Twitterでマルチ投資詐欺が蔓延 被害者には中学生も

Twitterでマルチ投資詐欺が蔓延 被害者には中学生も

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 スマホが当たり前にあり、SNSでの交流をリアルと変わらない感覚で受け取っている子供たち。彼ら、彼女たちは何かを知りたいときはネット検索で情報を得るのだが、GoogleではなくSNSで検索するのを好む。それゆえに、SNSに潜む大人の悪意によって被害に遭いやすい現実もある。ライターの森鷹久氏が、中学生がTwitterでアルバイトを探しているつもりでマルチ被害に遭ったケースをレポートする。

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 千葉県在住の主婦・広岡美知子さん(仮名・40代)が興奮気味に訴える。

「娘名義の通帳の記帳にいったところ、今年に入って週に一度以上のペースで不可解な出金があることに気がつきました。1月に計6万円、2月に入ってからも計2万円。最初は夫が小遣いに困って勝手に引き出しているのでは?と疑ってしまって…」(広岡さん)

 広岡さんの娘は中学二年生。娘名義の通帳は、娘が小学校に上がる頃に作ったものだ。広岡さんが毎月5千円前後、余裕のあるときは数万円を入金、制服や参考書を購入する場合には適宜引き出したり、残高は40万円前後あった。通帳とカードは、印鑑と同じ引き出しに入れてあり、家族の誰もがありかを知っていたが、カードの暗証番号を知るのは広岡さんと夫のみ。しかし夫は否定するばかり。

「そこで夫が娘の部屋を調べたところ、何枚ものiTunesカード、通販サイトのギフトカードが見つかりました。お金を勝手に引き出して、携帯電話を使って欲しいものを買っているに違いない、そう思って娘に問いただしたんですね……」(広岡さん)

 当初娘は「知らない」といって下を向いたままだったが、突如堰を切ったかのようにワンワンと泣き出し「盗られた」と漏らしたのである。

「頭をよぎったのは"いじめ"です。現金ではなく、ギフトカードを持って来させるのか、そう思ったんです。でも違いました」(広岡さん)

 観念した娘が広岡さん夫妻に見せてきたのは、娘が使っているTwitterのアカウントだ。そこには「中学生でも稼げる」などといった投稿を行なっているユーザーと娘のやり取りであった。「娘は洋服や、スマホゲームのポイントが欲しいと思い、アルバイトができないかと考えていたそうです。中学生、バイトなどのキーワードでヒットしたのがそのアカウントで、相手の言うままにやったところ、8万円分のギフトカードコードを盗まれたと……」(広岡さん)

 広岡さんの娘を騙したTwitterユーザー・Xは、毎日のように「金が稼げる」「高額バイトあり」などと投稿している怪しげなユーザーで、中には中高生に向けたような書き込みも散見された。このパターンは、筆者がこれまで取材してきたのと全く同じく、Xは書き込みを見てメッセージを送ってきたのが大人であれば、高額な情報商材を売りつけたり、あるいは特殊詐欺の出し子、受け子のリクルートを行なっているとみられる。相手が小中学生、高校生ならば、次のようなやりとりで、詐欺行為を働いていたという。

「娘はよく理解していないものの“投資だ”と言われてやりとりをしていたと言います。例えば、娘が1万円のギフトカードを買ってその“コード”を送れば、Xは1万円分のポイントを手に入れますよね。娘は、Xの指導に従って、他の人に同じように"投資"を持ちかけ、誰かから1万円分のポイントが入手できたら、半分はXに、娘には半額が入るから、二人以上勧誘すればすぐに元が取れ、あとは勝手にお金が増えていくと…」(広岡さん)

 大人ならすぐにわかる、典型的なマルチへの勧誘、違法行為そのものであるが、小中学生には、いや、高校生にだってこれが犯罪だと理解はできないだろう。広岡さんの娘はXに従い、TwitterだけでなくInstagramやTikTokにもアカウントを作り「中高生でもできるアルバイト」などと投稿し、第三者に"投資"を促していた痕跡を残していた。

「娘は教えられたように、誰かに1万円を投資してもらえるよう何人かとやりとりはしていたものの、結局成立しなかったようです。無知な娘は被害者であるだけでなく、加害者にだってなり得たのです。娘の被害だけで済んだのが不幸中の幸いというしかありません」(広岡さん)

 未成年者とSNSを巡っては、援助交際などのトラブルが多く発生し、中には誘拐や殺人事件にまで発展するケースもあり、身体に危害を加えられる犯罪に巻き込まれやすいイメージが強いだろう。そのため未成年者、小中学生にまで詐欺師の魔の手が及ぶとは、数多く取材をしてきた筆者でさえ予想だにしていなかった。

「友達みんなが使っている」などと子に懇願され、運営規約に違反してまで子供にSNSを使わせる親もいるはずだ。子供に携帯やスマホを持たせない、SNSは全て禁止すると一方的に押さえつけることもまた現実的ではない。規約は規約として守り、SNSを子供に使わせる場合は、親がこのような実態をきちんと把握し、事前にしかるべき教育が行なわれるべきだ。

 販売店では保護者がペアレンタルコントロールをすること、フィルタリング機能を利用して閲覧制限やSNSの利用制限をかけることをすすめているはずだが、子供にせがまれて使用制限をかけない親は少なくないらしい。だが、警察庁生活安全局少年課が発表した「平成30年におけるSNSに起因する被害児童の現状」によれば、被害に遭っている児童のうちフィルタリングを契約当時から利用していないが81.1%、契約時には利用していたが 被害時には利用していなかったが6.9%だった。SNSをきっかけに犯罪被害に遭った子供のうち実に約9割が、被害時に無制限にネットを使えていたことが分かっている。

 どこにでもゴキブリのように湧く詐欺師たちが、弱い者だけを狙っていると言う現実がある以上、防御は自分自身で、そして親が行うほかないのだ。

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