大メディア、安倍政権に取り込まれ不利な情報は流さぬ状況に

大メディア、安倍政権に不利な情報は流さぬ状況か 前川喜平前次官の報道など巡り警鐘

記事まとめ

  • 読売新聞が前川喜平前文部科学事務次官の"出会い系バーに出入り"について報じた
  • 服部孝章・立教大学名誉教授はそこに権力とメディアとの関係の大きな変化があると見る
  • 大メディアは政権に取り込まれ、安倍政権に不利な情報があっても報じなくなったという

大メディア、安倍政権に取り込まれ不利な情報は流さぬ状況に

大メディア、安倍政権に取り込まれ不利な情報は流さぬ状況に

大メディアは首相に不利な情報を流さない?

読売新聞を熟読していただきたい」──憲法改正論をめぐる安倍晋三・首相の答弁は野党から「国会軽視」との批判を浴びた。だが、この発言は政権と大メディアとの関係の変質を示唆するある種の「予告」だったのではないか。自民党の若手議員がこう驚いている。

「総理のいうように読売新聞を熟読することにした。すると2週間後(5月22日)に社会面に前川喜平・前文部科学事務次官の(出会い系バーに出入り)記事が出た。ああ、あの言葉には深い意味があったんだと感じた」

 牽強付会な見方とは言い切れない。「憲法9条改正」の具体案を語った安倍首相の憲法インタビューは渡辺恒雄・読売新聞グループ本社主筆と会食した2日後(4月26日)に行なわれ、憲法記念日に読売が1紙独占で報じた。その読売紙面に前川氏の出会い系バー通いが掲載されたのだ。

 服部孝章・立教大学名誉教授(メディア法)はそこに権力とメディアとの関係の大きな変化があると見る。

「安倍首相が再登板以来、力を入れてきたのがメディア対策だ。首相が大手紙や民放キー局の社長や会長と相次いで会食して手なずける一方、2014年の総選挙前には側近の萩生田光一氏を通じて民放各局に“報道の公平中立を守るように”という圧力文書を配って恫喝もした。そのアメとムチの結果、いまや大メディアは政権にすっかり取り込まれ、安倍政権に不利な情報があっても報じなくなった。

 今回の読売の前川氏の報道は、さらに進んで、メディアが政権にとって都合の悪い人物のネガティブキャンペーンにまで加担する関係になったように見える。安倍政権の問題を明らかにしようとすれば、新聞にスキャンダル情報をリークされて社会的にダメージを受けるという印象が植え付けられる。日本社会にとって非常に危険な兆候です」

 逆に朝日新聞のように政権批判をすれば、ネットで“言論テロ”と批判され、安倍首相がそれに「いいね!」を押す。これでは現場の記者はますます萎縮する。

 そうした傾向は、「安倍首相ガンバレ」という森友学園の園児たちの映像が報じられて批判が高まり、首相が各社の官邸詰め記者を集めて中華料理を振る舞った今年2月の「赤坂飯店の夜」から顕著になってきた。

 安倍首相が「読売を熟読せよ」と軽口を叩いたのは、大メディアの幹部も記者も自家薬籠中のものにしたという自信から――そう考えると、朝日新聞以外の複数の新聞・テレビが文科省内部文書を入手しながら、報道に積極的でなかったという奇妙な状況の裏がよく読み解けるのである。

 獣医学部の新設で首相の意向が働いたのではないかという加計学園疑惑で「総理のご意向」文書を本物と認めた前川氏はこう語った。

「取材をお受けしたのは、『これは国民が知らなければならないことだ』と思ったからです。もちろん『在職中に正しい方向に戻すために力を尽くすべきだったのではないか』とのご批判は甘んじて受けます。文科省の後輩たちにも申し訳ない思いです。

 しかし、天下り問題で文科省が失った信頼を少しでも取り戻すためにも、いうべきことをいわなければいけないと決意したのです」

 政権が道を違えていないか。監視役に徹するメディアの役割が、改めて問われている。

※週刊ポスト2017年6月9日号

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