陸山会事件以来 日本は偽りの現実の中で目覚める機会喪失

陸山会事件以来 日本は偽りの現実の中で目覚める機会喪失

安倍首相が野党時代に目の当たりにした“成功体験”は?

 日本人の行動様式に関する鋭い思索で知られたコラムニスト、故・山本七平氏は1977年に刊行された著書『「空気」の研究』でこう書いている。

〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない〉

 この妖怪は厄介だ。なにしろ、空気が読めなければ「KY(空気が読めない)」と呼ばれてコミュニティから排除されてしまう。けれども、ひとたび「空気」を味方につければ、どんなにスキャンダルが出ようとも、政治が不公平でも、政権は批判を浴びない。相変わらず高い支持率を誇る安倍晋三首相は「空気という妖怪」を手なずけているらしい。

〈通常「空気」は、このような人工的操作によって作られるものではなく、言葉の交換によって、無意識のうちに、不作為に、いわば自然発生的に醸成されるから「空気」なのだが、それは、ある種の意図を秘めた作為的な「人工空気」の醸成が不可能だということではない〉(前掲書)

 安倍首相は野党時代、この人工的操作による「空気」で強力な政敵を追い詰められるという“成功体験”を目の当たりにした。

 小沢陸山会事件だ。著書『誰が小沢一郎を殺すのか?──画策者なき陰謀』の中で日本社会を「偽りの現実が蔓延する社会」と指摘した比較政治学者のカレル・ヴァン・ウォルフレン・アムステルダム大学教授が語る。

「民主党政権が短命に終わった大きな原因が検察の陸山会事件捜査だった。選挙で政権交代を実現させた小沢氏には総理として日本を改革する資質も正当性もあったが、検察に執拗に捜査され、検察審査会が強制起訴、その間、マスコミも犯罪者扱いを続けたため民主党政権時代は政治の表舞台に登場する機会を奪われた。

 最終的に裁判で無罪となっても、マスコミは謝罪せず、国民も小沢氏を政治的に抹殺しようとした官僚、国家組織の行動を是としてしまった。その結果、安倍政権が登場したわけです。

 私が著書で〈偽りの現実が蔓延する社会〉を描いたのは、日本国民は、正しい情報を得ることなく“偽りの現実(オルタナティブ・ファクト)”を見せられていると感じたからです。安倍首相をめぐる2つの疑惑(森友学園と加計学園)が国民の怒りや政治的目覚めにつながらないという事実を見聞きすると、あの事件以来、日本社会は依然として偽りの現実で満ちたムードの中で目を覚ます機会を失ったままではないかと思える」

※週刊ポスト2017年6月16日号

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