コロナ対策で首相より高評価の小池知事、「第二の乱」あるか

コロナ対策で首相より高評価の小池知事、「第二の乱」あるか

宣言発令によって国民生活は大きく変わった(時事通信フォト)

 緊急事態宣言の発令はなぜ遅れたのか──。その裏側には、国民そっちのけで繰り広げられた安倍晋三・首相と小池百合子・東京都知事との権力闘争があった。

 安倍政権は3月28日に発令したばかりの新型コロナの「基本的対処方針」の内容を改定し、緊急事態宣言で自宅で過ごす国民に不可欠なサービスとして「事業継続を要請する」業種を指定した。そこに百貨店、レストラン、喫茶店などと並んで「理美容」(理容室と美容院)を盛り込んだ。

 理髪店は、東京都のリストでは休業要請の対象、政府のリストでは事業継続要請の対象と真逆の扱いになった。

 そうやって準備を整えたうえで、安倍首相は4月7日の会見で「休業させない」と言い切ったのだ。小池氏は直ちに行なうはずだった休業要請を先送りし、政府との調整を余儀なくされ、娯楽施設などへの休業要請が大幅に遅れることになった。

 政治評論家の有馬晴海氏が小池氏と安倍氏の現在の力関係について語る。

「小池知事が新型コロナの感染対策に邁進するのは、一つは危機感の高さであり、7月の都知事選前に有権者にリーダーシップを示す意図もあるはずです。それに比べて安倍首相は緊急事態宣言を出したあとも経済への影響を考えて業界を守ろうとして対応が鈍い。いまや彼我の勢いの違いは歴然としており、小池知事は自民党の協力がなくても都知事選に勝てると自信を持っているから、安倍首相に遠慮はしないはずです」

◆「第二の小池の乱」

 安倍首相は小池氏と因縁が深い。これまで何度も“煮え湯”を飲まされた。4年前の都知事選では小池氏に自民党推薦候補が敗れ、続く東京都議選では小池氏率いる都民ファーストが旋風を起こして“安倍チルドレン”の自民党都議が大量落選する大敗を喫した。

 当時、秋葉原での応援演説で、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と語って支持率が急落したことは首相にとっていまも大きなトラウマになっているはずだ。

 そして前回総選挙では、安倍首相が解散を打った途端に、小池氏が国政に介入して「希望の党」を立ち上げると、民進党議員の大部分が合流してたちまち大きな勢力となった。“小池の乱”である。

 希望の党は失速して小池氏は大きな批判を浴び、結果的には自民党が大勝したが、あのとき安倍首相が「まさか」と肝を冷やしたのは間違いない。しかし、国民の支持を失い、もはや自分の敵ではなくなったはずの小池氏がコロナ危機で再び蘇って自分の前に立ちはだかってくるとは思ってもみなかったのではないか。

 その安倍首相は来年7月の東京五輪が終わると自民党総裁任期を迎える。

 一方の小池氏は今年の都知事選で再選され、東京五輪のあとは事実上、フリーハンドになる。政治評論家の有馬晴海氏は、「第二の小池の乱」が起きる可能性があると指摘する。

「小池知事には余裕がある。感染が長引いたとしても、批判が向かうのは最大限の外出制限をやった小池知事ではなく、緊急事態宣言を遅らせた安倍首相に向かう。だから来年の夏に自分の支持が崩れているとは思っていないでしょう。野心家の彼女は五輪の後に安倍首相の支持がボロボロになっていれば、そのときは自分のチャンスが来ると国政復帰をすでに視野に入れているはず。小池知事の読みが当たれば二度目の小池の乱が起きる」

 安倍首相も小池氏も、国民に「コロナとの戦い」に勝つために耐えてくれという。だが、国のかじ取り役と首都の守り人が危機をよそに権力ゲームに意地を張り合う現実を見せられると、国民は戦意を失ってしまう。

※週刊ポスト2020年4月24日号

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