水どう名物D・藤村忠寿氏 「YouTuberになって考えたこと」

水どう名物D・藤村忠寿氏 「YouTuberになって考えたこと」

今年YouTubeチャンネルを開設した藤村忠寿氏(左)と嬉野雅道氏

 人気俳優・大泉洋を世に広めたことで知られる北海道のローカル番組『水曜どうでしょう』。12月25日には、約6年ぶりとなる新作が放送(北海道ローカル)されるが、同番組の名物ディレクター・藤村忠寿氏が、今年YouTuberデビューを果たした。テレビ業界にどっぷり浸かり名を馳せてきた藤村氏は、なぜ突如違うフィールドに進出したのか。

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『ユーチューバー(YouTuber)』という言葉を僕が耳にしたのは、ちょっと前のことです。で、そのすぐ後に「小学生が憧れる職業の上位にユーチューバー」みたいな記事を目にして驚愕しました。

 さらにはユーチューバーを名乗る若い人たちが「数億円も稼いでいる」というじゃないですか。「ちょっと待って! 意味がわからん」と。「てゆーか、そんなに稼げんなら、オレもちょっとやってみよ」と思ったわけです。

「だってさぁ、こっちだって映像業界に30年も身を置いているわけだし、大ヒット番組も作ったし、この前はドラマでグランプリも受賞したしね。数億円とは言わないまでもさ、そこそこはさぁ、少なく見積もっても数百万? うまくいけば数千万? ぐらいはねぇー……ウホホホホ」

 という邪心たっぷりの動機で、そっち方面に詳しい若手スタッフの手引きで、ユーチューバーの事務所と契約し、水曜どうでしょうを共に作ってきた嬉野(雅道)さんと今年2月、『藤やんうれしーの水曜どうでそうTV』というチャンネルをユーチューブ上に開設しました。

「やりましたぁー! これで僕らもユーチューバーですよぉー! チョイ儲けできますよぉー! ふはははは!!」笑いが止まりませんでした。

 で、早速「ユーチューバーを名乗る若造ども(この時点でもう上目線)が、一体全体どうやって儲けているのか?」を聞きました。

 ま、簡単に言うとですね、ユーチューブ上に動画をアップして、そこにCMが付くと広告料が入ってくると。テレビと一緒ですね。テレビ局が作った番組の合間にCMを流すことでテレビ局に広告料が入ってくる。構造は同じです。ユーチューバーの場合、それを個人(もしくは数人のグループ)でやっているということですよ。

「へえー、いいじゃない! 僕らはテレビ局の人間だから自分が作った番組なのに広告料は会社に入っちゃうけど(だから給料もらえてんだろ!)、ユーチューバーの場合、自分に入ってくるんだもんね。丸儲けじゃん!」

「そういうことです」

「いいなぁー! じゃぁさ、実際にね、僕らが作った動画に一本CMが入りました、そしたらおいくらぐらい広告料もらえるわけ?」

「えーまぁいろいろですけど、だいたい0.1円とか0.2円とかって言われてますね」

「ふーん0.1円かぁ……ん? ちょっと待って……てことは1万回再生された動画で広告料は1000円てこと?」

「CMが一本しか入ってない動画だったらそうなりますね」

「え? 100万回再生の動画なんてめったにないじゃん?」

「かなり難しいですよね」

「それでも収入は10万円ってこと?」

「ですね」

「ウッソぉー!」

「サラリーマンがユーチューバーでちょい儲け」という僕らの邪心はあっけなく崩れ去りました。とはいえ地道にユーチューバーを続けて10か月、トータル140本ほどの動画を上げ、チャンネル登録者数は28万人。スタートとしては上出来だそうですが、実際のところ動画を作るための経費と若きスタッフの人件費で精一杯。僕らにはまだほとんど収入はありません。

 でもこの10か月で僕らは、テレビでは知り得なかったことを知り、テレビでは出会えなかった人たちと話をする機会に恵まれて、いつしかユーチューバーに対する邪心がふんわりと消えていきました。

