尾木ママ 「子どもたちが主役」の学校は学力が向上する

尾木ママ 「子どもたちが主役」の学校は学力が向上する

会場には幅広い世代が集まり、小・中学生の姿も多かった。なかには地方から駆けつけた人も(撮影/浅野剛)

 校則を全撤廃したことで話題の東京・世田谷区立桜丘中学校。その改革を実行した同中学校長の西郷孝彦さんの著書『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール 定期テストも制服も、いじめも不登校もない!笑顔あふれる学び舎はこうしてつくられた』も人気となっている。

 そんななか、桜丘中学校の保護者有志が教育の第一線に立つ4人によるトークイベントを主催(11月30日)。キャンセル待ちも出て、約1000人が来場するなか、今後の日本の教育について語り合った。

【講演会登壇者】

◆世田谷区立桜丘中学校長・西郷孝彦さん/養護学校(現:特別支援学校)を経て、都内で理科と数学の教員に。2010年より現職。常に生徒に寄り添い、「校則なくした中学校長」として知られる。著書に『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール』がある。

◆教育評論家・尾木直樹さん/法政大学名誉教授。中学、高校、大学で計44年間教壇に立つ。尾木ママの愛称で親しまれ、NHK Eテレ『ウワサの保護者会』などに出演。

◆麻布学園理事長・吉原毅さん/2010年に城南信用金庫理事長に就任し、相談役、顧問(現職)に。2017年に「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」創設。同年より麻布学園で現職。

◆世田谷区長・保坂展人さん/1996年に衆議院議員初当選。児童虐待防止法の成立(2000年)に携わる。総務省顧問を経て2011年より現職。教育ジャーナリストでもある。

 校則を全撤廃した桜丘中学校の学力は、世田谷区内でトップクラス。特に英語はダントツの成績だ。

「今の社会の問題は、子どもたちの自己肯定感が低いこと。自由を認めれば、子どもたちは自分を取り戻し、勝手に伸びていきます。実際、教員の言うことに反発もできる子ほど学力も伸びる」(西郷さん)

 尾木さんも同じ見解だ。

「受験勉強的に押し付けなくても、学力は上がります。実際、締め付け型ではなく、桜丘中のような探求型授業を行う学校の方が、全国的にみても学力を向上させています。

 例えば京都市立堀川高等学校。授業の一環として、自分の好きな課題を3年かけて探求させるのですが、これを続けていたら、当初は6人しか国公立大学に進めなかった学校が、浪人生を含めて毎年30人以上も京都大学に合格するような進学校になった。“子どもたちが主役”の学校は、学力向上に結びつきます」(尾木さん)

 一方で、熱心になるあまり、教育虐待に陥る家庭が増えていることを西郷さんは危惧する。イベントの司会進行役を務めた世田谷区長の保坂展人さんも声をそろえる。

「教育虐待を児童相談所が理解していない場合も多い。子どもは親の所有物ではないのに、親が自分の人生のやり直しのように、過度に勉強を強いる。入試に失敗した場合、子どもの人格を全否定するのも間違っている」(保坂さん)

 ユニークで革新的な実業家を多数輩出することでも有名な麻布学園も、『自由闊達・自主自立』が校風。特に受験を終えた中学1年生のうちはしっかり遊ばせて、子どもの好きなことをさせるそうだ。

「そうでないと、子どもは育ちません。中・高時代に詰め込み教育や管理教育を受けてきた子どもは、自分で判断ができず、情熱もない。日本の競争力が衰えているのは、自分の頭で考えて行動できる子どもが激減しているからでしょう」(吉原さん)

◆ハーバード大も行う「感性を育む教育」

 これから進むべき教育のカタチとは?

「残念なことに、日本は教育に投資する公的支出のGDP(国内総生産)に占める割合がわずか2.9%で、OECD(経済協力開発機構)加盟国中、最下位です。そのOECDがプロジェクトチームを立ち上げ、これからの教育に必要なことは何かと3年間議論したのですが、結論は“子どもたちの生き延びる力をつけること”でした。今後は、AI(人工知能)と共存する社会になっていきます。AIにはできないこと、つまり新しい価値を創造する力こそ、“生き延びる力”ではないでしょうか」(尾木さん)

 文部科学省は新しい指導要領で、「主体的・対話的で深い学び」であるアクティブラーニングの重要性を説いている。

「世界では芸術の必要性が見直され、アメリカのハーバード大学は医学部で美術鑑賞を授業に取り入れました。西郷先生が必要だとおっしゃっている、数字やテストでは計れない非認知的能力をつけようということです」(尾木さん)

「人は本来、“よりよく生きる”という気持ちをもって生まれています。私たちにできることは、こうあるべきだと子どもを型にはめることではなく、子どもたちが自由に発想できる環境を整えてあげること。これは家庭でも同じです」(西郷さん)

 保坂さんは客席に向かって、「学校や自治体が動くかどうかはみなさんの声で決まる」と訴え、こう続けた。

「桜丘中をそのまま真似るということではなく、それぞれの地域で“子どもたちが主役の学校”をつくってほしい。それが私たち大人の役目です」

※女性セブン2020年1月2・9日号

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