村上誠一郎氏「首相は武士として自ら身を引かれるしかない」

村上誠一郎氏「首相は武士として自ら身を引かれるしかない」

都議選で自民党の議席は57議席から23議席まで激減 Motoo Naka/AFLO

「安倍政権はそろそろ賞味期限を迎える」。そう言い切るのは、これまで自民党内部から安倍晋三首相の政策・国会運営・人事に警鐘を鳴らし続けてきた村上誠一郎・元行革相。当選10回のベテラン議員が安倍首相に猛省を促した。

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 現政権は限界まで来てしまった。安倍首相が武士として責任を取るならば、自ら身を引かれるしかないこれが私の結論だ。

 7月2日の東京都議選で自民党は歴史的な惨敗を喫した。東京には全国の有権者の約一割が居住し、都議選は国民の声を測る格好の世論調査となる。今回の選挙結果は、安倍首相が政治や行政を「歪めてしまった」と国民の大多数が感じた結果ではないだろうか。

 最後の一撃となったのは加計学園問題だ。その最大の争点は、安倍首相が“お友達”のために政治や行政を歪めて優遇したという疑いである。

 前川喜平・前文部科学省事務次官が一連の行政文書を「間違いない」と認めたのに、菅義偉・官房長官は「怪文書だ」と否定。読売新聞が前川氏の出会い系バー通いを報じると「さすがに強い違和感を覚えた」と前川氏の人格を貶める発言をした。自民党の歴代執行部は今までここまですることはなかった。

 加計問題以外にも、現政権は強引な国会運営を繰り返した。特定秘密保護法の成立、国家公務員法の改正、集団的自衛権の解釈改憲、そして「共謀罪法」の強行採決など、これまでの自民党なら野党の主張を聞いて熟議したはずだが、現政権は国会における野党の意見を軽視して重要な法案を次々と成立させた。

 安倍一強のもとでは派閥のチェック機能が働かない。昔の自民党には“振り子の原理”があり、「コンピューター付きブルドーザーの田中角栄氏」から「クリーンな三木武夫氏」、「経済財政政策通の福田赳夫氏」から「リベラルな大平正芳氏」へと疑似的な政権交代が行われた。しかし森喜朗氏以降、右寄りな清和会政権が続いて「振り子の原理」が働かなくなってしまった。

 安倍首相と同じ「右派」の中曽根康弘元首相には、本人と価値観が異なる後藤田正晴氏や梶山静六氏を登用する器量があった。しかし、安倍首相の周りにいる人はお友達やイエスマンばかりで「大学の同好会政治」のようになってしまった。国の将来を冷静に直言する側近が殆どいないのだ。

 マスコミも問題点を正確に指摘しない。野田毅・前党税調会長は消費税率引き上げ時の軽減税率導入に反対し税調会長を更迭された。しかし、軽減税率の適用を主張する新聞社はこの件をどこまで掘り下げて報じただろうか。また、高市早苗総務相が「政治的な公平性に欠ける放送を繰り返したテレビ局は電波停止の可能性がある」と述べると、萎縮したマスコミが自主規制を始めて組織防衛に入ってしまった。

●むらかみ・せいいちろう/1952年愛媛県生まれ。東京大学法学部卒業。1986年衆議院議員選挙初当選後、10回連続当選。大蔵政務次官、衆議院大蔵常任委員長、初代財務副大臣、行政・規制改革、地域再生、特区、産業再生機構担当大臣、衆議院政治倫理審査会会長など数々の要職を歴任。

■取材・構成/池田道大(ジャーナリスト)

※SAPIO2017年9月号

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