小沢一郎氏 自民党政治は小泉・安倍時代に完全に変化

小沢一郎氏 自民党政治は小泉・安倍時代に完全に変化

小沢氏は今の自民党をどう見ているのか

 今国会ほど「総理大臣の資質」と「野党の存在価値」が問われたことがあっただろうか。国民は森友学園問題と加計学園問題で安倍晋三首相の支持者と友人の経営する学校が国家から特別の優遇を受けていた事実に驚愕し、深い不信感を抱いた。

 では、一方の野党は政権をチェックする責任をどこまで果たし得たか。総理が国政の節度を失ない、野党に追及能力がなければ、為政者による政治の私物化はエスカレートし、民主政治は機能不全に陥る。

 初当選以来24人の総理に仕え、あるいは野党のトップとして対峙してきた小沢一郎氏(自由党代表)に、「総理とは何か」「野党とは何か」を問うた。

◆聞き手/武冨薫(政治ジャーナリスト)

──あなたが相まみえた総理の中で、安倍首相をどう見たか。

小沢:政治の本質は何かという前提で判断すると、吉田茂さん以来、基本的に自民党政治は国民全体の幸せ、すなわち「富の配分の公平」を重視するという理念で政治を行なってきた。田中角栄先生は、地域をレベルアップして大都市と地方の格差をなくすことに力点を置き、池田勇人さんは所得倍増を掲げて国民の懐具合を豊かにしようと考えた。

 政策の切り口はそれぞれ異なるにせよ、自民党の歴代総理は「哲学」を共有してきた。

 しかし、安倍総理はその軌道から大きく外れている。アベノミクスは弱肉強食の自由競争で、地方や弱者の存在を切り捨てる政策だ。上から押しつけるだけの権威主義的な政治手法も自民党の伝統とは異質。歴代総理の中では中曽根康弘さん、そして私が政治家になる前の総理であるけれど、岸信介さんにそういう傾向が強かったように感じる。

──しかし、そうした自民党の伝統的な政治は「利益誘導」と批判され、政治の硬直化と官僚権力の増長を招いた。かつてあなたが「改革」を掲げて自民党を割ったのも、それが理由だった。

小沢:自民党政治の基本理念が間違っていたのではない。当時、権力が長期化したことで様々な弊害が生じていた。時代が大きく変わろうという時に、自民党はそれまでの政策を変えることができなかった。だから政権交代が可能な政治の仕組みが必要だと考えた。僕は政治の本質を仁徳天皇の「民の竃」(※注)の逸話だと考えている。

【※注/都の人家の竈から炊煙が立ち上っていないのを見た仁徳天皇は、3年間租税を免除し、その間は倹約のために宮殿の屋根の茅を葺き替えなかったと伝えられる】

 今は政治家にも「配分の公平」を古くさいと考える新自由主義者的な考えの人が増えているようだが、政治リーダーは国民の暮らしと命を守っていく基本哲学を常に頭に置いていないといけない。

──それが自民党政治から失われたのはいつと見るか。

小沢:小泉、安倍両内閣時代に完全に変わった。強い者をより強く、弱者は滅んでもいいという政治になった。自民党の庇を借りて母屋を取ったわけです。今はもう自民党に本来の住人はいなくなったように感じる。

※週刊ポスト2017年6月30日号

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