コロナ休園続くテーマパーク TDRとUSJが狙う「反転攻勢」

新型コロナウイルスの影響で休園続くテーマパーク TDRやUSJは反転攻勢早いとも

記事まとめ

  • 新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、テーマパークの休園が続いている
  • TDRとUSJは抜群の集客力を誇っているため、鎮静化後の反転攻勢は早いという見方
  • 新アトラクションも目白押しでTDSは「アナと雪の女王」のアトラクションなどを導入

コロナ休園続くテーマパーク TDRとUSJが狙う「反転攻勢」

コロナ休園続くテーマパーク TDRとUSJが狙う「反転攻勢」

休園続く東京ディズニーランド(時事通信フォト)

 新型コロナウイルス感染拡大の防止策として休園が続く全国のテーマパークや遊園地。東西の2大テーマパークである「東京ディスニーランド」と「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」の損失額は莫大になりそうだが、それでも「再開後の反転攻勢は早いだろう」と予測するのは、ジャーナリストの有森隆氏だ。

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、主要なテーマパークは休園期間を延長している。

 東の雄、東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランド(OLC)は、東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)の2つのテーマパークについて、4月上旬までとしていた臨時休園期間を同20日以降に再延長した。これで休園期間は2月29日から2か月間に及ぶ。

 併せて、4月15日を予定していたTDLの「美女と野獣」をテーマにしたエリアの開業も延期。拡張エリアの開業時期は5月中旬以降にズレ込む見込みだ。TDRが複数の日にわたって終日休園するのは、東日本大震災直後の2011年3〜4月以来、9年ぶりである。

 一方、西の王者、ユー・エス・ジェイ(大阪市)も、2月29日から臨時休業中のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の休業期間を4月12日までとした。延長はこれで3回目となる。

 USJは「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の開業を間近に控えている。当初は2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催前にオープンする段取りだったが、その東京五輪は最大1年延期となった。新型コロナウイルの終息が長引けば、今年最大の目玉施設の稼働開始にも影響を及ぼしかねない。

 TDK、USJとも、ゴールデンウィーク前に再開できるかどうかが大きなポイントとなる。夏までコロナ感染は終息しないとの見方もあり、先行きは不透明だ。

 それでも、コロナが鎮静化すれば、TDRとUSJの反転攻勢は早いと見られている。抜群の集客力を誇っているからである。ボトムからの回復力について、データを基に分析してみたい。

◆2か月の休園で機会損失はどのくらい?

 TDRの2019年3月期の来園者数は3255万人。前年より8%増え、4年ぶりに過去最高を更新した。1日当たり8万〜9万人が訪れており、休日には10万人以上の来園者をコンスタントにキープしている。

 投資家が注視するのは休園が業績に与える影響よりも、その後の回復力だ。テーマパークの復元力といってもいい。

 オリエンタルランドの2020年3月期の連結営業利益の予想は、2019年3月期比16%減の1088億円と、もともとマイナス成長を見込んでいた。コロナ休園が2か月続くことになり、従来予想の大幅な下方修正は避けられないが、考えられるすべての損失を一気に吐き出し、2021年3月期にV字回復を目指すのが賢い経営判断である。

 これは極論になるが、下方修正の額が大きくなればなるほど、2021年同期の利益はプラスの方向への振れ幅が大きくなる。オリエンタルランドの加賀美俊夫会長、上西京一郎社長も絵に描いたようなV字回復を狙うだろう。

 参考になるのは、東日本大震災直後に休園した際の影響だ。2011年3月期に「災害による損失」として97億円を計上した。アナリストは「休園が2か月続けば、大人1人7500円のチケット分の利益だけで300億円程度の営業利益の下振れ要因になる」と試算している。2020年3月決算で営業利益の目減りが300億円をかなり上回るようなら、それは経営陣の先行きに対する自信の表れと考えたらいい。

 回復は早いと見る市場関係者が多いのは、新アトラクションが目白押しだからである。

◆2500億円を投じた8つ目の新エリア

 TDSに設ける8つ目の新エリア「ファンタジースプリングス」の開業を2023年度としている。2500億円を投資した「アナと雪の女王」のアトラクションなどを導入する。今回の拡張は、3400億円を投じてTDSを2001年に開業して以来の大規模なもので、営業エリアは2割程度増える。

