上野千鶴子氏 “自宅看取り”失敗しない医者の見抜き方

上野千鶴子氏 “自宅看取り”失敗しない医者の見抜き方

自宅看取りについて語る社会学者の上野千鶴子さん

 社会学者・上野千鶴子さんが在宅医療の医師・小笠原文雄さんに67の質問をぶつけてベストセラーとなった『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』から4年。ますます在宅医療の必要性が増し、注目度も高まっている。新著『なんとめでたいご臨終』を上梓した在宅医師の小笠原さんと上野さんの「在宅医療を考える」スペシャル対談は、「女性セブン」2017年7月20日号で大反響を呼んだ。今回は、在宅医療が死生観に繋がっているという話にまで発展した。

上野:私は講演で良い医者の見分け方をよく聞かれるんです。その時、2つのことを言います。1つは、在宅医療が儲からない時から在宅医療に参入していた医者は良い医者です、儲かることがわかってから参入した医者には、アタリとハズレがあります、と。

小笠原:うまいですね(笑い)。

上野:あと、もう1つの必殺の見分け方は、訪問看護師さんの口コミです。訪問看護師は複数の医者と付き合っているので、目利きですよ。

小笠原:そう、目利きです。あと、在宅ホスピス緩和ケアの医師も、あの地域は誰々がいいとか全部知っているので、そっちでもいいですね。

上野:やっぱりその地域の訪問看護師さんがいちばん強力ですね。

小笠原:「病院における緩和医療学」を学んだ在宅医が増えているのは良いことです。在宅医が増えることは、それだけ多くの地域でたくさんの人が笑顔になれるということですから。

 ただ、あまりにも「緩和医療の専門だ」という自負が強すぎると柔軟性に欠けたり、知らないことを聞く勇気がない医師もいるんですね。

上野:私たちはそれを、「在宅の病院化」と呼んでいます。

小笠原:そうですね。

上野:今、医療機器もどんどんコンパクトになって、様々な装置を在宅に持ち込めるようになっているでしょう。

小笠原:持ち込めますね。

上野:在宅を病院の病室並みの水準に持っていくことも、やろうと思えばできる。また、病院と同じことができるなら在宅に移行してもいいと考える患者や家族もいる。これが「在宅の病院化」。それをプロとしてやりますよ、という医者まで出てきました。

小笠原:でも、自宅で病院並みのことをやると、早く死ぬことが多いんじゃないかなあ。せっかく家にいるんなら、なるべく何もせずに大らかにしていた方がいい。『なんとめでたいご臨終』にも載せましたが、ぼくが考案した「あくび体操」がいいですよ。

上野:あの「あくび体操」はシンプルでいいですね。

小笠原:ええ、あくびがいいんです。

上野:私の口から言うのもヘンですが、在宅は引き算の医療。医療をする側も受ける側も、そこを納得しなければいけない。在宅医療の草分けでいらっしゃる小笠原先生に、そういうことをはっきり言っていただかないと。

小笠原:機器さえつければ、生きられる。でも、意識はあるのに身動き一つできない。そういう状況がいいのかどうか。それを望まれるかたは機器をつければいい。でも、望まないかたにもつけるのはどうでしょう。実際は望まないかたが多いですよ。

上野:それは基本的な死生観に関わると思いますね。住み慣れた我が家に戻るということは、高度化した医療で生かしてもらうということではなく、日常生活を選ぶということ。死ぬ運命を受け入れるかどうか、という死生観に関わってきます。

小笠原:ぼくは患者さんに言うんです。「もし何かあっても、家で死んだら本望だと思えばいいじゃないの」と。そう言うとみなさん、結構長生きされるんです。不思議でしょ。

上野:家に戻った人はみんな言いますね、病院だと自分は患者だけど、自宅だと患者は自分の一部に過ぎない、と。

小笠原:誰でも最期まで家で過ごせる時代になりましたが、これからの時代は、家に帰ってから、朗らかに生きて笑顔で死ぬのか、眉間にシワを寄せて生きるのか。自分で決められる時代になってきたと思いますね。

撮影/杉原照夫

※女性セブン2017年7月27日号

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