「なんでお前らそんなにBBQが嫌いなんだ? 楽しいぞ」

「なんでお前らそんなにBBQが嫌いなんだ? 楽しいぞ」

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が考察

 ネットでは、広く人気を集めていても嫌われるものがある。そのひとつにバーベキューがある。手軽なレジャーとして家族や友人と楽しんだことがある人も多いと思うが、なぜか一部からはとても嫌われているのだという。その状況について、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が考察する。

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 千葉県印西市の会社の敷地内でバーベキュー(BBQ)をしていた24歳男性が大暴れし、同僚に押さえられ、そして駆け付けた警官4人にも押さえられ警察署へ搬送。20分後、警察署で意識を失い、その2週間後に死亡した。

 ネットではなぜかBBQに関する事故・事件があると大いに盛り上がる傾向がある。最たるものが、今年5月に岐阜県瑞浪市で発生した死傷事件だ。住宅地の庭先で子供も含めた十数人でBBQをしていたところ、「うるさい」などと叫んだ隣の家に住む26歳の男に刺され32歳の男性が死亡。42歳の男性が軽傷を負った。男は以前から近隣に文句をつける人物として知られ、引きこもりだったという。

 いずれもネット掲示板・2ちゃんねるでは盛り上がるイシューとなったのだが、「バーベキュー」「BBQ」というキーワードが反応される結果となった。

「これでまた警察がー警察がーで賠償金狙いで騒ぐんだろうな ほんとバーベキューやるやつってイメージ悪くなったな」

 こんな差別的書き込みもあった。

「サイコパスが集まると、必ず死人が出る、バーベキュー大会」

 ネットでは「BBQをやる人間はマナーが悪い」という通説があり、岐阜の件では、「住宅街でうるさくし、煙を出す行為こそ迷惑である」という前提の元、加害者を擁護し、被害者叩きが加速した。テレビでは現場をCGで表現していたが、TVのCG上では5人しか映っていなかったのに25人もいたというコラージュ画像が作られ、いかに迷惑なBBQだったかの“印象操作”を行なう者も出た。

 さらには、テレビの取材に被害者の兄が答えた「嬉しい時の絶頂のバーベキューでこんなことになっちゃった」という悲しみのコメントさえ、「絶頂バーベキュー」というネットスラングにされてしまい、以後BBQの話題となると「絶頂」の言葉が書かれるようになった。今回の千葉の件が報じられた後はこんな感想が書き込まれた。

「こっちが絶頂しちゃうね おうちで焼いた肉と酒がどんどん旨くなっちゃうよ」

「こっちが絶頂しちゃうね」の意味は、「他人の不幸でメシがウマい」を意味する「メシウマ状態」というネット用語と関連し、「絶頂」=「嬉しい」ということである。「おうちで焼いた…」以下は、「BBQで出てくる食べ物の質は著しく低いし、外は暑い。BBQをやるヤツは馬鹿」という文脈である。

 どうやらBBQは「楽しい仲間とワイワイ」である「リア充」の象徴と見られていることが分かる。また、BBQでは酔っ払った若者が大はしゃぎをして見苦しい面があるほか、ビキニの美女をはべらす男がいたりして、羨ましさの象徴となっているようなところもある。

 こうした面もBBQ叩きに繋がっているのだろう。「なんでお前らそんなにバーベキューが嫌いなんだ? うちでもやるけど楽しいぞ」というコメントもあるが、これは一般的な感覚からすれば、素朴な疑問だろう。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。

※週刊ポスト2017年7月14日号

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