混乱続く武漢の医療現場 支えているのは医療従事者の使命感

混乱続く武漢の医療現場 支えているのは医療従事者の使命感

生前の李文亮医師。享年34(写真/AFP=時事)

 今回の新型コロナウイルスという“未知の脅威”に対し、昨年末いち早く警鐘を鳴らしたのは、武漢市中心医院に勤務する李文亮(リウェンリャン)医師(享年34)だった。当初は地元公安当局から“デマを流した”と訓戒処分を受けたが、2月7日に本人が新型肺炎で死去すると評価が一転。批判が高まり、中国政府は手のひらを返したように英雄扱いを始めた。

 李医師は死の直前、自身の感染について、こう語っていた。

「私は眼科医なので、こんなに早く新型肺炎の患者と接触することになるとは思わなかった」

 自らを含め、瞬く間に感染が広がったことに、驚きを禁じ得なかった。

「自分の子供には、医者になれとは言えません。リスクが大きすぎる」

 医師として殉職した者の、偽らざる言葉だ。

 こうした現地での医師や看護師たちの奮闘は、中国メディアが盛んに伝えている。武漢で都市封鎖が始まった1月下旬、ネット上に、病院内で受話器越しに激昂する男性医師の動画が出回った。

「家に帰るなと? 横たわっている患者をどうにかしてくれ! 我々に死ねというのか!」

 現場の壮絶さを表わす一コマだったが、男性医師は後日、限界状態にあった当時を振り返った。

「感情的になり、取り乱してしまった」──。

 当時、男性医師は5日間連続ほぼ不眠不休で働き続け、目は真っ赤に充血。病院の待合室は、常に患者で溢れていた。

 また、湖南省の別の病院では防護服を着脱しやすいよう、医療チームの女性隊員全員が断髪。結婚写真の撮影を控えていた女性は、長い髪を失い涙をこぼしたが、気丈にこう語る隊員もいた。

「迷いはありません。これでウイルスとの戦いに臨みやすくなりました」

 このほか、隔離病棟で働く女性スタッフが、ガラス越しに婚約者と面会するシーンも伝えられた。混乱が続く武漢の医療現場は、こうした人たちの使命感が支えている。

※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号

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