 新エリアには「アナ雪」の世界観を体験できるアトラクションに加え、ディズニー映画「塔の上のラプンツエル」や「ピーター・パン」をテーマとする4つのアトラクションを新設する。

◆750億円をかけたTDL史上最大のプロジェクト

 また、2020年4月15日にはTDL内のファンタジーランドを拡張した「ニューファンタジーランド」やディズニーホテルのオープンを予定していたが、コロナ感染の拡大で、5月中旬以降に延期した。こちらは2017年4月から約3年、750億円かけたTDL史上最大のプロジェクトだ。

「美女と野獣」をテーマにしたエリアには、ベルが住む村の入口にベルの父モーリスの家「モーリスのコテージ」(ファストパス発券所)、その先の村の中心にはガストンの噴水、ガストンの酒場をモチーフにしたレストランやショップなどが並び、映画の中に入り込んだような感覚を体験できる。

 森の方へと進むと美女と野獣の城がそびえ立ち、その中のアトラクション「美女と野獣“魔法のものがたり”」は日本のオリジナル。映画で使われた名曲に合わせて踊るように動くライド(魔法のカップ)に乗り込み、音楽につつまれながら、ロマンティックなストーリーに沿った映画の名シーンをめぐる。

 映画「美女と野獣」をテーマにしたエリアを抜けて、さらに森の奥へと進むと、TDL初となる本格的屋内シアター「ファンタジーランド・フォレストシアター」にたどり着く。ここではミッキーマウスをはじめとするディズニーのキャラクターたちがライブパフォーマンスを繰り広げるため、オープン前から注目度が高まっている。

◆再開後は「振り替え入園」が増える

 オリエンタルランドは、TDLとTDSの入場料を2020年4月から値上げすると発表していた。消費増税に伴うチケット価格の改定を除けば、値上げは4年ぶり。大人の1日券を7500円から8200円に、中高生は6500円から6900円に引き上げる。小人は4900円を据え置く。

 チケット価格を値上げしても同社は2021年3月期の入園者が過去最高(3255万人)を更新すると想定していた。これはコロナ・ショックで休園する前の想定だ。もちろん、今回の休園が長引けば入園者数は、それだけ減少することになる。

 それでも、回復力は速いだろう。TDRが一時的に利用できなくなると、反動による“振り替え来園”が増える傾向にあることを、過去の事例が証明しているからだ。2019年10月の台風で週末に休園した際は、再開後の翌週は2日連続で入園制限がかかるほど人が押し寄せた。

 投資家たちの視線は、新型コロナ後のOLCの成長再加速に向いている。

◆「ハリポタ人気」で入場者激増

 一方、USJの運営会社ユー・エス・ジェイは2017年4月、米メディア大手のコムキャストの完全子会社になった。

 年間入場者数は親会社の意向で公表していないが、それでも米テーマエンターテインメント協会(TEA)の調査で知ることができる。2015年の入場者数は1390万人。TDSの1360万人を上回ったと、当時大きな話題になった。映画「ハリー・ポッター」のアトラクションが集客力を一気に高めた。

 直近のTEAによると、入場者数(2018年度)はTDLが世界3位の1790万人、TDSが4位の1465万人だったのに対し、USJは5位の1430万人。TDSが再びUSJを逆転したことになる。1位は米フロリダ州にある、本家本元のウォルト・ディズニー・ワールドのマジックキングダム、2位は米ディズニーランド(カルフォルニア州)だった。

 ここへきて、快進撃をもたらした「ハリー・ポッター」効果が薄らいできた。経営的に見ても、新エリアの導入が絶対に必要となっていた。

◆過去最高の600億円を投じて勝負かける

 そこで、今夏には新エリアを開業する。任天堂と組み、人気キャラクター「マリオ」をテーマにしたアトラクションが登場する。マリオやヨッシーなど任天堂のキャラクターをテーマにしたアトラクションやレストランを新設し、投資額は過去最大の600億円。集客の次の目玉に育てる考えだ。

