小沢一郎氏 野党は人数少ないから荒っぽいやり方は仕方ない

小沢一郎氏 野党は人数少ないから荒っぽいやり方は仕方ない

小沢氏が野党の存在価値について語る

 今国会ほど「野党の存在価値」が問われたことがあっただろうか。野党は政権をチェックする責任をどこまで果たし得たか。総理が国政の節度を失ない、野党に追及能力がなければ、為政者による政治の私物化はエスカレートし、民主政治は機能不全に陥る。

 初当選以来24人の総理に仕え、あるいは野党のトップとして対峙してきた小沢一郎氏(自由党代表)に、「総理とは何か」「野党とは何か」を問うた。

◆聞き手/武冨薫(政治ジャーナリスト)

──総理の権力ということでいえば、民主党政権が終わった後、鳩山由紀夫・元首相が、「総理が方針を示せばみんな従うものだと思っていたが、誰も自分の考えに従ってくれなかった」と語ったことがある。総理に法的に与えられる権力と、それを行使できるかは人によって違う。その差はどこから生まれるのか。

小沢:総理大臣の権力は非常に大きいが、総理一人で何でもできるわけではない。やはり人を使わなければ。そのためには人を説得するだけの力が必要だ。自民党の総裁・総理は、長い時間をかけて人間関係を培い、兵を養った人がなってきた。ポッと出てきた者が「総理の言うことに従え」と命じたところで、誰も聞かない。

──逆にいえば、当時の自民党には総理・総裁に物を言える伝統があった。中曽根(康弘)総理もあなたにさんざん批判された。

小沢:僕は“反主流派”だった(笑い)。

──現在の自民党には、総理に意見できる議員がいない。小選挙区制の導入以降、選挙の公認権を持つ総裁・執行部に逆らえなくなった。

小沢:いや、それは本質的な問題ではない。確かに、地盤を固めきれていない1、2回生議員は執行部の顔色を窺わなければならないだろうが、例えば谷垣禎一君や石破茂君はじめ、党の公認がなくても選挙で当選する力を持っている議員は今の自民党に何人もいる。選挙区の有権者が支持してくれれば何も怖くない。総裁が相手でも自分の筋を通せるはずです。それなのに黙ってしまうから駄目なんだ。

──言う勇気がないのか、言いたいことがないのか。

小沢:両方かもしれないな(苦笑)。

──なおさら政権に厳しく対峙すべき野党も、民進党をはじめ、本気で戦っているようには見えない。

小沢:無気力に見える。野党がやるべきはいい意味の政権批判。僕は、第1次安倍政権のときは年金問題、次の福田内閣はガソリン税問題で攻め立てた。「民の竃」(※注)の話だから必ず国民の共感を得られると信じていたから。それらが響いて安倍さんは退陣した。今でも野党が本当に国民の暮らしを考えて反対すれば共感を得られる。多少荒っぽいことをやってもね。

【※注/都の人家の竈から炊煙が立ち上っていないのを見た仁徳天皇は、3年間租税を免除し、その間は倹約のために宮殿の屋根の茅を葺き替えなかったと伝えられる】

──それはどうか。ガソリン国会の時のように院内でピケを張ったりすれば、国民に冷ややかな視線で見られるだけではないか。

小沢:違います。政権と一体となったメディアが国民にそう思い込ませようとしているだけだ。ガソリン国会では野党がとことん騒いだからメディアが報道し、国民に野党の主張が伝わった。今回の共謀罪だって、野党がもっと騒いで委員会で採決させずに国会を止めていれば、国民は「野党は何を騒いでるんだ?」となる。野党は人数が少ないから、国民に知らせるために多少荒っぽいやり方は仕方がない。

 野党がそういう空気に萎縮して騒ごうとせず、形式的に反対してもすぐに引き下がるなら、政権にとってこれほど都合がいい状況はない。

──「反対ばかりするな」と批判されるのを恐れて「建設的野党」になろうとしている。

小沢:法案を作る役人はあらかじめ修正の“のりしろ”を考えて提出しているから、野党が修正協議に乗ってくればしめたもの。本来、野党は対案を出さなくても困らない。堂々と「基本的な考え方が違うから、政府の法案に沿った対案なんかない」と言えばいい。

※週刊ポスト2017年6月30日号

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