ネット特定班による情報発掘、誤情報拡散で代償払う危険も

ネット特定班による情報発掘、誤情報拡散で代償払う危険も

デマ情報を書き込むと…(写真/AFLO)

 ネットでは日々起こる事件に対して様々な憶測が書き込まれ、「特定班」と呼ばれる人々が血眼になり点と点を線にしようとしている。

 ただし、特定班の発掘した情報が、必ずしも事実だとは限らず、実際に「人違い」や「誤情報」が拡散し、被害者を生むケースも起きている。

 記憶に新しいのが、2019年の「あおり運転事件」である。傷害容疑で逮捕された宮崎文夫被告の横で一部始終を録画していた同乗者の女性、通称「ガラケー女」をめぐり、ネット特定班が“暴走”した。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。

「ネット上ではすぐにこの女性の素性暴きが始まりました。そして、『5ちゃんねる』やSNSで、ある会社で代表取締役を務める女性がこのガラケー女だと書き込まれ、またたく間に拡散。しかし、彼女は実際にはガラケー女とはまったく無関係でした。彼女の会社や携帯には嫌がらせの電話が殺到し、多大な精神的苦痛を味わった。この騒動で、彼女はツイッター上のデマの書き込みをリツイート(引用・拡散)した愛知県豊田市議を名誉毀損で訴えています」

 2017年、東名高速でワゴン車があおり運転を受けた末に停車させられ、トラックに追突されて夫婦が死亡した事故でも、やはり無関係の建設会社が「容疑者の勤務先」としてネット特定班に名指しされ、会社に誹謗中傷が殺到。この会社の社長はネットにデマを書き込んだ複数の人物を名誉毀損で訴えている。

 ネットトラブルに詳しい虎ノ門法律経済事務所の中村賢史郎弁護士が語る。

「匿名掲示板での書き込みでは、プロバイダに情報開示を請求してもなかなか書き込んだ本人にたどりつけないことが多々ありますが、今、ネットトラブルで削除や開示請求を受け付けている弁護士は非常に増えている。匿名の書き込みでも、弁護士による開示請求によって個人が特定され、罪に問われる可能性はないとはいえません。そうした書き込みを引用する行為も名誉毀損となることは十分にありえます。気軽に書き込んだ内容が、名誉毀損等の罪に問われる可能性があるということを、今一度よく考えてほしいと思います」

 彼らの“尋常ならざる熱情”は、次はどの標的へ向かっていくのだろうか。

※週刊ポスト2020年2月7日号

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