ヤクザ業界の服装マナー「1年目は紺スーツに白シャツ」

ヤクザ業界の服装マナー「1年目は紺スーツに白シャツ」

本家には専属のコーディネーターが?

 警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回はヤクザ業界のファッション事情を、幹部に直撃。

 * * *
「LEONファッションですよ」

 ヤクザのファッションには流行があるのか?と聞くと、暴力団幹部は開口一番こう答えた。『LEON』といえば“ちょいワルおやじ”というキーワードを世に広めた男性ファッション誌だ。不良っぽくも都会的でセクシーなカッコいい大人のイメージで、イタリア出身のパンツェッタ・ジローラモ氏がイメージキャラクターを務めている。

「ヤクザが好むのを『LEON』が載せるのか、『LEON』に載った物をヤクザが身につけるのか、そこはわかりませんけどね」

『LEON』にとってはあまりありがたくない話だろうが、どうやらヤクザファッションのトレンドは『LEON』の誌面とリンクしているらしい。

 また、ちょいワルはちょいワルでも関西と関東では好みが異なるという。

「大阪、名古屋はどちらかというと派手。大阪では少し前まで原色を好み、やたらとブランド物を着ていたけど、コピーも多かった。東京はなるべく目立たないようにが、昔からのヤクザスタイルだ」

 関西ならコピー品を手にいれるのはたやすいという。

「生野、鶴橋に行けば何でもある。韓国あたりから入れているんだろう」

 自分がコピー品を身につけたとしても、人に譲ることは絶対にしないと幹部は話す。

「どうせあいつからもらった物だ、きっと偽物だと言われれば、自分の価値を下げることになる。30万もするモンクレールのダウンのA級コピー品が3万円だと言われても買わないね。だってさ、コピーよりユニクロのダウンのほうが断然暖かいんだぜ」

 普段は渋めのハイブランドを着こなしているその幹部だが、親分の所に行く時は地味な格好をするという。

「親より高い物は着ない。周りにやっかまれるから、おしゃれで派手な格好もしない」

 目上と会う時は控えめにというのは、どの業界も変わらないようだ。

 山口組では場合によって、制服ならぬ指定のコーディネートがあると話してくれたのは山口組に近い暴力団関係者だ。

「不祝儀など義理の時は、黒いスーツに白いワイシャツ。ワイシャツのボタンは白でなければならず、クラリーノみたいな靴と決められている」

 関係者曰く“クラリーノみたいな靴”とは、学生が履くようなシンプルな黒の革靴をイメージしてもらえばいいだろうか。

「このクラリーノがなかなか難儀でね。大勢が集まると、どれも同じだから自分の靴がどこにあるのかわからなくなる。下足番はいるんだが、会合の時は全員中に入ってしまうから、中座する時など靴を探すのに苦労する。名前を書いておく、赤や青の中敷きを入れておくなどそれぞれ工夫するが、オーダーメードで内側の革を黄色や赤にする者もいる」

「直参1年目はさらに制約がある。服装は紺のスーツに白のワイシャツと決められ、ボタンダウンはダメだ」

“直参”とは組織のトップから直接盃を受けた者のことで、山口組でいえば“プラチナ”になる。プラチナになったとはいえ、まだ1年目の組長は、集まりや会合となれば指定されたファッションで出向かなければならないのである。

「好き勝手するのがヤクザの本分なのに、あれはダメ、これもダメ。あげくには、義理の時の服装まで決められ…」

 不平不満はあるようだが、誰もそれを口にはしない。それがヤクザ社会である。

 服装に厳しい決まりがある山口組だが、時折メディアで目にする六代目山口組の司忍組長の服装は、ちょいワルファッション以上にインパクトがある。

「本家にはコーディネーターがついている。家だけでなく、移動するワゴン車の中にもズラリとスーツを運び入れ、その日に着る物をコーディネーターが決めている」

 ネットで検索すると表れるボルサリーノ風の茶色の帽子や首にかけた白の長いマフラーといった独特のファッションは、コーディネーターがチョイスしているのだそうだ。

 この“コーディネーター”というのは専門のスタイリストではなく、センスのある組の者が務めているらしい。ちなみに本家がスーツを仕立てているブランド名をいくつか挙げてくれたが、どれも庶民にはそうそう手が出せないイタリアのハイブランドばかりだった。

「プラチナの人が集まれば車、服、時計に病院や薬の話ばかり。車は昨今、アルファードのような車が主流。色は黒や白。乗り降りが楽だし、車内が広いからね。人が乗っていれば自分も欲しくなる。人が着ていれば、身につけていればそれが欲しくなる」

「いい車に乗って、いい物を着て、いい店で飯を食って、いい女を連れて…。その人みたいになりたいと見た目で憧れる。しゃべり方から何から何までマネてみる。ヤクザの業界は特に、リスペクトしている人のマネから入るのが近道だと考えられている」

 だが最近、若い者がマネしたいと憧れるヤクザは減っているという。

「昔は憧れるような組長がたくさんいたんだが、今は男がカッコいいと憧れるカリスマ性のあるヤクザが少なくなった。リスペクトされなければ人はついてこない。憧れもないのにわざわざヤクザになろうとする若い者は、今どきいない。半グレのほうがよほど自由で楽に稼げるからね」

 暴力団排除条例などでシノギがなくなり稼げなくなったと言われるヤクザ業界は、今や一時の勢いを失い縮小傾向にあるが、人が減っている理由はどうやらそれだけではないらしい。

関連記事(外部サイト)