キリンHD磯崎社長 ビール市場の縮小にどう立ち向かうか

キリンHD磯崎社長 ビール市場の縮小にどう立ち向かうか

キリンホールディングスの磯崎功典社長

 国内のビール市場が15年連続で縮小することが確実ななか、「健康」の領域に照準を置き、多角化を進めているのがキリンホールディングスだ。今年8月には、化粧品やサプリメントを手がけるファンケルとの資本業務提携を発表したことも話題を集めた。これからの勝ち残り構想をどう描くのか、磯崎功典社長(66)に訊いた。

──従来からの柱であるビール市場の縮小にはどう立ち向かう?

 ビールは装置産業ですから、少ないブランドで大量生産できれば経営的にも生産的にも一番効率がいい。ですが、もう効率を追い求める状況ではなくなってきています。

 時代とともに消費者の価値観が変わり、「人と同じもの」から「人と違うもの」に選択基準が変わっています。それに従い、これまでのマスに向けた広告よりも、友人や知人らとのSNSが重要な情報源になっている。

 もっとビールを個性的に、魅力的にしなければいけない。たとえばワインの世界であれば、この料理だからこういう赤、あの料理だから白で銘柄は何とかペアリングの選択肢がある。同じようにビールに個性を持たせるには、クラフトビールを拡大する以外、手がないでしょう。

──しかしクラフトビールには手間暇がかかります。

 確かにそうですね。それに、キリンビールだけでクラフトを手がけられれば一番効率はいいのですが、それではお客様に面白いと共感していただけない。そこで、軽井沢(長野県)のクラフトビールメーカーであるヤッホーブルーイングに資本参加したり、ニューヨークで人気のブルックリン・ブルワリーと提携した。

 我々は20種類以上のクラフトビールを飲むことができる「Tap Marche(タップ・マルシェ)」というビールサーバーを飲食店向けに提供しています。これらのクラフトビールを「タップ・マルシェ」のラインナップにも入れて、クラフトのムーブメントを起こそうとしている。

──そのほか、将来に向けて取り組んでいることは?

 若い世代の人たちと話していると、貧困や地球温暖化など、社会が抱えている課題を真剣に考えていると感じます。キリンもそういう問題に向き合い、解決していく企業になっていかないと評価されないでしょう。

 社会に少しでもお役に立ちたいという思いから、電通さんと「INHOP(インホップ)」という合弁会社を新たに立ち上げました。キリンでは、ホップに関する研究開発を20年近く続けており、認知機能改善効果や体脂肪低減効果を有する独自素材である「熟成ホップエキス」を開発しました。

 ビール原料であるホップには、睡眠改善作用や骨密度低下抑制作用など、健康機能があることが知られています。熟成ホップエキスを中心に、これを高齢化社会で健康のために役立てていけないかと考えている。

 ビール造りで培った技術を活かして、ビールとは違う形で社会貢献していきたい。それも単なるボランティアのようなかたちではなく、社会の役に立ちながら利益も生む、キリンのビジネスの太い幹にしていきたいと考えています。

【プロフィール】いそざき・よしのり/1953年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1977年キリンビール入社。1988年米コーネル大学ホテル経営学部に留学。1999年キリンホテル開発運営の「ホップインアミング」総支配人。2004年比サンミゲル取締役、2007年キリンHD経営企画部長などを経て、2012年キリンビール社長。2015年3月より現職。

●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。

※週刊ポスト2020年1月3・10日号

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