NPO法人運営の八王子の樹木葬墓地 里山保全の狙いも

NPO法人運営の八王子の樹木葬墓地 里山保全の狙いも

自然のなかにある「東京里山墓苑」

 もはや「お墓」といっても、墓地に墓石がズラリと並ぶものだけではない。都心のビルの中に墓地があったり、「樹木葬」もある。今回は、樹木葬墓地が存在する東京都八王子市にある東京里山墓苑をノンフィクションライターの井上理津子氏が訪れた。

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 前回、日本で初めて1991年に樹木葬を始めた岩手県一関市の知勝院を訪れ、スケールの大きさに驚いた。山野草が咲く、里山全体が樹木葬の墓地。

「自然を再生し、守る」という大命題の手段として「木を目印に、コンクリートも墓石も使わないエコな墓」が造られていた。遺骨をじかに穴の中に埋葬する方法のため、故人が「土に還る」ひいては「木となり花となる」ということをリアルに感じられ、とても魅力的だった。

「私の始めた樹木葬とは全く理念の異なる墓地が、樹木葬墓地と名乗っていることに困惑しています」と、樹木葬の名付け親である知勝院先住職・千坂げん峰さんがおっしゃったが、「樹木葬」はさまざまな形態に広がりを見せている。

 今回は都市部近郊の樹木葬墓地に足を運んでみた。知勝院の理念に「近い」と感じた「里山タイプ」が、東京都八王子市の東京里山墓苑だ。車で向かった。中央道の八王子インターチェンジから20分余り。

 幹線道路を折れると、農地や雑木林が見えてくる。その先の深い緑に包まれた丘陵地に、別荘のような建物がぽつり。東京里山墓苑を持つ日蓮宗・延寿院である。

「都心から1時間なのに、『本当に東京?』のような環境でしょう?」

 本堂に隣接する、冬場に活躍したであろう薪ストーブのある休憩室で、墓苑の事務局長・白石亘さん(45才)が笑顔で迎えてくれた。コードレーンのジャケットがお似合いでおしゃれな人だなあと思ったら、もともとはウェブデザイナーだったという。

「なぜ、樹木葬を?」と、つい経歴を聞きたくなるのが、私の癖だ。

「最初の入り口は葬儀社でした」と、白石さんは言う。

 15年ほど前、寺院や葬儀社のホームページのデザインを手がけていたが、消費者目線のホームページにしたいと思っても、「葬儀料金は提示できない」が不文律。疑問を持った。料金の明示化などを大手葬儀社の社長に提案し、転職。葬儀社社員として、葬儀の現場と企画室業務を兼任し、生前契約、エンディングノートなどを提案していく中、海洋散骨や樹木葬の存在を知った。海洋散骨は各地の港から散骨を行う船の手配などをシステム化し、事業化。

「小さなお子さんが亡くなり、東京ディズニーランドに連れて行ってあげられなかったからと、ディズニーランド近くの海に散骨されたご家族」がいたことが忘れられない。「故人の記念に」と、東京都が実施していた「マイ・ツリー(寄付で都内の街路樹を植える事業)」を葬儀社から遺族にプレゼントする企画も打ち出し、好評を得たそうだ。

「お墓にもっと選択肢があってもいいんじゃないかと思うようになったんですね。家族でお花見のピクニックに行けるようなお墓とか」

 葬儀社を辞め、森林ボランティアなどの活動をし、樹木葬実現への道を模索していたとき、偶然にも同じ思いを持つ、ここ延寿院の住職(51才)と知り合った。延寿院は、利用していない1ヘクタールの里山を所有していた。「2012年に、住職と一緒にNPOを作った」のだという。

 NPO法人の名を「ロータスプロジェクト」という。コンセプトは「お寺を地域に開かれた交流の場に」。住職が執事長を兼務する新宿の大きなお寺でフリーマーケットを開いたり、農業体験会を開催したりすると共に、里山保全と樹木葬に取り組むことになった。

「アズマザサが繁茂し、ヒノキやクヌギの木々が密集していた里山を切り拓きました。木々の間に隠れて見えなかったヤマツツジが姿を現し、絶滅危惧類のキンラン、ギンランも咲き…」とは、先般聞いた一関の樹木葬墓地の歩みと瓜二つだ。だが、ここはNPOの運営。「違いは宗教色をできるだけ排除していること」と白石さんは言う。

◆故人へのリスペクトを込めて骨壺に

 2011年に利用が始まったという樹木葬墓地は、建物の裏手にあった。数本のソメイヨシノと1本のシダレザクラが植わった20~30m四方ほどの広場2つが、低い木と縄のフェンスで囲まれている。桜の花の季節は過ぎているが、周囲の雑木林と相まって、風にそよぐ新緑が美しい。

「故人1人に1本ずつ植えるのではなく、シンボルツリーの足元に埋葬する形です」

 桜の木々が「シンボルツリー」なのだ。地面に60cm×80cmの升目に縄が這っていて、それが1区画。ところどころに、40cmほどの木柱が置かれている。

「木柱を倒して置いているのは仮契約、下部を埋めているのは契約済みの区画。希望されると、木柱にお名前を書きます」と白石さん。よく見れば、地面に5cmほどの擬宝珠のような木の突起物も点在する。

「骨壷の上の部分です」

 遺骨は粉にして、スギ材で作ったオリジナルの骨壷に入れて埋葬する。蓋が五輪塔を模した形で、五輪塔の上の擬宝珠風の部分が土の上に出るように埋葬しているそうだ。

「土に還るには、骨を直接埋葬する方が早いでしょうが、故人へのリスペクトを込めて骨壷に入れることにしました。スギ材の骨壷ごと、おそらく5年から10年で土に還ります」

 埋葬区画が名前を書いた木柱で確認でき、五輪塔上部の突起で埋葬のピンポイントが正確に特定できる仕組みなのだ。それで、お値段は?

「1区画にお1人なら50万円。2人なら65万円。あと、管理費や粉骨料などに、お1人なら17万円、2人なら12万円ずつをいただきます」

 基本料金は一関の知勝院と同額だが、あちらは管理費等がかからなかったから、その分だけ若干高いな、と頭の中で比較する。契約には、ロータスプロジェクトの会員登録が必要で、年会費5000円(埋葬後は不要)。「墓地を含む里山保全に賛同し、生きているうちに協力し、没後は、生きている人たちに依存しよう」という考え方なのだ。

 450区画あり、当初から広告は全くしてこなかったが、160人が契約済み。インターネット経由で来るケースが多く、7割が東京都西部、3割が23区内などの人。すでに80人が埋葬されているという。

「納骨の際に住職が『ご挨拶』として読経いたしますが、一周忌や三周忌に法要を頼むかたは、全体の2割くらいですね。樹木葬を求めるのは、宗教観よりも森の一部になることを願う人。お参りも、お彼岸やお盆より桜の季節の方が多く、墓地から続く30分ほどのトレイルコースを歩くのを楽しみに来るご家族もいますよ」

 先般取材した都心の「室内墓」は、「買い物で近くに来たとき」などに、ついでに墓参する人が多かった。対して、樹木葬は山歩きとセットなのかもしれない。

 最後に、「仮にNPOがなくなったら、樹木葬墓地はどうなります?」と気になっていたことを聞く。

「心配ありません。墓地そのものはお寺の所有なので、継続性が担保されていますから」(白石さん)

※女性セブン2017年6月15日号

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