ケンタッキーフライドチキン社長が語る業績V字回復の要因

ケンタッキーフライドチキン社長が語る業績V字回復の要因

V字回復の理由を社長が語る

「ケンタッキーフライドチキン」を展開する日本KFCホールディングスが絶好調だ。2019年4〜9月期連結決算では、売上高は前年同期比8.5%増(381億円)、営業利益は約5倍の24億6600万円となった。客数12%増という異例のV字回復を成し遂げた理由を、近藤正樹社長に訊いた。

──このシリーズでは最初に「平成元年(1989年)に何をしていたか」を伺います。

近藤:私は1978年に三菱商事に入り、入社3年目から中南米で勤務しました。最初の2年はメキシコで研修を受け、その後1985年から1988年までコーヒー部の所属としてコロンビアに駐在しました。1988年末から東京本社に戻りましたが、一貫してコーヒー、中南米を担当していましたね。

 コーヒー生産地は世界に50か国ほどありますが、中でもコーヒー豆の買い付け量が多いブラジルとコロンビアに三菱商事は駐在員を置いていて、買い付けた豆を世界各国に売っていくのです。

 コーヒービジネスは本当に奥が深い。同じコーヒー農園でできた豆であってもその年の天候によって味が変わってきますし、相場も毎年大きく変動します。味と価格のバランスをどう取っていくか、そのマネジメントの経験は今でも役に立っています。

 1980年頃から約20年ほどで日本国内のコーヒー消費量は2倍に膨れあがりました。その真っ只中で仕事をしていたので、とても恵まれていた。面白いようにビジネスの幅が広がっていきました。

 コーヒーは嗜好品の最たるものですが、ケンタッキーフライドチキンも「時々無性に食べたくなる」という意味で嗜好品的な側面があります。その点では、今でも似ている商品を扱っているのかもしれません。

──その後、日本KFCホールディングス社長に転じたのが2014年。しばらく業績が停滞していましたが、2018年夏からV字回復を成し遂げた。何が奏功したのか?

近藤:鶏肉市場全体の消費量は上がっているのに、当社の客数は毎年少しずつ落ちてきていました。それはなぜなのか──を細かく分析したところ、多くのお客様が「ケンタッキーフライドチキンはクリスマスに利用する店」というイメージを持っていることがわかりました。

「時々無性に食べたくなる」と仰ってくださるお客様もいらっしゃいますが、そのスパンは「年に1、2度」という方が多かった。日常的に食べている方が少なくなっていたのです。

 他のファストフード店と比べ、多少価格が高いと思われていたことがお客様を遠ざけていたのかもしれません。そこで、クリスマスのような“ハレの日のご馳走”としてだけでなく、もっと普段使いをしてほしいと考え、昨夏に7月23日から9月5日まで限定で「500円ランチ」を導入しました。

 オリジナルチキン1ピース、Sサイズのカーネリングポテト、ビスケット、Sサイズのドリンクのセットメニューで、それぞれ単品で頼むと合計920円になるところを、税込み500円のワンコイン価格で販売したのです。これが大ヒットし、反転攻勢のきっかけになりました。その後も何度か期間限定で500円ランチを販売し、ご好評を頂いています。

──500円ランチを実施していない期間も、客数、売上高ともに大きく伸びた。

近藤:「ちょっと値段が高いよね」というイメージを払拭する効果があり、お店に足を運んで「オリジナルチキン」の魅力を再確認して頂くいいきっかけになりましたね。

 同時にテレビCMでは、高畑充希さんに「今日、ケンタッキーにしない?」というキャッチフレーズで呼びかけてもらった。これも気軽にご来店頂けるイメージを作ることに大いに貢献したと思います。

◆「軽減税率でも同一価格」の理由

──単品で買うと倍近い値段になる「500円ランチ」は採算が合わないのでは?

近藤:「500円ランチ」ばかりが売れると正直困るという面はあります(笑い)。ただし、追加で他の商品も買って頂いていることが大きい。

 さらに通常ランチタイムと言えば、だいたい11時から14時ぐらいまでを指しますが、「500円ランチ」の販売時間は10時から16時までに広げました。これによって、遅めの朝食や遅めのランチを取りたいお客様のニーズもカバーできた。それが売り上げの底上げにつながっています。

──他商品への相乗効果は?

近藤:1000円、あるいは1500円のパック商品も好調です。キリのいい価格設定も意識しています。500円だったら480円、1000円だったら980円にしたほうがお得感があり、消費者への訴求効果があると言われますが、当社の場合は少し違う。ケンタッキーの商品は「安いから買うもの」ではなく、どちらかと言うと「ワクワク感で買って頂くもの」ですから。そこでキリのいい価格を徹底し、敢えて価格表示も目立つようにしています。

──10月の消費増税に伴う軽減税率の導入でテイクアウトは8%、イートインは10%と税率が異なりました。外食企業の対応は分かれましたが、ケンタッキーはテイクアウトとイートインの価格を税込みの同額に設定しています。

近藤:当初は税抜き価格表示にして、お持ち帰りは8%、店内飲食は10%にしようとしました。しかし実際にメニューの価格を書き換えて見てみたら、細かい端数の金額が並び、これではとてもお客様の心を引きつけられないと思い直した。その結果、お客様にわかりやすい価格訴求を実現できたと考えています。

【PROFILE】こんどう・まさき/1955年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、1978年三菱商事入社。1985年コロンビア三菱商事。食品本部コーヒーマネージャー、伯国(ブラジル)三菱商事社長、生活産業グループCEO補佐(人事担当)を経て、2014年から日本KFCホールディングス株式会社代表取締役社長。

●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。

※週刊ポスト2019年12月20・27日号

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