安倍首相発言の嘘 コロナ、IR汚職めぐる検事の定年延長

安倍首相発言の嘘 コロナ、IR汚職めぐる検事の定年延長

嘘の上塗りが…(時事通信フォト)

 さすがに国民も気づき始めたことだろう。安倍晋三首相の言葉に、「誇張」や「フェイク」、「大風呂敷」が交じっていることを。振り返れば今に始まったことではない。政権復帰からの7年間、首相とその周辺は、嘘に嘘の上塗りを重ねてきたのではないか。そして今、塗り固められたはずの“嘘の壁”が崩れ落ちようとしている。

◆「WHOも日本を評価している」

 チェコスロバキアの共産党支配を無血で打倒した「ビロード革命」の中心人物で、劇作家でもあったハヴェル大統領は、地下出版された著書『力なき者たちの力』の中で全体主義体制下の社会をこう描いている。

〈権力はみずからの嘘に囚われており、そのため、すべてを偽造しなければならない。過去を偽造する。現在を偽造し、未来を偽造する。統計資料を偽造する…〉(阿部賢一訳)。そして人々はそれを信じているように振る舞わなければならず、〈それゆえ、嘘の中で生きる羽目になる〉と。

 いつの間にか、日本も「権力者の嘘」の中で人々が生きて行かなければならない国になっているのではないだろうか。

 安倍首相は息を吐くように嘘をつく。新型コロナウイルスの対応に批判が高まると、自民党議員との会合でこう胸を張った。

「WHOも(日本の対応を)評価している」(2月21日)

 そのWHO(世界保健機関)の進藤奈邦子シニアアドバイザーが、新型コロナの緊急セミナーで、「中国は光が見えた。今、世界中が心配しているのは日本」(2月14日)と警鐘を鳴らしているのは聞こえないらしい。

 国会中継では、総理大臣がついたひとつの嘘を守るために、役人たちが嘘をつき、嘘が嘘で塗り固められていく様子をリアルタイムで見ることができる。

 その嘘は東京地検特捜部のIR汚職事件の政界捜査をストップさせた異例の人事をめぐって飛び出した。

 安倍首相は捜査が自民党の複数の議員に向かうと、国家公務員法の規定を使って政権寄りの黒川弘務・東京高検検事長を次の検事総長に据えるために定年延長を閣議決定し、特捜部ににらみを利かせた。

 ところが、この閣議決定には“法律違反”の疑いがある。従来の政府の法解釈では「国家公務員法の定年延長規定は検察官には適用されない」とされ、野党の追及に人事院の松尾恵美子・給与局長も「現在まで同じ解釈を続けている」と認めた。黒川氏の定年延長の法的根拠が崩れたのである。窮地に立たされた安倍首相は、松尾答弁の翌日、国会で大胆な嘘をつく。

「今般、国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」(2月13日)

 法解釈を変えて黒川氏の定年延長に適用できるようにしたという苦しい説明だが、人事院側の答弁と180度食い違う。折れたのは松尾局長だった。「言葉が正確ではなかった」と自分の国会答弁を撤回したのだ。

 法務省と人事院はその後、法解釈を変更した証拠として協議文書を国会に提出したが、作成日が明記されていない怪しい代物だった。行政文書で日付がないなどありえない。国民の目には、総理の嘘を守るために官僚たちが役所をあげて「嘘の正当化」に走っているように映る。

※週刊ポスト2020年3月13日号

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