首相が反主流派に大臣手形バラ撒き 政権失った10年前酷似

首相が反主流派に大臣手形バラ撒き 政権失った10年前酷似

政権維持のためにはなりふり構わず?

「溺れる者は藁をもつかむ」というが、安倍晋三首相は政権維持のためになりふり構わぬ“抱きつき作戦”に出た、という情報が永田町を駆け巡っている。

 安倍批判の急先鋒の村上誠一郎・元規制改革相をはじめ、中谷元・元防衛相など反主流派の有力議員に様々なルートで「入閣候補に挙げられている」との情報が伝えられ、“大臣手形”がバラ撒かれているというのである。

 村上氏といえば首相の人事を「お友だちか、同じ思想を持っている人か、イエスマンの3パターンしかない」と批判し、中谷氏は首相の加計疑惑対応を「権力者は『あいうえお』だ。焦らず、威張らず、浮かれず、えこひいきせず、驕らず、それを戒めないと信頼を得られない」とこき下ろして反主流派の“喝采”を浴びた人物だ。

「いくら倒閣の芽を摘みたいからといっても、これでは反主流派総活躍内閣じゃないか」

 見え見えの懐柔策に、党内からはそんな声が挙がっている。

 安倍首相が「一強」と呼ばれてイエスマンしか入閣させなかった時は歯牙にもかけなかった顔ぶれだけに、入閣候補に名前が上がること自体、首相の尻に火が付いていることを物語っている。しかし、入閣情報で目先の党内の反乱は防げたとしても、“空手形”に終われば反主流派の不満は倍増して政権にはね返る。

 まさに改造人事の失敗から政権を失った10年前とそっくりな道だ。第1次安倍政権は、閣僚の失言が原因で支持率が急落して参院選に大敗。党内から退陣要求があがると、安倍首相は、「改革を前に進めるために続投する」と退陣を拒否して内閣改造に取りかかった。

 目玉は官僚を掌握できずに「官邸崩壊の原因」とされた当時の塩崎恭久・官房長官を交代させ、後任に菅義偉・総務相を据える人事構想だった。ところが、改造前日、菅氏の事務所費問題が報道され、官房長官就任は土壇場で白紙になった。

「安倍政権の凋落は霞が関の反乱から始まる。加計疑惑は文科省の文書流出で火が付き、稲田(朋美)防衛相が辞任に追い込まれたので防衛省・自衛隊が震源地だ。10年前の菅スキャンダルも官僚に批判的だった菅さんを政権中枢から外すための霞が関のリークだった」(閣僚経験者)

 人事構想が狂った安倍首相は官房長官に与謝野馨氏(故人)を起用し、閣僚に伊吹文明氏、額賀福志郎氏など、首相に批判的だった派閥領袖級の重鎮を並べて総主流派体制を敷いた(8月27日)。

 その結果、改造直後こそ“ご祝儀相場”で支持率が一時的に回復(NNN調査は16.2ポイントアップ)したものの、閣内の統制を失ってわずか30日後の9月26日に退陣を表明したのである。

 霞が関を統制できず、人事にも失敗して党内を掌握できず、国家の統治能力を失ったのが原因だ。まさに今の安倍政権が置かれている状況と重なるではないか。

「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散するほど上がる」

 そう語ったのは安倍首相の大叔父で、戦後最長の首相在任記録を持つ故・佐藤栄作首相だった。「人事の佐藤」と呼ばれ、党内の不満を見事に沈静化させる人事の妙で、内閣改造のたびに政権の求心力を盛り返して見せた人物だからこその言葉だろう。

 安倍首相は大叔父とは真逆の改造人事で文字通り政権の命運を尽き果たそうとしている。安倍政権の崩壊前夜、最後の“悪あがき”は実に見苦しい。

※週刊ポスト2017年8月11日号

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