コロナ騒動で注目、「欧米は人権意識が高い」という極端な考え

コロナ騒動で注目、「欧米は人権意識が高い」という極端な考え

パリ郊外の日本食店への差別的書き込みを伝える「ル・パリジャン電子版」

 新型コロナウイルスが凄まじい勢いで世界中に広がり、人々を不安に陥れている。その影響で、ふだんは目立たない差別意識が露骨になってきた。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、コロナウイルス騒動でクローズアップされている人種差別と安全対策について考察する。

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 欧米でアジア系の人々が「コロナウイルス!」と呼ばれて差別される事態が起きている。たとえば、中国人が経営するパリの日本食店では、「コロナウイルス 出て行け ウイルス」とスプレーで落書きされた。アジア系の人々がSNS上で「私はコロナウイルスではない」と表明する運動も発生。それだけアジア系が虐げられているのだろう。これが自由・平等・友愛の精神なんですかねー(棒読み)。

 これを見ると“白人様”の中にはいまも多くの差別主義者がいるんだな、ということが分かる。あぁ良かった。欧米の人々こそ“人権意識が高い”と述べる一部日本人の極端さが浮かび上がるからだ。

 日本のリベラルと呼ばれる人々は北欧やフランス、アメリカ(トランプ支持層を除く)の民度の高さをネットで称賛する傾向がある。そして日本がいかにダメかをドヤ顔で主張するが、一部白人様の人権意識のなさに目をつぶるなよ。

 称賛の対象となる人物は恵まれた人生を送ってきた白人様たちということであり、これらの国の恵まれた人生を送っていない人の中には、移民や外国人に対しては良い感情を持っていない人も多い。

 私は1987年から1992年までアメリカで中高時代を過ごしたが、日本人へのバッシングはひどかった。当時の日本は経済的にアメリカに対して優位に立っていたため、いたくプライドを傷つけられたのだろうし、「黄禍論」は根深い。

 保守的な中西部の田舎ということもあるのだが、背が低いことや一重まぶたであることでさえ揶揄の対象となる。学校のロッカーには「このJAPめ、オレらがもう一度原爆落とす前にさっさと日本に帰れ」なんて落書きをされ、学校はこれをまったく問題視せず卒業までの1年半放置された。結局これは人種差別の一種でしかない。だからこそ私はアメリカ人というだけで立派とも思えないし、北欧だろうがフランスだろうがクソみたいなヤツは大勢いると感じている。

 その国の実情を知るには、映画を観ればそこそこ分かるもの。海外映画では暴力シーンや差別シーンは度々登場する。当然ながら「きれいでない白人様」も存在するのである。

 一方、日本ではコロナについて、多分「怒られたくない」「人でなしだと思われたくない」という感情があったことが大いに影響したことだろう。中国・武漢がヤバい状況になっていることは1月上旬に分かっていたが、1月24日の春節の時期に安倍首相は中国人観光客を歓迎する意向を北京の日本大使館HPに掲載(現在は削除)。

 箱根の個人商店が「中国人お断り」の紙を出したことがネットで「人種差別」だと猛烈なバッシングをくらった。これを批判した人は全力で冒頭のフランスの件についても叩かなくてはいけない。もっとも店主の行動は人種差別ではなく、安全対策ともいえるが。国がそれをやらなかったから個人がやったということだ。中国からの渡航は1月中旬までにはさっさと禁止すべきだったのである。

 しかし怒られたくない日本政府と役人は「観光業者から怒られたくないし、人権派からも怒られたくないもんね〜」とばかりに「歓迎」の意向を出し「人から人への感染はない」と言いきった。各国が中国様からの渡航を禁止したのを知り、ようやく追随。まさに日和見主義。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2020年3月13日号

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