に何かあれば金を包む。自分に慶弔ごとがあれば、相手もほぼ同額を包み返す。そういうやり取りで暴力団同士の関係が成り立っています。

鈴木:私がある暴力団の葬儀で目撃したのは、同じ組の3人がそれぞれ800万円、計2400万円の香典でした。大きな組織の幹部クラスになると、それぐらいの額を出し合うわけです。

溝口:昔はヤクザの葬式の夜は博奕をやって、葬式を出した組が胴元になって参列者が香典のほかに儲けさせるということもあった。

鈴木:今は葬式も大々的にできないですしね。逆に最近は、組事務所をめぐって組長の死後に組と遺族で揉めるケースが増えています。組事務所は、組のものだけど名義は組長の所有物になっている。死んだら昔は跡目を継いだ次の組長が遺族に金を払って譲り受けるんだけど、今はそんな金が払えないものだから、遺族もなかなか事務所を渡してくれない。それで揉めているケースを結構聞きます。

溝口:暴力団というのは、親分と子分の疑似親子関係、疑似家族関係なんです。その親分が死ぬと、疑似家族と本当の家族との間でトラブルになることは、ヤクザの因果なのかもしれません。

【プロフィール】
◆すずき・ともひこ/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』『ヤクザと原発』『サカナとヤクザ』など。

◆みぞぐち・あつし/1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。ノンフィクション作家。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』『さらば! サラリーマン』など。

※週刊ポスト2019年11月29日号

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