コロナ騒動でアクティブ叩き 年長者を敬う価値観が崩壊か

新型コロナウイルス感染拡大で「アクティブ高齢者叩き」 若者や中年の不満が爆発とも

記事まとめ

  • ここ数年、目にするようになった「アクティブシニア」は団塊の世代を指すことが多い
  • 新型コロナを巡り「アクティブ」と「ジジイ・ババア」を組み合わせたネット投稿もある
  • 「充分人生を謳歌したから迷惑かけるな」的価値観の若者や中年の不満が爆発との見方も

コロナ騒動でアクティブ叩き 年長者を敬う価値観が崩壊か

コロナ騒動でアクティブ叩き 年長者を敬う価値観が崩壊か

アクティブは褒め言葉だったはずが

 ここ数年、目にするようになった「アクティブシニア」という言葉がある。高齢者のなかでも、特に2007年以降に定年を迎えた団塊の世代を指すことが多い。ステレオタイプな高齢者の趣味にとどまらず消費欲が旺盛なその世代は、新型コロナウイルスの感染が目立つ世代でもある。コロナ騒動によって「アクティブ●●●」がネガティブな意味に変化し、背景にあったはずの価値観も壊れつつある様子について、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。

 * * *
 コロナ騒動でネットでしきりと書かれるようになった言葉が「アクティブ」だ。これに「ジジイ」と「ババア」を組み合わせる。高齢者が発熱したり咳が出るというのに外で活動し、その後陽性と判明した時に使われる。

 5ちゃんねるでは「行田の60代感染女性 池袋のライブハウスに来場、スポーツクラブでダンス、三味線教室に参加、赤十字病院にも訪れる」というスレッドに「アクティブ」と多数書き込まれた。

 用例としては「アクティブにも程がある」「どんだけアクティブなんだよババアwww」などだ。

 確かにこの女性はアクティブだ。下痢の症状が見られた翌日にライブハウスへ行き、その翌日から2日連続でジムでダンスなどをし、2日目は公民館の三味線教室にも行っている。5日後にまたジムへ行き、90代の母親を連れて2回赤十字病院にも行っている。

 ほかにも「ハワイから帰国した愛知の60代女性が感染、ジムで接触した70代男性も感染」「千葉の70代女性が高熱のまま空路で富山へ。以後、富山、岐阜へのバス旅行完遂」「静岡の60代男性がクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号から下船後にジム2回利用も虚偽申告」「神奈川の70代男性は発熱後にジムを5回利用し濃厚接触者1406人」などがある。これには「楽しそうな人生だなあ」などと書かれる。

 大阪のライブハウスでも多数が感染したが、高知や栃木などの遠方からやってくるなどこれまたアクティブだ。

 語源は高齢者の持つ莫大な資産を使わせたい政府や企業が高齢者を称える「アクティブシニア」だが、これだとホメているように見えるため「ジジイ」「ババア」という蔑称を使っている。

 安倍晋三首相は学校の休止を求め、子供達には行動を規制したものの、大人は自由に動き回っている。この一貫しない対応が批判されるとともに、ネットでの「アクティブ」な高齢者叩きに繋がっている。

 クルーズ船の騒動の最中でも「どうせカネと暇のあるジジイとババアだろ」的なやっかみがあったし、ハンガリーで15人の日本人が感染を疑われ病院に隔離されたが、当初は高齢者だと決めつけ、「こんな時期にジジババは遊びに行くな」と叩かれた。だが、実際は大学生14人と引率の教員1人だった。

 感染者数が世界2位となったイタリアでは、感染者は高齢者よりも若者を優先的に治療すると発表したが、これには拍手喝采。「イタリアはよく分かってる」と書き込まれた。

「高齢者は充分人生を謳歌したのだからあまりもう迷惑かけるな」的価値観を抱く若者・中年が今回は不満を爆発させている状況にある。昨年「上級国民」と大批判された池袋暴走事故の加害者・飯塚幸三元院長(88)も妻と一緒にフレンチを食べに行くために車を運転し、事故を起こした。これもアクティブと解釈される。

 若者・中年はそんな時間もないしカネもない。不況の時期しか経験していないし将来も不安だ。だからこそ“逃げ切り”が可能なアクティブシニアが叩かれている。「年長者を敬いましょう」的価値観崩壊は間近だろう。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2020年3月27日号

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