38才で刺繍開始の女性、今や生徒40人でバッグは10万円台も

38才で刺繍開始の女性、今や生徒40人でバッグは10万円台も

プロ刺繍家の石川玲さん(57才)

「刺繍と出合って、人生が大きく変わりました」。壁一面の窓から陽の光が差し込むアトリエ兼教室で、刺繍した自作のバッグやアクセサリーに囲まれた石川玲さん(57才)はにっこりと微笑む。もともと趣味で始めた刺繍だが、現在はプロの刺繍家として制作活動を行いながら、スクールも開き、その生徒数は今や40人に!

 昔からファッションに興味があり、服やバッグにビーズ刺繍をしていたというが、習い始めたきっかけは自分の服やバッグにスパンコールを付けたかったからだという。

「刺繍したポーチを友達にあげたらとても喜んでくれて、独学ではなくちゃんと勉強したいなと、思っていたんです。そう思い始めて1年くらいたった38才のとき、偶然にも近くにあったカルチャーセンターで半年間だけ刺繍教室を臨時開講すると知って、通い始めました」

 もともと、好きなことは時間を忘れて熱中する性格。講師から「開講以来、いちばん熱心な生徒」と言われるほど、刺繍にのめりこんでいった。臨時クラスが終了した半年後には本校に入学。そこでインドの伝統的なビーズ刺繍であるアリワークに出合う。そのオリエンタルなデザインやビーズの輝きは、石川さんをさらに刺繍の世界に引き込んでいった。趣味ではなく仕事にしたい──そう思うようになったのは43才の時だ。

「雑誌に載っているバッグを見て、これを買いたい、ではなくて同じものが作れるようになりたいと思ったんです。刺繍の学校に通いながらバッグ作りの学校にも通って、革の知識を得るために靴屋の工房でも働きました」

 地道な努力を続け、友達からビーズ刺繍を施したフォーマルバッグの注文が入り始めた。趣味が仕事になったのは、ほんの少しの後押しだった。

「友達からの注文なので、まだまだ仕事にできないはずなのに“もしかしたらいけるんじゃない?”って思ったんです。それで、49才で仕事を辞めてアトリエを買って、『刺繍作家になる』って公言しました。最初は友達に笑われたけれど、教室を始めて、青山や銀座で展示会を開けるようになっていきました」

 商品は数千円のものから10万円台のバッグまでさまざま。今年6月に開いた展示会では展示商品の約8割が売れる人気ぶりだ。10月下旬から二子玉川高島屋にて展示販売会「刺繍を超えた刺繍たち」が開催予定だ。

 そんな石川さんにとって刺繍の魅力は、無心になれること。

「人ってやっぱり、人間関係に悩んだり落ち込んだりします。けれど刺繍は、人の心と関係なくがむしゃらにできる。やっている瞬間は忘れられます。それに、もっと作品を作りたい、生徒さんに喜んでもらいたい、と夢が広がっていく。いつも未来に向かっていると、若く元気でいられるんです」

 石川さんのホームページの写真は息子が撮影したもの。カメラマンとして働く息子とは切磋琢磨しあう関係だ。

「私が趣味を仕事にできたように、生徒さんたちも、趣味が仕事につながるようになったらうれしいです」

※女性セブン2017年8月10日号

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