舛添要一氏 豊洲の謎の地下空間は「全く報告を受けてない」

【豊洲新市場問題】舛添要一・前都知事「謎の地下空間は全く報告を受けていない」

記事まとめ

  • 前都知事・舛添要一氏が1年の謹慎を経て、沈黙を破り『都知事失格』を上梓した
  • 豊洲新市場の謎の地下空間について舛添氏は「まったく報告を受けてない」と明かした
  • 舛添氏は、小池百合子・都知事に“悪役”にされた内田茂氏に対し「気の毒」とも語った

舛添要一氏 豊洲の謎の地下空間は「全く報告を受けてない」

舛添要一氏 豊洲の謎の地下空間は「全く報告を受けてない」

1年の謹慎を経て、沈黙を破った

 前都知事・舛添要一、68歳。気鋭の国際政治学者として華やかに登場し、政治家に転身すると厚労大臣を経て、都知事まで上り詰めた。そしてよもやの転落。1年の謹慎を経て、前都知事は、いま何を思うのか。沈黙を破って『都知事失格』(小学館)を上梓した舛添氏に、石原慎太郎時代から都政を取材してきたジャーナリスト・青木理氏が訊く。

 * * *
 東京都の異常は都議会にも及んでいたとメディアは盛んに伝えた。“ドン”などと称される実力者が君臨し、怪しげな根回しを駆使して都議会を牛耳り、国会議員すら下手に手出しはできない。そんなイメージで描き出されたのは自民党都連幹事長などを歴任した内田茂氏である。舛添氏が「都知事失格」の烙印を押され、代わってその座に就いた小池百合子・新都知事の下、“ドン”の存在は“悪役”としてにわかにクローズアップされる。

 私自身、内田氏について詳しく取材したことはない。ただ、都庁の要職を歴任した元幹部から最近、次のような話を聞いた際は、なるほどそういう面もあるのかと思わされた。

「内田さんが悪者にされていますが、僕は気の毒だと思いますよ。石原都政時代、知事がほとんど仕事をしなくても、都政を滞らせるわけにはいかない。とはいえ、議会の同意がないと話は進まない。そんな時、内田さんにお願いするとスムーズに事が進む。非常に助けられました」

 もとより健全な話ではない。ただ、メディアが盛んに描いた“悪役”イメージとは異なり、内田氏を肯定的に評価する向きが都庁の内外にはいて、どうやら舛添氏も同じように考えていたらしい。新著にはこんな内田評が記されている。

〈マスコミに舛添バッシングと同様の扱いを受けたのが「都議会のドン」と揶揄された内田茂である。彼ほどマスコミが垂れ流したイメージと実像が異なる人も珍しい〉

 では、内田氏の実像とはいかなるものか。再び舛添の話である。

「確かにフィクサーではあるんです。都議会のフィクサー的な機能を果たしていたのですが、非常に繊細なところもある人です」(舛添氏・以下「」内同)

──というと?

「おそらく内田さんの言うことを一番断ったのが私だと思うんです。そうすると内田さん、物も言わなくなっちゃう。私はこういう性格だから、会うと『いやぁ、こんにちは』って言うけど、あいさつすらしなくなっちゃう」

──しかし、都議会でフィクサー的な役割を果たし、都の元幹部は「助けられた」と話していました。

「予算でもなんでも、議会の同意を得なくては動きませんからね。その点で役に立つ。たとえば石原知事時代、興味のないことは見向きもしない。大事な案件があっても登庁すらしない。しかし、予算でも条例でも議会を通さなくちゃいけない。すると議会に頼るしかなくて、内田さんの権力がどんどん増す。つまり内田さんの権力を高めたのは、前任の知事たちなんです」

 20年の澱が積み重なって膨らんだ都政と都議会の歪み。その極北はもちろん、いまなお混迷が続く築地市場の豊洲移転問題であろう。

 新市場の用地となった豊洲が東京ガスの工場跡地で、地中が汚染されていたのは周知の事実だった。だが、土壌改良と盛り土を施せば十分安全を確保できるそういって新市場は建設が強行された。舛添氏が知事に就任した前後、すでに工事は始まっていて、後戻りできる状況ではなかった。

 ところが舛添氏が知事を追われ、小池新知事が就任した直後、とんでもない事実が発覚して大混乱に陥る。あらためて説明の要はないだろう、盛り土を施されていたはずの基礎部分につくられていた「謎の地下空間」である。

──舛添さんは知らなかったんですか?

「まったく報告を受けてない。本当に頭にきたけれど、盛り土ではなくコンクリート空間にして問題ないなら、きちんと説明すればいい。ところがそれをしない。必要な説明をしないようなシステムになっていたんです。

 もちろん東京都は図体がでかくて、バスや地下鉄から水道や下水道、その他にも公営企業がいっぱいある。だから細かいことまでいちいち知事にあげる必要はないんですが、重要な決定も同じように考えてしまっているフシがある」

──いったいなぜですか。

「いちいち報告すると、うるさいって知事に言われるから報告しない風潮が20年の間に生まれていたんじゃないかと思うんです。私は着任して驚いたんですが、知事室にちゃんとした会議机すらなかった」

──どういうことですか。

「各局の幹部が集まる会議すらしていなかったんでしょう。私みたいに毎日(都庁に)来れば、10分ずつ時間を取れば全局からブリーフィングを受けられる。しかし、そんな時間はなかった。別に役人を擁護するわけじゃないけれど、そういうことになると、必要な報告であっても、自分たちが粛々と進めていることは報告もしなくなる。やっぱり知事が常時いないっていうことがそういう弊害を生んだんじゃないかという気がします」

聞き手■青木理(ジャーナリスト)

※SAPIO2017年7月号

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