犯罪者を糾合して革命を起こす「犯罪者同盟」の評価と変節

犯罪者を糾合して革命を起こす「犯罪者同盟」の評価と変節

評論家の呉智英氏

 1960年代から1970年代にかけて活動していたとみられる結社のひとつに「犯罪者同盟」というものがある。その主要メンバーのひとりが死去したとの報をうけ、評論家の呉智英氏が、その評価と、その主要メンバーが晩年にどのようなところへたどり着いたのかについて振り返る。

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 宮原安春が今年一月に死去していたと、友人から聞いた。しかし、購読している数紙の新聞に訃報記事を見た記憶はない。宮原は一応ノンフィクション作家ということになるだろう。

 宮原安春という名を知ったのは、1970年代初めだったろうか。私が大学を卒業してほどない頃だったと思う。犯罪者同盟の一員としてである。うえっ、と思っただけで、著作を読む気にもならなかった。当時、宮原は犯罪者同盟の機関紙(というのか)以外に著作はなかったはずだから、読もうにも読めなかった。

 犯罪者同盟については、1960年代後半、学生時代に知った。結成は1961年秋。私は中坊であり、全く知らない。大坊になり、年長の友人たちの口から聞いた。議長だか委員長だかが平岡正明で、宮原安春は書記長か何だかだろう。同盟員は総員で五、六人。全員が役職者だったのではないか。とにかく、犯罪者を糾合して革命を起こすという結社だった。

 何年か後に、平岡正明は『あらゆる犯罪は革命的である』という本を出した。そうすると、戦時中に支那で捕虜を斬殺した戦争犯罪者も革命家だし、日本の敗戦直前に満洲に侵攻し略奪・殺戮・強姦の限りを尽くしたソ連兵も革命家である。ああ、革命家っておぞましいなぁ、とは思わなかったが、おかしなリクツを唱える人間がいるもんだなぁ、とは思った。

 犯罪者同盟については、1966年、梅本克己・佐藤昇・丸山真男の鼎談集『現代日本の革新思想』(河出書房、後に岩波現代文庫)で嘲笑されている。「犯罪者同盟なんて言うからどんなすごいことをするのかと思ったら、なんのことはない『悪徳の栄』一冊万引きしただけなんだな(笑)」と。

 この嘲笑に怒りをぶつけたのが吉本隆明である。『自立の思想的拠点』で、犯罪者同盟をこう擁護する。「やろうとしても万引きひとつできない半病人が何をほざくのだ。犯罪者同盟が安保全学連のなかから派生したということは、ロシア革命成立前史が証明するように、あらゆる政治闘争がその敗北と退潮の情況で生みだすものの象徴である」。

 例によって、日本語ではなく吉本語で書かれているから意味はよくわからない。ただ、その三十年後、吉本はオウム事件に際し、麻原彰晃を高く評価するとぶち上げた。まあ確かにねぇ、本の万引きどころか、地下鉄サリン事件だけで死者十三人、負傷者六千人の被害者が出たのだから、吉本が「麻原彰晃を高く評価する」のは、一貫性があるにはある。

 一方、吉本隆明に擁護してもらった犯罪者同盟は、どうか。

 どうやら、同盟は自然消滅したらしい。平岡正明は、後年、荻野アンナと組んで横浜の町起こしに尽力した。宮原安春は『祈り 美智子皇后』(文藝春秋)を出した。あるいは宮廷革命でも企図した本かと思って読んだが、そんな気配は微塵も感じられなかった。なんだかなぁと思う。バッカなことばっかり言ってたんだなぁ、と思う。

●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。

※週刊ポスト2017年8月4日号

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