鉄道高架下の商業施設の開発加速 事業収入を支える柱に

鉄道高架下の商業施設の開発加速 事業収入を支える柱に

記事画像

 鉄道高架下というと、通り過ぎる電車がたてる音を聞きながら、仕事帰りに一杯楽しむ小さな店舗がずらりと並び……という光景がかつては広がっていた。ところが建築物が老朽化し、耐震基準も問われるようになり、高架下も再開発が迫られ次々と姿を変えている。保育所や賃貸住宅、ホテルなど様々な業態へと衣替えをしているなか、JR東日本都市開発による従来とは異なる商業施設への脱皮について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 2019年12月12日、JR山手線の秋葉原駅-御徒町駅間に複合商業施設「SEEKBASE AKI-OKA MANUFACTURE(シークベース アキオカ マニュファクチュア)」が開業した。同施設はJR東日本都市開発が手がける高架下商業施設のひとつ。

 JR東日本都市開発は両国駅に併設した「-両国-江戸NOREN(えどのれん)」など、JR東日本が保有する遊休資産を活かす都市開発を担当している。JR東日本のグループ企業には、同種の都市開発事業者が複数存在する。数多あるJR東日本系列の都市開発事業者のなかで、JR東日本都市開発の得意分野とされているのが高架下開発だ。

 JR東日本都市開発は、中央線の高円寺駅-阿佐ケ谷駅間の高架下開発なども手がけてきた。同社は秋葉原駅-御徒町駅間の高架下空間を"アキオカ"と名付け、最重要拠点に位置付けている。

「JR東日本都市開発が本格的に秋葉原駅-御徒町駅間の高架下開発に着手したのは約10年前に遡ります。そして、2010年に"ものづくり"をテーマにした『2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケーゴーヨンマル アキオカ アルチザン)』をオープンさせました」と話すのはJR東日本都市開発事業本部開発調査部の担当者だ。

「2k540 AKI-OKA ARTISAN」(2k540)という奇妙な施設名は、東京駅を起点に2540メートルの地点にあることを表している。同施設の特徴は、高架下の空いているスペースを商業施設化したというだけではない。

「2k540の所在地は台東区です。台東区は職人が多い街としても知られます。そうした特色を活かすため、2k540では"ものづくり"をコンセプトにした店舗構成にしました。そのため、2k540の店舗のほとんどが、店内に作業ができる工房を備えています」(同)

 今般、人口減少によって鉄道事業者は乗客から得る運輸収入が頭打ちになっている。そうした運輸収入の減少を補うべく、鉄道事業者は駅という資産を活かして不動産の事業収入で稼ぐ傾向が強まっている。

 これまで、鉄道事業者の不動産事業といえばターミナル駅に併設した駅ビル事業が主力だった。高架下は遊休空間とされ、あまり有効活用されていなかった。高架下の活用方法は駐車場や駐輪場、倉庫などしかなく、鉄道事業者に収益的なメリットは少なかった。そのため、鉄道事業者は高架下に空きが生まれる立体交差化に消極的だった。

 近年、保育所不足による待機児童問題が表面化すると、高架下の遊休地を保育所として活用する動きが強まる。

 そこから、鉄道事業者は高架下の可能性を模索するようになる。例えば、東急電鉄は2016年に中目黒駅の高架下を商業空間として活用。これが好評を博したことから、翌年には店舗を拡大した。

 扱い方ひとつで高架下が大化けする可能性が出てくると、鉄道事業者はこぞって高架下の有効活用に着手するようになった。

 しかし、大型複合商業施設には別の問題もある。今般、どこの商業施設も売上効率を重視する傾向が強まり、店舗構成はおのずと全国チェーン店ばかりになる。そのため、どこの商業施設も似たり寄ったりで差別化が図りにくい。金太郎飴のような商業施設に、買い物をする消費者や来街者は魅力を感じないだろう。

 だからと言って、商業施設が金太郎飴化することを責めるわけにはいかない。運輸収入の増加が見込めない情勢において、不動産で効率よく稼がなくては、そもそも本体の鉄道事業が覚束なくなる。企業である以上、「稼ぐ」ことは至上命題。背に腹はかえられない。JR東日本は東京駅や新宿駅、渋谷駅といった東京の超一等地に不動産を保有し、高架下開発でも国内の鉄道事業者をリードする立場にある。

 だから、JR東日本は効率よく稼ぐことができる。そうした立場にありながらも、JR東日本系列のJR東日本都市開発は目先の利益だけを追求しない。2k540をはじめとするアキオカという、街と一体化するような商業施設のコンセプトを大事にする。そして、それに合わせた店舗構成を目指し、高架下を開発に取り組む。再びJR東日本都市開発事業本部開発調査部の担当者が話す。

「秋葉原駅-御徒町駅間の高架下には、2013年に『CHABARA AKI-OKA MARCHE(チャバラ アキオカ マルシェ)』(CHABRA)をオープンさせています。かつて秋葉原には神田青果市場があり、東京の台所として食文化を支えてきた歴史があります。そうした土地の特性を踏まえ、『CHABARA』は全国から選りすぐりの逸品を集めることを目指しました。今回、新たにオープンさせる『SEEKBASE』は、電気街だった頃の秋葉原をコンセプトにしています。そのため、カメラやオーディオ、中古レコードを扱う店を集めました」

 JR東日本都市開発が挑む高架下開発は、これまでの複合商業施設とは一線を画していると言っていいだろう。JR東日本都市開発が手がけてきた2k540やCHABARA、そして新たにオープンするSEEKBASEといった個性的な商業施設が、効率を追求してきた商業施設開発のあり方を大きく変えるかもしれない。

関連記事(外部サイト)