安倍首相の嘘 同調圧力に官僚だけでなく国民をも飲み込む

安倍首相の嘘 同調圧力に官僚だけでなく国民をも飲み込む

嘘を付くことに麻痺していないか(時事通信フォト)

 安倍首相の言葉に、「誇張」や「フェイク」、「大風呂敷」が交じっていることを国民は気づき始めている。政権復帰からの7年間、首相とその周辺は、嘘に嘘の上塗りを重ねてきたのではないか。安倍首相の嘘を守るために国家をあげた“公文書偽造”まで行なわれた。モリカケ疑惑だ。

「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」(2017年2月)

 この嘘が財務省を揺るがす事件につながった。安倍昭恵夫人が「名誉校長」を務めていた森友学園に対する国有地の格安払い下げ問題で、財務省が売買交渉記録を改ざんし、昭恵夫人の関与を示す記述を全面削除していたことが発覚、近畿財務局の担当者が自殺し、財務省は局長以下20人の大量処分を行なったことは記憶に新しい。

 元理事長の籠池泰典氏には一審で「懲役5年」の判決が下ったが、財務省の職員は全員不起訴、昭恵夫人は捜査の対象にもならなかった。

 安倍政権の看板政策「国家戦略特区」での獣医学部新設が首相の“悪友”が経営する学校法人に認可された不透明な経緯が問題となった加計学園疑惑でも、安倍首相の発言が争点になった。

 首相は加計学園の特区申請を知った時期を、「(国家戦略特区と認定された)今年1月20日に初めて知った」(2017年7月)と答弁した。

 ところが、愛媛県の文書には、その2年前に首相と理事長が面会し、「安倍首相が新しい獣医大学の考えはいいねと応じた」という加計学園の担当者の証言が記されていた。

“絶体絶命”かと思われた首相を救ったのは加計学園側だった。「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、誤った情報を伝えてしまった」と担当者が証言をひっくり返したのだ。

 このように首相の発言に合わせて下が自分の発言を変えるという構図が現在の「検事長の定年延長」や「桜を見る会」問題につながっている。

 しかし、官僚機構が嘘をつくことに麻痺してしまうと、総理大臣に裏付けの不確かな情報がどんどんあげられ、不正確な情報をもとに国が運営されるようになる。

 今年1月の施政方針演説にその弊害が見られる。安倍首相は演説で、「東京から一番遠いまち」とも呼ばれる島根県江津市に東京から移住し、地方創生交付金を利用してパクチー栽培に取り組んだ若者を地方創生の成功例として実名で紹介し、「『地方にこそ、チャンスがある』。そう考え、地方に飛び込む若者を、力強く応援してまいります」と訴えた。

 ところが、その若者は昨年末に江津市から転居していたことが判明した。

 施政方針は総理大臣が今年1年間の国の針路、重点政策を国民に伝える重要な演説で、各省からあげられた情報や政策を秘書官たちが吟味してスピーチライターが原稿にまとめる。その過程で基本的な情報のチェックが行なわれていなかったために、実名で紹介された若者は名誉を傷つけられることになった。

 安倍政権が7年間の長期政権で政治を嘘で塗り固め、国民に正確な情報を伝えようとしなかったために起きた失態だろう。上智大学文学部新聞学科の水島宏明教授の指摘。

「いまの日本の政治を見ると、安倍首相の言葉がたとえ嘘でも、閣僚や政治家、官僚たちは従い、その言葉が正しいことであるように振る舞っている。首相の言葉に対する同調圧力によって、まるで彼らが自発的に安倍体制に奉仕していくようなシステムが作られているようにも見えます。

 この状態がまだ続くようであれば、政治家や官僚だけではなく、メディアも国民までも、安倍首相の嘘に対する同調圧力に飲み込まれ、何が嘘なのかさえもわからなくなっていく危険があります」

※週刊ポスト2020年3月13日号

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