昔はKY扱いの安倍首相 「空気」という妖怪を手なずける

安倍晋三首相は『空気という妖怪』を手懐け、閣僚の失言は多いのに支持率を維持か

記事まとめ

  • 首相には民意のニーズに合わずKY総理と呼ばれ、最後は政権を手放した過去がある
  • 今の安倍晋三首相は『空気という妖怪』を手懐けている、との見方が浮上している
  • 再登板後の安倍政権でも閣僚の失言は多いのに、支持率は50%前後を維持している

昔はKY扱いの安倍首相 「空気」という妖怪を手なずける

昔はKY扱いの安倍首相 「空気」という妖怪を手なずける

かつてはKY首相と呼ばれた安倍氏だが…

 森友学園問題のキーワードとして注目された「忖度」という言葉が、加計学園問題ではより具体的な言い方で登場した。

「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」

 文部科学省の前川喜平・前事務次官が加計学園の獣医学部新設認可に絡んで総理補佐官から伝えられたと公表した発言だ。役人が他人(総理)の気持ちを推し量る、これが典型的な忖度だろう。「空気を読む」と言い換えればわかりやすい。

 日本人の行動様式に関する鋭い思索で知られたコラムニスト、故・山本七平氏は1977年に刊行された著書『「空気」の研究』でこう書いている。

〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない〉

 この妖怪は厄介だ。なにしろ、空気が読めなければ「KY(空気が読めない)」と呼ばれてコミュニティから排除されてしまう。けれども、ひとたび「空気」を味方につければ、どんなにスキャンダルが出ようとも、政治が不公平でも、政権は批判を浴びない。そればかりか、批判者の方が批判されるという不思議な現象が起きる。

 山本氏は同書でそんな「空気」の正体をこう分析してみせた。

〈それは非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ「判断の基準」であり、それに抵抗する者を異端として、「抗空気罪」で社会的に葬るほどの力をもつ超能力であることは明らかである〉

 いま、日本社会に不思議な現象が続いている。大臣の失言が続いても、森友や加計で批判を浴びても、なぜか安倍内閣の支持率は下がらない。逆に“告発者”である森友の籠池泰典・前理事長、前川前次官らが大メディアであたかも“ヘンな人”であるかのように扱われている。前川発言を評価した石破茂氏まで自民党内で“困った人”扱いされている。山本氏の言う「抗空気罪」であるかのように。

 どうやら安倍首相は「空気という妖怪」を手なずけているらしい。だが、昔からそうだったわけではない。むしろ、首相は妖怪に苦しめられた経験を持つ。「KY」という言葉が最初に流行したのは10年前、2007年だった。ちょうど第1次安倍政権末期の頃である。朝日新聞に初めて登場したのもこの年だった。

〈最近、中高校生の間では、「KY」という言葉がはやっているらしい。「K」とは「空気」、「Y」は「読めない」。仲のいい友人同士の間で、周囲の雰囲気に気づかず身勝手に行動する級友がいたら、「あの子はKY(空気が読めない)だ」という使い方をする。この若者言葉が安倍首相を評する時にも使われている〉(2007年8月10日付)

 政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。

「第1次政権時代の安倍首相は道徳教育を掲げて教育基本法を改正、憲法改正手続きの国民投票法制定や防衛庁の省昇格など理念先行の政治を行なったが、民意のニーズに合わず、KY総理と呼ばれた。相次ぐ閣僚の失言や不祥事で支持率が急降下し、最後は政権を投げ出さざるを得なかった。

 ところが、再登板後の安倍政権でも閣僚の失言、不祥事は相変らず多いのに、支持率は50%前後を維持している。国民の間には、スキャンダルが起きても安倍批判をしにくいムードまである。非常に奇妙な状況が生まれています」

※週刊ポスト2017年6月16日号

関連記事(外部サイト)