SNSの偽プレゼントアカウントに騙されてしまった人の言い分

SNSの偽プレゼントアカウントに騙されてしまった人の言い分

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 新型コロナウイルス対策のための休校措置により、いつもより長い春休みとなっている学生たち。アルバイトに励もうと思っても、日本中がなるべく外出をしなくなっているため仕事もない。そんなとき、SNSだけでお金がもらえるならと現金プレゼントをうたうアカウントをフォローし、DMやLINEなどのやりとりへと発展させてしまってはいないか。詐欺の手口だとずいぶん言われているのになぜ、信用したのかと問うと「プロフィールに顔写真があったから」と答える人が最近では少なくない。なぜ詐欺アカウントが顔写真を公開しているのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

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「Gです。信用してもらえるよう、顔出しアカウントを開設しました!広告費として10万円ずつ配ります」

 SNS上で「現金やギフトカードをプレゼントする」などといって、ユーザーにフォローや投稿の拡散を求めるアカウントの主、G氏が「顔出し」をしたのは二月の上旬頃だった。言うまでもなく、SNS上に溢れるこうした"プレゼントアカウント"は、そのほとんどが個人情報の入手などのために作られた「フェイクアカウント」である。NHK『クローズアップ現代+』で取り上げられるなど、マスコミも実態を調査した上で報じている。

 ところが、アパレル通販サイトZOZOの元社長・前澤友作氏など一部の著名人が実際にSNSを用いた本当の「プレゼント企画」を実施し、本物の当選者もいる。こういった事例があるために、主に中高生など、若いユーザーの中には誰か分からないけれどプレゼント企画を唱えるSNSアカウントをフォローしたり、書き込みを拡散すれば「金がもらえる」と信じている人も少なく無い。

 冒頭で紹介したG氏のアカウントをフォローし、後にG氏と「LINE」でやりとりをしていたのが、千葉県在住の専門学校生・森下あかりさん(仮名・19才)だ。

「お金がもらえるなら……と、懸賞に応募するようなノリでアカウントをフォローしました。騙されているか、個人情報が抜き取られるのかなんて、少しも考えませんでした。Gさんからダイレクトメッセージが届いたのは、2〜3日経ってからだと思います」(森下さん)

 G氏は森下さんにメッセージで「自分のLINEアカウントを友達に追加してほしい」と依頼、森下さんもこれにすぐ応じた。

「面識もない人でしたが、顔写真も公開しているし、お金もあってそれなりの地位にいる人かなと。LINEでは、プレゼントの10万円の話は一切なく、月に10万円を簡単に稼げる話がある、副業をしていればアルバイトをする必要がないなど、全く無関係の話が一方的に送られてくるだけ。プレゼントの話をすると"たった一回のプレゼントより継続的に10万円欲しくないか"と返され、それからやりとりは途絶えています」(森下さん) なぜ、会話がかみ合わないのか。そもそもプレゼント企画を実行するつもりはG氏に無く、彼の正体はよくある「情報商材」販売者に他ならなかった。実際にやりとりしただけで被害に遭わなかったと安心するのはまだ早い。G氏とやりとりをしてしまった森下さんのアカウントは今後、そうした販売者の間で「ターゲットになりうる人」として共有されるのだ。

 しかし、筆者が気になったのは、このアカウントが「顔出し」であったこと。継続的に詐欺的に金銭や情報をかすめとることが目的のSNSアカウントは以前から存在していたが、一般的に、こうしたフェイクアカウントが顔写真を使うことはほとんど無い。アップする画像はもっぱら、札束や高級車、高級時計や豪華な料理ばかりで、その人間の顔や本当の属性については一切出てこない。また札束などの写真は、フェイクアカウントで使用するために全く別に撮影された写真であり、写真そのものが詐欺師の間で取引される場合もあるくらいなのだ。

 では、G氏がプロフィールとして使用している写真は誰なのか。本当にこのような人物は存在するのか──。

 その答えはわずか「0.56秒」で判明した。このGなる人物が「自分」としてアップしていた写真をGoogleの画像検索にかけてみると、よくわからない中国語のサイトに掲載された写真と一致していたのだ。その人物は、中国のインディーズ映画に出演するアマチュアの俳優だった。短髪で目鼻立ちのくっきりした端正な顔立ちに、スリムシルエットのジーンズ、トップスは流行にならい「シュプリーム」のパーカーだ。一見すると、日本人の若者に見えるし、東アジア系のどの国の男性であってもおかしくない雰囲気。

 一方、G氏は、SNS上では東京で生活する日本人とうたっていた。しかし画像検索の結果でたどり着いた写真の男性とは、素性が異なる。どちらが本物なのかと比べると、同じ顔で日本人だと主張しているのは、森下さんがやりとりしたSNSアカウントだけだった。G氏が他人の写真を自分だと偽っていると考えるのが妥当だろう。なぜ、単純な画像検索ですぐにわかるような嘘をついてまで、他人の写真を使用するのか。

「出会い系サイト上に存在する偽女性と全く図式は同じ。外国の、そして日本人に雰囲気の似た人たちの写真を勝手に使い、他人になりすまして詐欺を働こうとしているだけです。情報商材系の詐欺師は、自分の顔(とする写真)を見せていれば、相手が引っかかる率が高いと考えている。その為、男女問わず、なりすましに使うための写真を中国や韓国、台湾などのSNSサイトから勝手に引っ張ってくる。写真一枚じゃ不自然だから、同じ人物のあらゆるパターンの写真を集めてストックしています」

 こう話すのは、筆者の取材に答えてくれた元暴力団関係者・K氏。確かにかつて、出会い系サイトには、台湾女性の画像を使って日本人を名乗るサクラのアカウントが多数、存在した。サクラというだけならまだファンタジーを楽しませてもらったという好意的な解釈も成り立つが、なかには詐欺や脅迫が目的のものも存在した。数年前、男子高校生が出会い系アプリで女子高生になりすまし電子マネーを要求した事件があったが、このときは台湾の女子高生の写真を勝手に使用していた。 前述の事件を起こした男子高校生たちは出会い系アプリ内でよく起きている出来事を真似しただけで、その「お手本」にあたることをアプリより前の「出会い系サイト」で組織的に行っていたのがK氏のグループだった。その手法はいまも生き続けており、K氏が関与していた「出会い系サイト」を使った金銭詐取と全く同じ方法は、今なお、他の詐欺事件に踏襲されていると話す。さらには……

「オレオレ詐欺など、あらゆる詐欺がやりづらくなっているので、連中は自分の(ものとする)写真や個人情報を見せて、信用してくれと来る。写真数枚じゃなく、時には免許証の表と裏の写真を見せて"嘘じゃないので見せることができる"と迫ることだってあります。免許証まで見せられると信用してしまいがちですが、その免許証も、実は債務者や詐欺の被害者からだまし取ったもの」(K氏)

 たとえば、先に触れた「プレゼント詐欺」においても「当選したから、個人情報を送れ」などと言われて、免許証の写真を送ってしまえば、こうした詐欺事件に利用されてしまう。その場合、騙された側がいつの間にか「犯罪者」として、被害者から訴えられる可能性もあるのだ。

 その後、筆者はG氏に直接、話を聞きたいとG氏にメッセージを送ってみたが、ブロックされてしまった。

 とにかくあの手のこの手で被害者探しに余念がない詐欺師たち。顔が見えているから、名前を出しているから…と連中の甘言に惑わされてはいけない。「おいしい話はない」そして「属性不明な人のいうことは信じない」という、小学生でもわかるような基本に立ち返りたい。

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