日高屋が苦戦中 「値上げで客離れ」定石通りの結果に

日高屋の快進撃が止まり不振に わずか10円〜30円の値上げでセオリー通り客離れ

記事まとめ

  • 日高屋の業績は右肩上がりだったが、成長にブレーキがかかっている
  • 日高屋は18年4月に従業員の給与アップと一部商品の10〜30円値上げを打ち出した
  • しかし、18年4月から現在まで、既存店の客数が前年実績を割り込み続けている

日高屋が苦戦中 「値上げで客離れ」定石通りの結果に

日高屋が苦戦中 「値上げで客離れ」定石通りの結果に

会社帰りの「ちょい飲み」需要も掴んで絶好調の日高屋だったが…(AFP=時事通信フォト)

 手頃な価格帯の中華料理に加え、会社帰りのサラリーマンの“ちょい飲み”需要も掴み、業績が右肩上がりだった「日高屋」。だが、ここにきて成長にブレーキがかかっている。不振に陥った要因は、わずか10円〜30円ながら客足を鈍らせる値上げにあった──。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。

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 10月1日より消費税が8%から10%に上がったが、2%の増税はボディーブローのように利いており、消費者の財布のヒモは、一層、堅くなった。消費増税にどう対応するかは、流通・小売業の経営者の腕の見せどころである。

 東京、埼玉、神奈川、千葉の1都3県に集中出店し、外食産業で屈指の利益率を誇る「熱烈中華食堂日高屋」(運営:ハイディ日高)は、これまで外食の“勝ち組”と評されてきた。関東圏の駅前立地を強みに、栃木の1店、茨城の2店を含めて439店を展開している(2019年11月末時点)。

 仕事帰りのサラリーマンがアルコール飲料を少しだけ飲む「ちょい飲み」需要も開拓し、2019年2月期まで16期連続で増収増益を達成した。

 低収益に苦しむ外食チェーンが多い中で、売上高営業利益は11%を超え、幸楽苑ホールディングス(ラーメンチェーン「幸楽苑」)やリンガーハット(長崎ちゃんぽん「リンガーハット」ととんかつ「浜勝」)、そして王将フードサービス(「餃子の王将」)をも凌駕する。ちなみに、ライバル3社の売上高営業利益率は4〜8%である。

 だが、そんな快進撃を続けてきた日高屋ですら目下、苦戦中だ。

 2019年3〜8月期の単独決算は、売上高が前年同期比横ばいの211億円、営業利益は同11%減の22.8億円。売上高は厳密にいえば、300万円のマイナスである。1999年、店頭市場(現ジャスダック)に公開した後、新規出店効果もあって、中間期、通期とも増収増益を持続してきたが、この記録がついに途切れた。

 小売り・流通業の稼ぎの拠り所である既存店売上高は2018年11月以降、今年11月まで13か月連続で前年同月の実績割れが続いている。今期(2019年3〜11月)の累計の既存店売上高は2.8%減、客数は2.9%減と上向く気配が見えない。

 日高屋も決して手をこまねいていたわけではない。主力商品のギョーザの価格を、増税となった10月以降も230円(税込み)に据え置いた。「実質値下げ」である。さらに期間限定ではあるが、10月31日まで1皿(6個入り)を税別210円から155円に値下げした。

 それに合わせて、ギョーザの中身も8年ぶりに刷新。豚肉をこれまでより40%増量しながら脂分は減らし、皮も薄く軽いものにした。ハイディ日高の高橋均社長は、「さっぱりした味で、現在2割程度の女性客を(もっと)取り込みたい」と意気込む。

◆10〜30円の値上げで客離れ

 いま、小売り、外食だけでなく、宅急便クロネコヤマトのヤマトホールディングスといった運輸業界などあらゆる産業で人手不足が問題になっているが、日高屋も深刻な人手不足から店舗運営の転換を余儀なくされた。

 2018年4月下旬、ハイディ日高は人手不足の解消に向けて2つの手を打った。それが従業員の待遇改善と一部商品の値上げだ。

 まず、パート従業員とアルバイトの時給を一律20円引き上げ、正社員には1万円のベースアップを実施した。

 値上げについては、麺類や定食類を中心に一部メニューを10〜30円値上げした。「野菜たっぷりタンメン」は20円アップの520円(税込み、以下同)、「チャーハン」は20円高くなり450円、「ギョーザ(6個)」は10円上げて230円にした。

