経営破綻から復活したスカイマーク 再上場後の「高い関門」

経営破綻から復活したスカイマークが東証1部に再上場へ 国際線事業に課題も

記事まとめ

  • スカイマークは2015年に経営破綻したが、5年で見事に復活を遂げた
  • 2020年4〜6月にも東証1部に上場する見込みで、国際線事業にも挑むという
  • ボーイング737MAXを検討していたが事故により運航停止、後継機の選定は難航している

経営破綻から復活したスカイマーク 再上場後の「高い関門」

経営破綻から復活したスカイマーク 再上場後の「高い関門」

経営破綻から再生、業績回復を果たしたスカイマーク

 2015年に経営破綻してから5年、見事に復活を遂げたスカイマーク。今年には東証1部に再上場も果たす見込みだが、競争が激化する「空の覇権争い」で勝ち残るのは容易なことではない。ジャーナリストの有森隆氏が、新生スカイマークの今後を展望する。

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 スカイマーク(SKY)は2019年10月、東京証券取引所に再上場を申請した。2020年4〜6月にも東証1部に上場する見込みだ。

 上場を機に、成長を求めてもう1度、国際線事業に挑むが、そのためには、羽田空港の国際線の発着枠を何としてでも手に入れたい。東京の玄関口である羽田国際線の発着枠の有無で、成長戦略が大きく変わるからだ。

 至上命題である羽田の国際線発着枠確保に向け、2月13日、国交省からの天下り組を経営トップに据えた。同社顧問の洞駿(ほら・はやお)氏(72)である。この人事に伴い、市江正彦社長(60)は退任した。

 洞氏は1971年、東大法学部卒。運輸省(現・国土交通省)に入省し、自動車交通局長、航空局長、国土交通審議官を務めた。2007年には全日本空輸(ANA)に転じ、2011年からANAの副社長。そして2018年7月、経営破綻したスカイマークの顧問となった。

◆「航空業界のホリエモン」が描いた青写真

 時計の針を少し戻してみよう。SKYの設立 は1996年。起業したのは澤田秀雄・エイチ・アイ・エス会長兼社長である。だが、内心では「大変な業界に足を踏み入れてしまった」と後悔していた。

 割安の料金でANAや日本航空(JAL)に対抗する「第三極」を目指して航空業界に華々しく参入したものの、当時、JAL、ANA、そしてJAS(日本エアシステム社、2002年に日航と経営統合)の寡占状態となっており、SKY潰しは苛烈を極めた。

 SKYが飛ぶ時間帯に合わせて、東京─福岡線に半額運賃を導入。SKYを兵糧攻めにした結果、就航当初は80〜90%だったSKYの搭乗率は、あっという間に40%台にまで急落。これで早期の黒字化は絶望的となった。

 2000年5月、東証マザーズに上場。上場で得た資金で何とか一息ついたが、本業の収支は改善せず、雪だるま式に赤字が膨らんだ。あと1期、債務超過が続けば上場廃止になるという瀬戸際で、澤田氏は会社を西久保愼一氏に身売りしたのである。

 SKYが“墜落(経営破綻)”したのは、「航空業界のホリエモン」と呼ばれていた西久保社長が安全性や公共性より、株式の時価総額(株価×発行株式数)にこだわったからである。

 西久保体制の最大の売りは格安運賃だった。2009年10月、事前に航空券を購入した場合の割引運賃の下限を全路線とも9800円以下に設定。ドル箱の羽田─福岡線の普通運賃は1万6800円だったが、搭乗3日前までに予約する「前割3」の最低運賃を9800円としたのだ。おまけに7日前までの「前割7」だと9300円、21日前だと「前割21」で9000円という安さだ。

 一方、ANA、JALの羽田─福岡線の普通運賃は3万6800円だったから、単純計算でSKYは4分の1ということだ。新幹線の東京─博多間の自由席(2万1210円)と比べても半値以下。この「9800円効果」でANA、JALからだけではなく、新幹線や高速バスの利用客がSKYに流れた。

 その後、9800円路線は定着し、経営は黒字になった。西久保氏は米国の格安航空会社のサウスウェスト航空をビジネスモデルとしたが、リーマン・ショックで完全に息を吹き返した。デフレ時代に突入し、ローコスト経営のSKYに出番が回ってきたのである。

 勢いに乗ったSKYは2010年11月、西久保氏が国際線への進出計画を発表。2011年春に、欧州のエアバス社と世界最大の旅客機エアバス「A380」を6機購入する契約を結んだ。さらに9機追加購入するとして、15機編成で世界の11都市と日本を結ぶ壮大な青写真を示したのだ。

 だが、「A380」は1機280億円もする。SKYは国際線進出のため、JALを退職したパイロット、客室乗務員など470人を大量採用するという大風呂敷を広げたが、「A380」の大量購入という身の丈を超えた経営が引き金となり、2015年に民事再生法を申請する破目に陥ったのである。大手の攻勢や「A380」発注の取り消しに伴うトラブルも急激な経営悪化に拍車をかけた。

◆「国交省とのパイプ」で再建図る

 破綻後は投資ファンドのインテグラルが50.1%、日本政策投資銀行と三井住友銀行が共同出資するファンドが33.4%、ANAホールディングスが16.5%を出資。政投銀出身の市江氏が社長、インテグラル代表の佐山展生会長とともに経営再建を進めてきた。

