年金改正 繰り上げ受給考える人に有利な2つの制度の中身

年金改正 繰り上げ受給考える人に有利な2つの制度の中身

繰り上げ受給で年金を確保

「年金財政が苦しいから、将来は年金額が減らされていくんじゃないか」。多くの人がそうした不安を抱いているはずだ。

 年金の受給開始年齢は原則65歳だが、現行制度は「60〜70歳」の間でもらい始めるタイミングを自分で選ぶことができる。かといって、年金の「繰り上げ」を選んで早くもらい始めると、毎月の受給額を減らされてしまう。

「年金財政がパンクする前に早くもらっておきたいのはやまやまだが、年金額を減らされて損をするのも嫌だ」という声も聞こえてくる。

 しかし、その考えには誤解がある。実は、年金制度は何歳から受給開始しても平均寿命までの総額があまり変わらないように年金額が調整されている。早くもらうほど受給額が少なく、遅くもらうほど多くなるのはそのためだ。ライフスタイルや老後の人生設計によって選ぶのがいい。

 さらに今回の年金改正で「早くもらっておきたい」と考えている人に有利な2つの制度ができる。

 1つは繰り上げした場合の年金額アップだ。現在は年金額16万円(月額)の人が「60歳繰り上げ」受給を選択すると、年金額は約11万円に下がる。それが新制度では繰り上げの調整率が変更され、月額約12万円もらえるようになる。年金減額の幅が小さくなるのだ。

 月1万円の違いは大きい。60歳から85歳まで25年間で計算すると、年金総額は現行制度で60歳繰り上げを選んだ場合よりざっと300万円も増えることになる。

 もう1つは働いている人も「60歳繰り上げ」を選びやすくなることだ。現在、雇用延長などで働く60代前半の男性の就業率は8割を超えている。しかし、会社員として働きながら年金繰り上げを選ぶと、「在職老齢年金」制度で月給と年金の合計が28万円を上回ると年金がカットされてしまう。

 厚労省は「年金は60〜70歳の間の好きなときに受給できる制度」と謳っているが、実際には、雇用延長で働いているサラリーマンは年金カットによるデメリットが大きすぎるため、事実上、繰り上げを選ぶことができなくなっていた。

 そのデメリットも制度改正で大幅に解消される。60代前半で働きながら繰り上げを選んでも、月給と年金の合計が47万円までは年金カットされなくなるからだ。

「元気なうちにお金を使いたい」「まだ子供の養育費がかかり、60代前半は現役並みの収入がほしい」と考えるなら、会社員として働いている人も、そうでない人も、60歳から年金をもらうことで早めに年金を確保しておく選択は大いにあるだろう。

※週刊ポスト2020年4月17日号

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