鈴木宗男氏 エリツィン氏を大喜びさせた手土産とは

鈴木宗男氏 エリツィン氏を大喜びさせた手土産とは

4月の訪問時はロシアからウォッカが贈られた

 手土産は選び方次第で、相手に好印象を与えたり、商談の成功や信頼度アップにもつながる重要な贈り物。それは国と国のトップ同士の交渉の場でも変わらない。長らく日本のロシア外交を支えた新党大地代表の鈴木宗男氏が「手土産」について語る。

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 外遊の際には必ず、日本から手土産を持っていきます。日本大使館へは昆布。北海道の厚岸で作っている昆布の佃煮が、とってもご飯に合うんです。これは喜ばれますねぇ。日本への郷愁にかられながら、大使館の職員は働いていますからね。特に日本から遠く離れているアフリカや南米の大使館ではその感激が大きかったです。

 4月にロシアを訪問した際にも大使館へ昆布を持っていきました。今回、コサチョフさん(ロシア上院・国際問題委員長)やモルグロフさん(外務次官)と日露関係について意見交換したのですが、手土産は日本酒『東洋美人』にしました。

 去年の12月に安倍総理が日ロ首脳会談(山口)の夕食晩餐会で振る舞って、プーチンさんがすごく気に入ったでしょう。そこからロシアで評判になって、今や日本国内でも品薄でなかなか手に入らない。希少価値があるとわかっていますから、「ハラショー!(すばらしい)」「スパシーバ!(ありがとう)」でしたよ。そうした手土産の背景は調べればわかることですから、相手の立場に見合ったものを選ぶようにしています。

 もっとも高価だったのはカメラでしたね。1997年のクラスノヤルスク会談に臨む際に橋本さん(故・橋本龍太郎元総理)が「宗ちゃん、エリツィンさんに何を持っていったらいいかな」と訊くので、カメラがいいと答えたんです。

 すると、カメラ好きの橋本さんは、自分が愛用している一眼レフを贈るという。だから「総理、何を考えているんですか。カメラの素人が一眼レフを使いこなせますか」と。誰でも撮れる簡単なものがいいと話したんです。

 ちょうどその頃、ズーム付きのデジカメが一般に出始めた頃だったので、それを勧めました。というのもね、ロシア人は“下ネタ”が大好きなんです。ソ連時代には楽しみが少なく、男性も女性も下ネタの小話をしながら食事をして盛り上がったわけです。それが彼らのコミュニケーションでもあり、ユーモアでもあり、信頼関係にもつながっていく。そこで「“出たり入ったりする”ズーム付きのカメラがいいんですよ」とね。

 実際にプレゼントしたらエリツィンさんが喜んでね。なにしろボタンひとつで、レンズが出たり入ったりするんですから。驚くやら、楽しいやらで。すっかり夢中になって、その後に予定していたサウナが中止になったほど。

 ロシアのサウナでは血行促進のために白樺の枝で身体を叩くので、「エリツィンさんはきっといたずらをしてきますよ」と話していたんです。「ひょっとしたら、“握られる”可能性もありますよ」ってね。

 橋本さんは、「おい、気持ち悪いなぁ」と嫌がるから、「総理、国益です!」と。エリツィンさんの茶目っ気というか、それは親愛の情なんですから、と。いざ握られたら、“気持ちいい~”って顔をしてくださいよと、そこまで吹き込んでおいたんです。

 そうしたら「外務省の説明は面白くないけれど、宗ちゃんの説明は琴線に触れるなぁ」なんていってね(笑い)。カメラのおかげでその“難”は免れたわけですが、手土産といえば、総理とそんな愛嬌のある話をしたのを思い出します。

 手土産は、ひとつの小道具としてばかにしちゃいけない。プレゼントの交換は儀礼的ですが、相手の関心を呼び、「おっ、なかなかやるな」と思わせたら、こちらのもの。クラスノヤルスクでも、「2000年までに平和条約の締結へ向けて全力を尽くす」という大きなフレーズがとれたんですから。相手の心へ届き、その心を開く。それが手土産なのだと、私は考えています。

【プロフィール】すずき・むねお/北海道生まれ。1983年、衆議院議員に初当選。1997年に第2次橋本改造内閣で入閣、1998年に小渕内閣官房副長官。2005年、新党大地結成。著書に『外交の大問題』(小学館新書)。公式ブログ『花に水 人に心』https://ameblo.jp/muneo-suzuki/

撮影■渡辺利博

※週刊ポスト2017年6月23日号

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