危機管理専門家 官邸のスキャンダル対応は「素人同然」

危機管理専門家 官邸のスキャンダル対応は「素人同然」

安倍官邸のスキャンダル対応力は素人同然?

 安倍政権の一強支配の現状をみるに思い起こされるのが故・山本七平氏が1977年に刊行した著書『「空気」の研究』だ。山本氏はそこでこう書いている。

〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない〉

 いまや、安倍首相は「空気という妖怪」を手なずけているらしい。

 山本七平氏は、この「空気」という妖怪を打ち破るのは「水を差す」、つまり国民が現実に立ち返ることだと「水=通常性の研究」へ論考を進めている。

〈先日日銀を退職した先輩によると、太平洋戦争の前にすでに日本は「先立つもの」がなかったそうである。また石油という「先立つもの」もなかった。だがだれもそれを口にしなかった。差す「水」はあった。だが差せなかったわけで、ここで“空気”が全体を拘束する。従って、「全体空気拘束主義者」は「水を差す者」を罵言で沈黙させるのが普通である〉

 安倍官邸はマスコミを巧みに操縦し、「政権の危機管理」に成功しているといわれ、「空気」に支配されている多くの国民はそれを信じ込まされている。

 だが、企業の危機管理の専門家、田中辰巳・リスク・ヘッジ代表は官邸のスキャンダル対応を「素人同然」と酷評する。

「森友・加計問題で、官邸は感情的になって3つのミスを犯した。まず首相が国会で『関係していたら総理も議員も辞める』と曖昧な条件で進退に言及したこと。野党に突っ込む隙を与えた。せめて『私が職務権限を用いていたのなら』と具体的に言うべきだった。

 2つ目は政権側が早い段階で告発者の森友学園の籠池泰典・前理事長、前川喜平・前文科次官を非難した点。告発者は反論し、劇場型の展開になって国民の関心を高めてしまった。

 3つ目は国民がどんな対応を求めているかを読み違った。今回の件で国民は責任の所在の明確化を求めている。政府がすべきだったのは『官僚の忖度禁止』のルールを決めること。

 それなのに官邸は、昭恵夫人の立場について『私の家内は私人』とか、『教育勅語が教材として使われることは否定されない』と閣議決定し、首相夫人は私人か公人かといった論争まで生んで騒ぎを大きくしてしまった。全くの素人。どこに危機管理があるのか」

 自らが作り出した「妖怪」が、やがて制御できなくなり、自らに襲いかかってくる―空気を支配しコントロールする者は、常にその恐怖と隣り合わせにある。山本氏は著書をこう結んだ。

〈人が「空気」を本当に把握し得たとき、その人は空気の拘束から脱却している〉

 国民が思い込まされている「空気」が、実は偽りの現実なのだと気づいたときに安倍一強は終焉を迎える。

※週刊ポスト2017年6月16日号

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