庭園タイプの樹木葬墓地も ビルに囲まれた花のオアシス

庭園タイプの樹木葬墓地も ビルに囲まれた花のオアシス

「公園タイプ」の樹木葬墓地・小平霊園

 先祖代々のお墓はもう遠い過去のものなのか――ノンフィクションライターの井上理津子さんがさまざまな形態、さまざまな声を見聞きする「お墓をめぐる冒険」を続ける中で、これまで誰しも当たり前に持っていたお墓に対する価値観が大きく変わっているのを感じずにはいられない。井上さんが庭園タイプの墓地についてリポートする。

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 最近、都心等に近頃めきめき増えているのが「庭園タイプ」の樹木葬墓地だ。

 訪ねたのは、東京都港区の浄土宗・道往寺。坂道に面していて、吹き抜けの地階にある大手葬儀社・公益社の葬儀会館が先に目に入り、「あれ?」と思ったが、その左手に道往寺の入り口があった。塀に「永代供養墓 納骨堂 50万円から」と大きく書かれている。葬儀会館の階上に建つ、スタイリッシュな建物が道往寺で、境内に色とりどりの花が咲く樹木葬墓地があった。

「4年前、本堂の建て替えにあたって住職が『聖と俗』の部分を切り離す英断をしたんです」と、樹木葬墓地の販売を担当する株式会社アンカレッジ社長の伊藤照男さん(41才)が言う。

 公益社の葬儀会館は、お寺の建物の一部を貸しているものでいわば「俗」。もう一つの「俗」がお墓の販売や集客。アンカレッジは住職が出資して設立された。樹木葬墓地の企画、運営は、伊藤さんたちに委ねられているという。

「女性目線を最大に意識して造った樹木葬墓地なんです。自分ちのお墓がなくても、ワンちゃんを連れてお散歩したい感じでしょう?」

 まったくそのとおりだ。今が満開とばかり、赤、ピンク、白、オレンジのバラが咲き誇り、足元にはパンジー、レースフラワー、カタバミ…。合計130平方メートルほどと広くはないし、近隣のビルに囲まれた空間なのに、別天地。見事な洋風ガーデニング、花のオアシスだ。

 花と緑の間に埋め込まれた石のプレートがお墓だった。「なんと小さい」と思ったのが、1人用のお墓で、石のプレートは10cm×5cm。夫婦用は33cm×40cm、家族4人用は33cm×56cm。「ちょっと窮屈だけど、花園で眠るのは、気分いいかも」が、正直な感想である。

 カロートが、石プレートの下の地中に設置されている。1人用は粉骨を袋に入れ、さらにステンレスの壷に入れる。夫婦用は1人用と同様あるいは骨壷で、家族用は骨壷で納骨。位置と石の質にもよるが、1人用が50万円~(年間護持会費不要)、夫婦用が140万円~(同1万円)、家族用が180万円~(同1万5000円)。“費用対面積”は結構高いもよう。

「敢えて価格訴求をしていないんです。マーケティングの結果、『大層な石塔は要らない。花咲く地中に眠りたい』という、半径3km以内に住む人たちに照準を当てていますから。世帯年収800万~1200万円、64~70才がコアゾーンです」

 伊藤さんの口から出た「マーケティング」という言葉に、一瞬違和感を感じたが、「そりゃそうだ」と思い直す。自動搬送式などの室内墓も見学に行き、「やっぱり土がいい」と求める向きも多いとか。1人用を購入した7割が女性だともいう。

 しかし、カロート(納骨スペース)に納骨するということは、「土には還れない樹木葬」ってことですか?

「いいえ。13年後もしくは33年後に、ご遺骨を合祀墓にお移しします。その合祀墓はこれから建てるのですが、下部が土。その中で、土に還れる仕組みです。『自然に帰りたい。でも、死んですぐに他の人たちのお骨と一緒になるのは嫌。個別のお参り場所がすぐになくなるのも嫌』というかたがた、実は多いんです」

 伊藤さんは、「もっと言うと」と、内実も教えてくれた。

「寺にとっても、13年後もしくは33年後に、空いた場所を再販でき、サスティナビリティ(持続可能性)がある方法なんですよ。花は順次植え替えますが、メンテナンス費もそうかかりませんし」

 なるほど、である。で、売れ行き順調です? と呑気な質問をしたら、「2013年の3月から売り出し4年と少しですが、1人用、夫婦用、家族用など計490基がすべて完売しました。来月には新しい区画の販売を始めます」

 脱帽した。

※女性セブン2017年6月15日号

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