ネットでは意に沿った発言をしない限り敵とする二元論となる

ネットでは意に沿った発言をしない限り敵とする二元論となる

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

「リベラル」、「保守」とはいったい何かという問題が、最近、ネットでは話題だ。伝統的な左派・右派といった枠組みでの定義はもはや意味がないのではないかという分析から出てきた話題だが、現実の選挙の前では、その党派にわかれた罵倒合戦のようなことがネット上ではたびたび起きている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、両派が罵り合う状況について解説する。

 * * *
 ジャーナリスト・佐々木俊尚氏が「文春オンライン」にて『「ネトウヨ」「パヨク」の罵り合い、そろそろやめてみませんか? 総選挙に向けたひとつの提案』という文章を寄稿した。内容は、選挙においては「党派性」というものだけで考えるべきではない、ということである。なぜ、佐々木氏は「党派性重視」を問題視するのか。同氏はこう説明する。

〈党派は「敵か味方か」「白か黒か」をはっきりさせるので、人を熱狂に駆り立てる。ゆえに人々を動員しやすく、運動は盛り上がる〉

 佐々木氏は「党派性」ではなく、自分自身が正しいと思うことを基に投票すべきでは、と暗に提案しているのだが、同氏の意図については、若干説明が必要だろう。「ネトウヨ」は「ネット右翼」のことで、今回の選挙では主に自民党支持者のことを意味する。希望の党・維新はあまり関係ない。日本共産党をはじめとしてリベラル政党を支持する「パヨク」(≒左翼)については後述する。

 佐々木氏は2000年代中盤からネット上では圧倒的な知名度を誇る論客であり、常に「大人」として、炎上案件があってもバランサーとしての役割を果たしてきた。

 ここ数年間の選挙においては都知事選でも、国会議員の補選、都議選でも「ネトウヨVSパヨク」のネット上の戦いは展開されてきた。いずれも自民党支持者VSリベラル政党支持者という構図だ。

 選挙においては、矢野顕子が過去に歌ったように親同士が敵味方に分裂し、選挙のたびに殴り合いになるのである。今の時代、ネットはその状況になっている。佐々木氏はバランサーとしてのスタンスを明確にするのだが、その都度、基本的には「パヨク」の側から批判が寄せられる。「お前はリベラルを装ったネトウヨだ」と。

 両派とも、自分の意に沿った発言をしない限りは“敵味方”を明確に分ける二元論となり、「ネトウヨ」「パヨク」のレッテル貼りをし、罵り合う。そもそも昨今の市民活動のイシューはおかしい。

「脱原発」に賛成しているのならばそれでいい。しかし、なぜかそれと「憲法九条改憲反対」「朝鮮学校無償化賛成」「加計学園問題は叩け」派が同じ論調なのである。「リベラル」の名のもとに「それらには賛成(反対)しよう」といった談合的状況になっているのだ。その界隈のオピニオンリーダー的な人の号令を待ち、その論調に従う傾向がある。

 そこで一致するのは「反安倍政権」ということである。イシューは関係なく、とにかく安倍政権がむかついて仕方がない人々が連携し、何にでも反対している状況がある。これが佐々木氏言うところの「パヨク」である。

 ネトウヨに関しては、安倍晋三首相のことであればなんでも擁護し、景気の悪化が懸念される消費増税も「必要なことだもんね」と容認。結局政策ではなく、「誰か」が選挙で最も意思決定に影響するのである。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2017年11月3日号

関連記事(外部サイト)