 最大の売り物は「マリオになれる」ことだ。エリア内で購入できるパワーアップバンドを腕に装着し、USJの公式スマホアプリと連動させる。これでエリア内に点在するハテナブロックをマリオと同じように飛び跳ねて叩けば、コインを集めることができる。獲得したコインはスマホで確認することができる。来場者同士がコイン集めを競い合えるほか、協力して敵のキャラクターを倒すイベントもある。

 合言葉は「#WE ARE MARIO!!」。ゲームとリアルが融合し、入場者はマリオと化す。USJのジャン・ルイ・ボニエ社長は、「次世代テーマパーク体験をお届けする」と宣言した。マリオをテーマにした新アトラクションが大ヒットすれば、ハリー・ポッターとの二枚看板で入場者数2000万人も視野に入ってくる。

 こうして、東西の2大テーマパークは新アトラクションの投入をテコに、新型コロナ後の反転攻勢を虎視眈々と狙っている。

 ここでTDRとUSJの入場者数の推移(会社発表)を見てみよう。

【2010年度】TDR=2536万人/USJ=750万人
【2011年度】2534万人/880万人
【2012年度】2750万人/975万人
【2013年度】3129万人/1050万人
【2014年度】3137万人/1270万人
【2015年度】3019万人/1390万人
【2016年度】3000万人/1460万人
【2017年度】3010万人/非公開
【2018年度】3255万人/非公開
※TDRの入場者数はTDLとTDSの合計

 TDRの入場者数は、リーマン・ショック(世界金融危機)直後の2008年度の2722万人がピークで、その後低迷が続いたが、2012年度に2750万人を記録。そして、2018年度の入場者数は3255万人と過去最高となった。「東京ディズニーリゾート35年イベント」が寄与した。

 TDRにはこんなエピソードがある。「3・11東日本大震災」は、東京ディズニーリゾートを楽しんでいた人々も襲ったが、7万人といわれた入場者を救ったのはキャストと呼ばれる現場で働く従業員たちだった。

 あるキャストは防災頭巾代わりに人気キャラクターのダッフィーとシェリーメイのぬいぐるみを入場者に配った。別のキャストは、入場者の不安を取り除くために「安全の妖精」を演じた。また電車も止まり、夜が近づいてくると、防災食の代わりに、お土産を配る従業員もいた。

 じつは、TDRは「震度6、来場者10万人」を想定とした防災訓練を年180回も行っており、緊急対応のノウハウが蓄積されていた。だから、現場がそれぞれ自分の判断で入場者に対応することが可能になった。そんなキャストの防災対応が大評判になり、ディズニー人気がさらに高まった。震災後も入場者数が減らなかった“隠れた要因”といえる。

 数字を見ても確認できる。TDRの入場者数は2011年度で2万人減となったが前年度比でほぼ横ばい。その後、2012年度は8.5%増と回復し、2013年度は13.8%増と2ケタの伸びを記録した。ものすごい回復力(復元力)である。今回のコロナウイルス禍でも、小休止した後に再び上層軌道に乗せることは十分可能だろう。

 対するUSJの入場者数は開業年度2001年度の1102万人をピークに、その後は800万人台で推移していた。再び、勢いが出始めたのは2011年頃からだ。

 2010年にマーケティングのプロ、森岡毅氏がUSJの再生に招かれた。後ろ向きに走るジェットコースターなどズバ抜けたアイデアを次々と繰り出し、ヒットを連発。2013年度には開業年度以来の1000万人を突破した。

 2014年度にはハリー・ポッター・エリアを開設。爆発的な人気を呼び、2016年度には1460万人を記録した。森岡氏は就任後、入場者数を倍増させたことから、「USJを再生させた男」と呼ばれた。

 株主が交代したのに伴い、森岡氏は2017年にUFJを去ったが、人気エリアが出来れば、強力な磁石のように若い人を引き寄せることを数字が如実に示している。USJも2012年度は10.8%増。2013年度は7.7%増で1000万人の大台に乗せた。こちらの復元力も半端ではない。

 新型コロナウイルス禍は、リーマン・ショックや東日本大震災を超えるほど経済に与えるマイナス影響が懸念されている。だが、強い企業や組織をより強くするという意味では、テーマパークの反転攻勢、V字回復は早そうだ。

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