 だが、10〜30円の値上げということなかれ、日高屋の客層は値上げに敏感だった。外食チェーンは値上げが客離れを招くというセオリー通り、値上げに踏み切った2018年4月、それまでプラスを続けてきた既存店の客数が前年実績を割り込んだのが何よりの証拠である。

 これ以降、客数が前年を上回る月はない。2018年11月からは既存店売り上げもマイナス成長が続く。影響がこれほど長期に及ぶとは想定していなかったのではないか。

◆「ちょい飲み」客が減った働き方改革

 さらに、残業時間の上限などを規制する働き方関連法案が4月に施行された影響も小さくなかった。早い時間に帰宅するサラリーマンが増え、日高屋が強みとしてきたサラリーマンによる仕事帰りの「ちょい飲み」が逆風に見舞われた。残業代が減って収入が減少すれば、サラリーマンは飲み代を削る。

 働き方改革は、日高屋自身にもはね返ってきた。残業規制を受けて営業時間を短縮したのである。コンビニエンスストアのような24時間営業の店や深夜2時まで営業する店が多かったが、一部の店舗の閉店時刻を午後11時30分に前倒しせざるを得なくなった。当然、店が開いていなければ売り上げはゼロになる。

 ちょい飲み市場に、ライバルチェーンも続々と参入してきたため、ここ1年の間でアルコール飲料の極端な値下げ競争が起きた。アルコール類やつまみの利幅はラーメンより大きいが、それが縮小して赤字スレスレの店も出てきたのである。

 日高屋は何とか顧客を呼び戻すため、3月下旬から生ビールを330円(同)から290円へ値下げした。40円の大幅値下げである。10月の消費増税後も値段を変えず、実質的な再値下げに踏み切った。しかし、それでも客数は、前年割れの状況から抜け出せずにいる。

 コスト削減策も裏目に出かねない状況になっている。2018年12月、東京・大田区にオープンした店舗で券売機を導入したが、ハイディ日高では、券売機は永年のタブーであった。

 券売機は人手不足を補うため、多くの外食チェーンで見掛けるようになったが、ちょい飲みのサラリーマン客は「生ビールおかわり」など口頭で注文する。わざわざ券売機に足を運んで追加注文しない。券売機を導入した店では、ビールのおかわりが減ったというから恐ろしい。

 だから、日高屋はアルコール需要が少ないJRの駅施設内の店を除いて券売機を導入してこなかった。しかし、人手不足が深刻化して、とうとう券売機の投入に踏み切った。今後、売り上げの17%を占めるビールなどアルコール飲料にどう影響するかが注目される。

◆新業態のちゃんぽん、パスタ専門店の成否

 成長戦略に限界が見える中、このままでは日高屋の優位性が失われかねない。そこで、現在乗り出しているのが、新しい業態の開発である。

 12月17日、ちゃんぽん専門店「ちゃんぽん菜ノ宮(さいのみや)大宮大成店」(さいたま市)をオープンさせた。「日高屋」を外し、「菜ノ宮」という新しい屋号を根付かせようというのだ。

「ちゃんぽん店はリンカーハットが1番手として業績を上げており、われわれがそれを真似しても絶対に1番店になれない。今までの経験を生かして、“一味違う”ちゃんぽんを始めることにした」(高橋社長)

 メニューとしては、豚骨・醤油・味噌ベースのちゃんぽんや、辛い味付けのもの、鶏・牛肉・豚肉をトッピングしたちゃんぽんを提供する。リンガーハットとは趣向を変えたコンセプトで店舗展開を進める。

 それだけではない。パスタ・ギョーザの専門店、さらに従来の中華そばより高価格のラーメン店を2021年2月期までに順次オープンさせ、関東(主に1都3県)で日高屋を含め計600店の展開を目指すという。単純計算すると新業態の店が50店以上、うまくいけば100店となる勘定だ。

「関東に集中出店しているメリットを生かし、日高屋と別のブランドで市場を深掘りできれば、店舗の競合(カニバリーゼーション)が起きない」(フードアナリスト)

「新しい業態の店の出店ペースが上がれば成長力を取り戻すことができる」(別のアナリスト)

 との期待も高まる。まだ1都3県に集中出店を考えているから失敗してもダメージは小さいのかもしれない。だが、これまで成長の壁にぶつかり、新たな活路を見出そうとして失敗してきた外食産業も多いだけに、日高屋が挑む新業態の成否は注目されるところだ。

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