高齢ドライバー問題 「MT車活用」が大きな糸口となるか

高齢者事故が目立つ中、MT車を乗りこなしてきた高齢者想定し『マニュアル限定免許』案

記事まとめ

  • 高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故が続いている
  • MT車で免許を取り、乗りこなしてきた高齢者を想定して『マニュアル限定免許』案が浮上
  • 「MT車の操作に自信がなくなれば、自然と運転から離れていく」との指摘も

高齢ドライバー問題 「MT車活用」が大きな糸口となるか

高齢ドライバー問題 「MT車活用」が大きな糸口となるか

高齢運転手の事故をどう減らす?

 ブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故が続いている。高齢者による事故が目立つが、AT(オートマ)車からMT(マニュアル)車へ乗り換えるだけでも、運転に集中しやすいため事故が起こりにくくなるという意見がある。しかし、現実に販売されている自動車をみると、MT車が姿を消し、AT車全盛だ。MT車のシェアはわずか1.6%。そんな中、各自動車メーカーは日進月歩で「事故防止機能」の研究と導入を進めている。

 トヨタの「トヨタ・セーフティ・センス(TSS)」、ホンダの「ホンダ・センシング」など、自動ブレーキを含む安全装備の搭載が順次拡大している。両社では今年度中に、ほぼすべての車にこれらを搭載する予定だという。

 マツダは、レーダーやカメラを用いた「アイ・アクティブセンス」という衝突防止システムを、SUBARUは全方位に搭載した車外カメラで車間距離を自己判断する「アイサイト」の搭載を進めている。

「アクセルとブレーキが違うペダルだから踏み間違いが起こる」という点に注目した新機能もある。

 ナルセ機材の「ワンペダル」は、“後付けパーツ”を取り付けることによってアクセルとブレーキを一体化。足を右にずらせばアクセル、ペダルを踏めばブレーキになる。両方の動作が同時に行なわれるときには、ブレーキ動作が優先されるという。モータージャーナリストの森口将之氏が語る。

「MT車、AT車のドライバーのどちらも、『危険なときにはペダルを踏む』という動作が身に染みついている。『踏む』という動作をブレーキのみに特化させ、アクセルを他の動作に割り当てるのは理にかなっている」

 もし自動運転技術が実現すれば、踏み間違いの心配も無用になるかもしれないが、自動車業界に詳しいジャーナリスト・福田俊之氏は「実現はずいぶん先になるだろう」と予想する。

「まだ完全な技術は確立されていません。政府は成長戦略のなかで『25年をめどに高速道路での完全自動走行を実現させる』と息巻いていますが、技術的な問題のみならず、法整備などの課題も多い」(福田氏)

 確かに、自動運転技術が進歩すれば、車の運転はさらに楽になるだろう。しかしこれまで述べてきた通り、「操作を楽にする」という発想で生まれたAT車のほうが、「難しい」MT車よりも事故率が高いという現実を忘れてはならない。技術の発達は新たなタイプの事故を生むリスクも孕んでいる。

 前出・森口氏の提案は興味深い。

「MT車で免許を取り、長く乗りこなしてきた高齢者を想定して、『マニュアル限定免許』を考えてもいいのではないか。MT車なら注意力の低下やケアレスミスを防げるし、“運転を楽しみたい”という思いにも応えられる。また、MT車の操作に自信がなくなれば、自然と運転から離れていく。免許の更新期間を短くするより効果があるかもしれません」

 現実的かつ有効な「MT車活用」という選択肢は、高齢ドライバー問題解決の大きな糸口になるはずだ。

※週刊ポスト2017年5月26日号

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