新国立競技場完成 1日2800人、約150万人従事の大事業だった

新国立競技場完成 1日2800人、約150万人従事の大事業だった

建設初期(2017年3月1日に撮影)の様子

 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場が、最後のチェックを終えて11月30日に完成する。

 12月中旬に竣工式を行ない、12月21日にはオープニングセレモニー、元日にはサッカー天皇杯決勝が開催される予定だ。空から見下ろすと、紅葉する明治神宮外苑の杜に、眩い光を放つ白い屋根が輝いている。

「木と鉄を組み合わせたハイブリッド構造の屋根に、47都道府県から調達した木材を使った軒庇など、木を多用しているのが特徴です。従来の競技場と違ってコンクリートの外壁がないので、6万8000人を収容する巨大スタジアムなのに圧迫感が抑えられ、見た目がスッキリしています」(建築アナリスト・森山高至氏)

 振り返れば、スタートから前途多難だった。当初は建築家の故ザハ・ハディド氏のデザイン案が採用されるも、2520億円に膨らんだ工事費が問題視され、2015年7月に白紙撤回となる。代わって建築家・隈研吾氏の「杜のスタジアム」案が採用され、2016年12月、当初の予定より1年以上遅れてようやく工事が始まった。

 予算と工期に余裕がない状態で、最難関とされたのがフィールドに約60mせり出した屋根工事だった。競技場の整備を担うJSC新国立競技場設置本部、高橋武男氏が振り返る。

「組み立てられた屋根部材をクレーンで吊り上げ、上空でつなげていくという難しい工事でした。地上約50mでの高所作業になるので、職人さんの安全対策が第一です。工事に先立ち、実物大のモックアップを作って施工検証を実施し、安全面の検証や施工手順の確認を行ない、本番の屋根鉄骨工事は2018年2月から1年1か月かかりました」

 ピーク時は1日2800人、のべ150万人の作業員が働いた。総工費1569億円はザハ・ハディド案より低いものの、膨大な予算の巨大プロジェクトであることに変わりはない。予算管理上の苦労もあったと高橋氏は言う。

「これだけのプロジェクト規模だと、建築中の設計変更は避けられません。そこで事業者である大成・梓・隅共同企業体と毎週ミーティングを行ない、設計変更で予算増が見込まれると、削れる部分を再検討するなど、コストコントロールを徹底しました」

 3年の工期を経てついに出来上がったのが、木のぬくもりを大切にし、神宮外苑の自然との調和を目指した「杜のスタジアム」だ。低木を含め4万8000本、130種が植樹され、水が流れるせせらぎも整備された。

「これまでのゴタゴタを払拭する出来栄えだと思います。ただ完成はゴールであると同時に、新たなスタートでもあります。五輪終了後を見据えて、今後はスタジアムの活用方法を議論していく必要があるでしょう」(森山氏)

◆取材・文/戸田梨恵 撮影/小倉雄一郎

※週刊ポスト2019年12月6日号

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