コンビニ「おにぎり戦争」の今 独走するセブンの自負

セブン-イレブンがおにぎりリニューアル 米飯類の売り上げはパン類の1.5倍

記事まとめ

  • セブン-イレブンが精米方法や海苔の包装フィルムを見直すなどおにぎりをリニューアル
  • リニューアルされたおにぎり5品のうち、鮭やツナマヨは販売数で1位、2位を占める
  • ファミリーマートの幹部によると、パン類よりもおにぎりのほうが利益率は高いという

コンビニ「おにぎり戦争」の今 独走するセブンの自負

コンビニ「おにぎり戦争」の今 独走するセブンの自負

全面的にリニューアルしたセブン-イレブンの手巻きおにぎり

 いまやコンビニ売り場に欠かせない「おにぎり」。大手チェーンの中でも毎年のように改良を繰り返して断トツのクオリティを誇っているのがセブン-イレブンだが、今年も精米方法や海苔の包装フィルムを見直すなど、全面的なリニューアルを実施した。なぜ、セブン-イレブンはここまでおにぎりにこだわるのか。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。

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 店頭で繰り返し買う、リピート率1位商品はセブンカフェ、2位がおにぎり──。これはセブン-イレブン・ジャパン(以下SEJ)の自社電子マネー、nanacoの集計データの結果だという。それだけに、手巻きおにぎりのリニューアル発表会も力が入っていた。

 発表会場は老舗料理屋の「つきじ治作」(同・中央区明石町)で、会場となった2階の広間へ行く途中、中庭に広がる池には優雅に鯉が泳いでいる。手軽で身近な商品であるおにぎりの新作発表の場としては、やや演出過剰の感もなくはなかったが、SEJの園田康清・米飯・麺類シニアマーチャンダイザーはこう話した。

「最初に発表場所を聞いた時は私も驚いたが、これまで42年間、当社はおにぎりの品質を磨き続け、かつ品質を守り抜いてきたという自負があり、より新作おにぎりの価値をお伝えできると考えてこの会場を選定しました」

 1974年に1号店がオープンしたセブン-イレブンでは、1977年におでんが登場、翌1978年におにぎりを発売しており、この2つは同社の看板商品で双璧。ただ、おにぎりで言えば発売40周年の一昨年が節目の年だ。同年にも厳選米おにぎりを発売してはいるが、今回は、なぜこのタイミングでおにぎりの刷新だったのか。

「例年、気温が上昇してくるこの時期からおにぎりの販売も、より上がってくるので、さらに美味しいものをお届けしたいということでこのタイミングになりました」(前出・園田氏)

 セブン-イレブンの加盟店に端を発したコンビニ業界の24時間営業問題からちょうど1年。SEJはその後もスマホ決済での失態等、後ろ向きの話題が目立った1年でもあったから、看板商品のリニューアルで一度、重い空気を払拭したいという思いもあったかもしれない。

 2014年以降、消費者の支出額は米よりパンのほうが大きい状況が続く中、SEJでは米飯類(弁当、おにぎり、寿司など)の売り上げがパン類の1.5倍あるという。その米飯類で中核を占めるのがおにぎりで、「セブン-イレブンの、いわば生命線になる商品という認識」(園田氏)だけに、これまでも改良に次ぐ改良を重ねてきた。

 今回のリニューアルのポイントは、包装フィルムの仕様を5年ぶりに刷新し、密閉度を高めた新パッケージを採用したことが1つ。もう1つが精米法も14年ぶりに変更し、低温精米を採用したことで、米への負荷をより減らして本来の旨味を向上させたという。海苔のパリパリ感も一層増し、焼成法は昨年、特許を取得したそうだ。

 SEJが今回発表したリニューアルおにぎり5品(鮭、ツナマヨ、辛子明太子、梅肉、昆布)のうち、鮭やツナマヨは販売数で1位、2位を占めるボリューム商品。ちなみに鮭、ツナマヨのおにぎりは訪日外国人の間でも人気らしい。

 こうした点はファミリーマートローソンのおにぎりでも同様の傾向があるが、ローソンの場合、親会社である三菱商事が2014年秋、1460億円を投じて、ノルウェーのサケ養殖大手のセルマックを完全子会社化したことから、太い調達ルートができたことも大きい。

