加熱式たばこ「三つ巴の戦い」 愛好者はどこまで増えるのか

加熱式たばこ、米フィリップモリス「IQOS」がシェア独占 「glo」も追撃の構え

記事まとめ

  • 加熱式たばこのシェアを独占しているのは「IQOS(アイコス)」で品薄状態が続いている
  • JTが全国拡販に乗り出す「プルーム・テック」専門店も6月29日に銀座にオープン
  • 英ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「glo(グロー)」も7月より販売地域を広げる

加熱式たばこ「三つ巴の戦い」 愛好者はどこまで増えるのか

加熱式たばこ「三つ巴の戦い」 愛好者はどこまで増えるのか

「プルーム・テック(右)」は「IQOS」をどこまで追撃できるか

 近ごろ、オフィスや街中の喫煙所、居酒屋などに行くと、みるみる愛好者が増えていることに気づく「加熱式たばこ」。その名の通り、従来の紙巻きたばこと違って火を使わず、専用のたばこスティックやカートリッジを本体に差し込み、電気で加熱しながら吸う新型たばこだ。

 いま、加熱式たばこのシェアを独占しているのは、他社に先駆けて2016年4月から全国販売(試験販売は2014年11月~)している米フィリップモリスの『IQOS(アイコス)』である。

 日本でのアイコスの売れ行きは、今年3月時点で本体300万台以上が普及し、品薄状態が現在も続いている。単純に2000万人いる全喫煙者の10%以上のシェアを優に獲得した計算になる。また、「ヒートスティック」と呼ばれるアイコス専用たばこの販売本数も、国内たばこ市場全体の約1割を占めるまでになった模様だ。

 ここまでアイコス人気が高まっているのはなぜか。ユーザーに聞いてみると、大体こんな答えが返ってくる。

「最初は違和感があったけど、紙巻きたばこと同じような“吸いごたえ”が実感できるうえに、燃やさないからタール(たばこ燃焼時に発生する有害物質)が出ないので、将来の健康不安も少しは解消できる」(40代男性)

「吸った後に吐き出す煙のほとんどが水蒸気で、有害物質が1割以下だと聞いた。いま、受動喫煙が大きな問題にもなっていて、たばこの煙で他人に迷惑をかけるのがイヤだったので、(紙巻きから)アイコスに変えた」(30代女性)

 つまり、自分や他人の健康に対する配慮から、〈燃焼派〉から〈加熱派〉に乗り換えた喫煙者が多いというわけだ。『分煙社会のススメ。』などの著書があるジャーナリストの山田稔氏もこう分析する。

「選挙の投票行動をみても分かるように、日本人はその時のムードに流されやすい。近年の健康志向、禁煙志向のなかで喫煙の健康被害が一方的に強調されている状況下において、自身の健康リスクに過敏になり、他者危害・他人への迷惑を配慮する愛煙家が増えているのだと思います。

 能動喫煙、受動喫煙の本当の健康被害について、何らかの疑問は抱いていても、声にしにくい。従来の喫煙スタイルは、自分にとっても周囲の人にとっても良くないのでは、と思っているのではないでしょうか。本当の愛煙家はマジメなのです。

 一方で、最近は“家庭内喫煙”にも規制をかけようという行き過ぎた動きまで出てきています。公共施設や飲食店の屋内に加え、ベランダもダメ、家庭内もという規制強化社会の中で、自衛手段として加熱式たばこを選択する人たちが増えているのだと思います」(山田氏)

 そんな中、アイコスの牙城を崩そうとするライバルの動きも活発になってきた。

 6月29日、高級ブランド店が建ち並ぶ東京・銀座4丁目にお目見えしたのは、日本たばこ産業(JT)が満を持して全国拡販に乗り出す加熱式たばこ『プルーム・テック』の専門店だ。昨年3月よりインターネットと福岡市内限定で販売していたが、やはり品薄状態が続き、一時生産をストップしていた。

「プルーム・テックは、たばこ葉を燃やしたり、高温で加熱もしない、JT独自の低温加熱方式により、たばこの嫌なにおいが発生せず、空気の汚れもほとんどありません。また、プルーム・テックのたばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)には健康懸念物質はほとんど含まれておらず、紙巻たばこの煙に含まれている量に比べて約99%も低減されています」(JTのEPマーケティング担当者)

 銀座店で早くもプルーム・テックを手に入れた30代男性は、「アイコスに比べて“吸った感”は薄いですが、臭いがまったくないので家の中で吸っても家族に文句を言われないかも。形状が細長くてオシャレなので女性の愛好者も増えそう」と話す。

 さらに、宮城県で試験販売をしてきた英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の『glo(グロー)』も7月より販売地域を3都府県に広げ、アイコスを追撃する構えだ。

 いよいよ三つ巴の本格的な販売合戦が始まろうとしている加熱式たばこ。果たしてアイコスに出遅れたJTとBATはどこまで巻き返し、紙巻きたばこ以外の市場シェアを拡大させることができるか。

「テレビCMや商品広告が厳しく規制されている現状では、先行デバイスに追いつくのは容易ではないと思います。

 ただ、喫煙率が低下しているとはいえ、成人人口の約2割がスモーカーであり、その多くはいまだに従来の紙巻きたばこです。その意味では加熱式たばこの潜在需要は相当あるので、たばこ葉アイテムの多様化、販売チャネルの拡大、認知度アップなどに努めれば、需要を拡大することは十分に可能だと思います。

 そして、数年内に喫煙者の2割、3割が加熱式たばこに移行していくのではないでしょうか。大きな問題や事故さえ起きなければ、やがては加熱式が主流になっていくと思います」(前出・山田氏)

 しかし、問題は国や自治体による「たばこ規制」の行方だ。

 前出のように、加熱式たばこは有害物質を極力減らした点で多くのユーザーを獲得しているが、「たばこ葉には変わらずニコチンが含まれているうえ、吐き出した煙も完全に無害とは言い切れない。加熱式たばこの健康への影響は証明されたものではない」(医療関係者)との指摘もある。

 現在、“屋内禁煙”の法案化を目指している厚労省も、〈加熱式は受動喫煙による健康被害の知見が十分でないため、たばこの概念に含めたうえで、健康被害が明らかでないものを政令で規制対象から除外可能な形にする〉との見解を示している。

 つまり、「疑わしきは罰せず」ではなく、とりあえずすべての加熱式たばこを規制の対象に入れた後に、徐々に外していくという“奇妙な方針”だ。

「従来の紙巻きたばこは『受動喫煙による健康被害が明らかだから規制する』という立場を取っており、明らかに矛盾しています。本来は健康被害が明確に証明されたものについてのみ規制対象にすべきでしょう。

 こうした何でも規制ありきの行政が続けば、やがて紙巻きたばこ同様の一方的な健康被害データを持ち出してきて、普及拡大のネックになる可能性はあります」(山田氏)

 いずれにせよ、新しい加熱式たばこの爆発的人気によって、これまでの「喫煙文化」が一大変革期を迎えていることは確かだ。

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