 だが、佐山、市江の両氏は金融のプロだが、航空業界はズブの素人。規制でがんじがらめの航空業界は、国交省とのパイプがなければ身動きひとつ取れない。

 少々乱暴な言い方になるのはお許しいただきたい。国交省航空局がすべての空港の発着枠を決める。航空局のご機嫌を損じたら、発着枠を割り当ててもらえない。民主党から自民党政権に戻ってから、JALが常にANAの後塵を拝しているのを見れば、よく分かる。
航空局が航空会社を意のままに操る絶大の権力を握ろうとするのは、「航空官僚の天下りのポストを確保するため」ともいわれている。

 そこで、再建途上のSKYは国交省元航空局長の洞駿氏を顧問に迎え、指南を仰いだ。

 その効果はすぐに現われた。2019年9月、2020年夏ダイヤからの羽田空港国内線の発着枠について、就航する6社への配分が決定した。既存枠のうち19枠を回収し、16枠を再配分。訪日客を地方へ誘客するための、いわゆる地方路線向けに充てた。この結果、JALは3枠、ANAは1枠減ったが、SKYは36枠から37枠へ1枠増えた。

「破綻したスカイマークに国内線の枠を増やすなんて」と航空関係者から驚きの声が上がったという。洞氏を顧問に迎えた効果である。

 その後も、SKYの攻勢は続く。2019年11月29日、初の国際定期便となる成田─サイパン線の運航を開始した。成田を午前10時15分に発ち、現地時間の午後3時到着。サイパンを午後4時35分(同)に出発し、午後7時30分成田に到着する毎日1往復を運航することとなった。

「創業以来、初めて国際線の定期便。ようやく新しいステージに到達した」

 成田空港で開いた記念式典で市江社長(当時)は、こう強調した。まさに悲願達成である。

 さらに2020年2月から3月まで約1か月間、成田─パラオ線で国際チャーター便を運航中だ。チャーター便で運航を始め、将来的には定期便化を目指すという。サイパンへの定期便就航便に続き、パラオへのチャーター便で国際線事業の拡大に弾みをつけるシナリオだ。

 佐山展生会長は「欧米に飛ばすことを実現したい」と意欲を燃やす。スカイマークは神戸空港を拠点としているため、同空港の規制緩和が実現すれば、神戸から国際線を飛ばす計画だ。

 近年、関西での空港需要拡大を受け、2018年末に関西国際、大阪国際(伊丹)、神戸の関西3空港のあり方を話し合う3空港懇談会が再開したが、結論は出ていない。神戸空港の発着数の7割を占めるスカイマークの意向は、規制のあり方を巡る議論に影響を与えることになる。

 佐山会長は「神戸空港の24時間化と国際化」を求めている。神戸空港の国際線が解禁になれば、サイパン、パラオ線の拠点を成田から神戸に移すことになろう。

◆国際線勝負には幾多の「高い関門」

 スカイマークは再上場を機に、さらに国際線で勝負に出ようとしている。目指すは欧米路線だが、課題も多い。

 国内線はボーイング377-800型機(177席)を使用しているが、欧米路線の実現には、360席以上の中大型機の新たな調達が必要になる。その資金を確保するために株式を再上場し、直接金融でマーケットから資金を吸い上げることにした。

 国際線を視野に入れているSKYは新たな航空機として米ボーイング社の小型旅客機「737MAX」の導入を検討していたが、墜落事故によって同機の運航は停止となった。後継機の選定は難航している。

 サイパン便とパラオ便を大手2社が運航してないのは「儲からない路線」(関係者)と言われているからだ。パラオは親日国。政府はたびたび大手2社に定期便の運航を求めてきたが、2社とも乗り気ではなかった。SKYがサイパン便、パラオ便に参入したのは、羽田空港国内線の増枠を認めてもらうための布石。SKYと国交省の「ギブ・アンド・テーク」といった辛らつな見方も業界内にはある。

 元航空局長の洞駿氏がスカイマークの天下り社長に就任したのは、経営手腕への期待だけでなく、狙いは明々白々だ。政府の要請で、儲からないサイパン便とパラオ便を引き受けた見返りに、「羽田空港国際線の増枠に、(スカイマークを)最優先で加えてほしい」との意思表示である。

 羽田空港の国際線の発着枠拡大に向け、国交省は2月2日、3月29日から運用する新たな飛行ルートのうち、東京都心を低空で通過するルートの飛行試験を初めて実施した。飛行試験は、南風が吹く状況で羽田空港に着陸するルートが対象。午後4時20分ごろから同6時ごろの間、品川区や渋谷区などを超低空で飛行した。

 新ルートに関しては、江戸川区と江東区を飛ぶ北風時のルートの飛行試験が1月30日に初めて行われた。国交省は3月11日までに北風と南風のルートの飛行試験を各7日間実施する。騒音や落下物の懸念から住民の間に反発があり、同省は試験を重ねることによって理解を求めたいとしている。

 新ルートのテスト飛行以上に、国際線事業の拡大を目指すSKYの先行きは、不透明な要素も大きい。果たして「天下り組を社長にしてよかった」となるのか──。

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