 実際、ローソンのおにぎりで売れ筋の上位はツナマヨ、焼鮭ほぐし、それにプレミアムの金しゃりおにぎり焼きさけハラミがベスト3で、鮭商品が2品入っている。

 定番のおにぎり以外では、ローソンでヒットした「悪魔のおにぎり」などもある。これは以前、南極地域観測隊が夜食として食べていたおにぎりをテレビが紹介して以降、SNSなどで話題となり、それをヒントにローソンが独自開発したものだ。2018年10月から発売して定番商品となり、「一時は、不動の販売数1位だったシーチキンマヨネーズの販売を超えていたこともある」(同社幹部)という。

 ローソンは最近も「お茶づけ海苔味おにぎり」や「あさげ味おにぎり」などを販売、ナチュラルローソンで2012年から売り出した、もち麦入りおにぎりは現在、青い看板のレギュラーローソンでも販売するヒット商品になっている。一方、ファミリーマートは、帝人が開発したスーパー大麦を使用したおにぎりが話題になった。

 対するセブン-イレブンでは、チャーハンやオムライスのおにぎり版といった変化球商品もラインナップに加えているものの、園田氏は次のように話している。

「おにぎりは毎日食べる方もいて、鮭やツナマヨなどの商品が基本メニューであることは普遍。面白味や新しさの打ち出しも、健康米を中心に検討していきますが、どこに注力するかはコンビニチェーンごとに少し違うでしょう。

 当社では、毎日買っていただけるボリュームゾーンの優先度を高めています。最近は、セブン-イレブンでもたとえば牛肉を使ったおにぎりも結構、売れるようになってきていますが、あまり奇をてらわず、定番商品中心なのは変わりません。

 また、ベーシックなおにぎりは、40代から60代の比較的年代の高いお客様に売れる傾向があって、そうした年代の方は食べる量が減っている中で、お弁当より相対的におにぎりを選ばれているのではないかと。

 おでんなら、かき入れ時は冬場という季節的なトレンドがありますが、おにぎりは年間を通して相当な数の販売をしているので、いずれにしろ、飛びぬけて重要なカテゴリーなのです」

 2018年度のおにぎり販売数22億7000万個という数字を聞けば、セブン-イレブンがいかにおにぎりに注力しているかが分かるだろう。ちなみに、自前のおにぎり専用工場はローソンで約40か所、SEJは倍の約80か所をそれぞれ擁し、その差も大きい。

「パン類は日持ちがするので、おにぎりに比べて廃棄ロスが少ない商材です。一方、自社工場で完結できるおにぎりに対し、パン類はプライベートブランド商品であっても、ある程度はパンメーカーさんの協力が必要になってくる。つまり、パン類よりもおにぎりのほうが総じて利益率は高いのです」

 こう語るのはファミリーマートの幹部だが、同社では、パン類はおにぎりや弁当以上の売り上げがあり、大手パンメーカーを巻き込んで昨年、今年と「うまいパン決定戦」といったイベントも開催するなど、最近はパンに注力しているイメージが強い。

 ともあれ、より利益率が高いおにぎりは、激しい競争の中で各社拡販を狙い、今後もあの手この手の販促キャンペーンが繰り広げられていくだろう。再び園田氏が語る。

「販促はいろいろなパターンをテストしていく。従来のおにぎり100円均一もそうですし、30円引きにしたらどうなのかとか、あるいはドリンクとのセット価格、さらに時間帯によって価格を変えるなど、いろいろなチャレンジを実施し、お客様から一番ご支持いただけることをやっていきます」

 昨年7月から、ミニストップが「100円おにぎり」を仕掛けて話題となり、集客面では一定の成果を上げているものの、価格勝負の体力消耗戦ということもあって、同社は3期連続で赤字見通しと業績は厳しい。

「価格を下げないと太刀打ちできないから下げているのかな、というふうに見える部分も正直(ミニストップには)ありますし、われわれの土俵に上がって来られないチェーンは価格訴求の対応になっていくでしょうね。当社ではこれまでもこれからも、まず何より、おにぎりの品質を一層高めていくことを第一に考えています」

 園田氏のこの自信に満ちた言葉に、今回のリニューアルで“おにぎりのセブン”の定評をまた一段上げ、競合チェーンを引き離したいという意志が窺えた。

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