金密輸はウハウハイメージあるが利益は消費税相当分の8%

金密輸はウハウハイメージあるが利益は消費税相当分の8%

コルセットに地金を隠す方法も 時事通信

 地下経済を語る際にはずせないのが金密輸だ。たびたび摘発されるも、一向に減らないのはそれだけ旨味があるからだろう。金密輸の最前線にノンフィクション作家の溝口敦氏が迫る。

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 金の密輸にからんで金塊やカネを奪う事件が多発している。

 4月21日、東京銀座では金塊を売却した直後の男(44歳)が背後から体当たりされ、現金4000万円入りのバッグを奪われた。前日の20日、福岡天神では男性会社員(29歳)が金の買付資金3億8000万円を駐車場で奪われた。

 同日、福岡空港では現金7億3500万円を無申告で持ち出し、香港に運ぼうとしていた韓国人の男4人が関税法違反容疑で逮捕された。当初、高級車の購入資金と説明されたが、5月に入って福岡県警は金塊の違法取り引きを巡る資金の疑いが濃厚と発表した。

 福岡では去年7月、警察官を装った男数人が金を貴金属店に持ち込もうとしていた男たちを取り囲み、「密輸品なのは分かってるんだぞ」と脅し、6億円相当の金塊を奪った。

 どうやら金密輸で想像もできないほどの札束が乱舞しているようだ。業者間で情報洩れでもあるのか、盗ったり盗られたり、狂騒状態である。

◆買い付けは「安・近・短」

 金密輸は狂うほど儲かると推測されるが、利益は最大でも消費税相当分の8%だけと大手の密輸業者は説明する。

「金は世界的に非課税が主流ですが、日本、韓国、インドでは金の売買に付加価値税や消費税をかける。金の裸の価格は全世界、どこでも同じです。だから国境を越えて売買しても、ふつうは利ざやが発生しない。

 しかし日本では売り買いとも8%の消費税がかかる。だから、たとえば香港で金を買う。非課税です。それを機内持ち込みし、日本に運ぶ。見咎められることなく通関できれば、金取扱店で売る。と、黙っていても、消費税8%分を加算して買ってくれます。即ち、これが儲けです」

 金密輸の儲けの仕組みは極めて簡単なのだ。

「ただ金の持ち出しを禁止している国もあります。持ち出しに制限がない国や地域に香港、アモイ、ドバイ、シンガポールなどがあり、業者はその辺りで買うことになる。だが、買付する場合、できるだけ経費はかけたくない。そのため宿泊の必要がなく、日帰りも可能で、LCC(格安航空会社)が頻繁に飛んでいる地域、つまり香港などで買い付けることになります」

 金の延べ棒は重い。具体的にはどう運び込むのか。

「業者の中心メンバー当人が運ぶ場合も多いんですが、組織的にやる業者は『海外から4~5キロ、金属の塊を持ってくるだけで小遣いになるぞ』といって若い者に運ばせる。

 ふつうは1回に4~5名のチームを組み、1人に4~5キロを持たせる。1回に20キロ前後、購入価格で1億円未満、1回の利益が1000万円を欠ける程度のシノギになる」

 だが、金密輸商売には懲役や禁固はないものの、危険が伴う。

「海外で金を買ったと申告せず、通関しようとして発覚した場合、消費税相当分8%の他、最近では消費税分の3~4倍の罰金を科されます。金はいずれ持込み人に返されますが、3~6か月も税関に領置されて、その間は現金に換えられない。借入金で金密輸をやった者はもろにパンクします」

 金はここ10年ほど値上がりが激しく、1キロ当たり500万円弱。額が大きいから利幅8%でも、持込成功の場合は儲けが大きい。

「福岡で金密輸がらみの事件が多いのは、福岡なら税関が甘いだろうと見る中小の業者が利用するからです。大手は税関がどうだろうと、LCCがバンバン離着陸して税関が忙しい成田、羽田を利用、かえってばれていない。

 もっとも事件の中には仲間うちの狂言強盗もあるようだ。この場合は金主(資金の出し手)に強盗被害に遭ったと言ってカネを奪われたことにして、騙し取るのが狙いと聞いてます」

 この密輸業者によれば、密輸を手掛ける者は半グレ集団が中心だという。一部暴力団も参入しているが、見よう見まねで始めているから失敗が多いとされる。

●みぞぐち・あつし/1942年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。『食肉の帝王』(講談社刊)で講談社ノンフィクション賞を受賞。『闇経済の怪物たち』(光文社新書)、『薬物とセックス』(新潮新書)など著書多数。

※SAPIO2017年7月号

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