 佐賀に「釣りよかでしょう」という人気ユーチューバーのグループがいます。そのネーミングから推察できるように、彼らは『水曜どうでしょう』のファンでした。そんなつながりから先日、僕らは彼らの住む佐賀を訪れました。

「いやぁー、緊張します! 初めまして!」と、彼らは遠来から来たおじさんたちに最大限の敬意を払い、「水曜どうでしょうがユーチューバーに与えた影響は計り知れないです」「水曜どうでしょうは20年前からすでにユーチューバーをやっていたんです」と、最高に良い気分にさせてくれました。

 そして、美しい沿岸風景が広がる海に船を出してくれて、一緒に釣りをしました。彼らが釣竿を用意し、針が根掛かりすれば「どうぞコレ使ってください」と自分の竿を差し出して、僕らに一匹でも多く魚を釣らせようと奮闘してくれました。

 僕らの釣果は芳しくなかったけれど、他の釣り人が「釣りよかさん、コレ持ってって」と魚を分けてくれました。釣り船屋のおばちゃんは「コレ珍しい貝だから食べてみて」と新鮮な貝をお裾分けしてくれました。

「キミらは愛されてるなぁ」と、おじさんたちは感心しきり。そんな豊かな海の幸を「釣りよかハウス」なる彼らのアジトに持ち込んで、彼ら自身が見事な包丁さばきで調理してくれました。

「キミらすごい料理人じゃん!」とおじさんたちは感嘆しきり。「鍋にするから白菜とってきて」「分かった」とメンバーが出て行くのについて行くと、そこには自分たちで育てている野菜畑がありました。「キミら、ホントすごいなぁ」とおじさんたちは感動するばかり。立派な床の間がある和室で宴会。聞けば古い農家を自分たちでリフォームしたそうで、そんな彼らの日常を動画にして毎日上げているそうです。

「うっ、なんだよこれ! うまっ!」と、並んだ料理を口にするたびに雄叫びを上げるおじさんたちの姿を見て、彼らは「今日はホント楽しかったー! また絶対に来て下さい!」と満面の笑顔で答えてくれました。そんな彼らの笑顔を見て、佐賀生まれの嬉野さんが感極まってこう言いました。

「オレ、初めて佐賀がいいとこだと思った。キミらは佐賀の救世主だよ」

 ユーチューバーというのは、個人による発信です。すなわち個人の人格がそのまま出る。「この人の動画を見たい」というのは「この人のことを見ていたい」ということです。それはもう「愛」と言ってもいいレベルの感情です。

 かたや、視聴者のことを視聴率としか見ていないテレビは果たして愛されているのでしょうか。もう視聴率で番組の価値を決めるシステムを早くやめないと、僕らテレビは誰からも愛されない存在になってしまう。だって僕自身、テレビを見るより、ユーチューバーの彼らのことを見ていきたいと思ってしまったのだから……。

 12月25日から北海道でいよいよ6年ぶりの『水曜どうでしょう』最新作の放送がスタートします。20年以上、僕らのことを見続けてくれている皆さんに、今の僕らの姿をそのままお見せします。大泉さんは「手応えがない」と言っていましたが、編集している僕はヘンな手応えを感じているんです。

●ふじむら・ただひさ/1965年愛知県生まれ。1990年に北海道テレビ(HTB)入社。1996年チーフディレクターとして『水曜どうでしょう』を立ち上げる。2009年、演出を担当したHTBスペシャルドラマ『ミエルヒ』がギャラクシー賞テレビ部門優秀賞を受賞。2015年、時代劇集団の藤村源五郎一座を旗揚げするなど自ら役者としても活躍するほか、2019年よりYouTube「藤やんうれしーの水曜どうでそうTV」をスタート。『仕事論』(総合法令出版/嬉野雅道氏とのインタビュー集)ほか著書も多数。

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