34歳婚活女子 元彼のコロナ対応を聞き、自身の婚約に疑問符

34歳婚活女子 元彼のコロナ対応を聞き、自身の婚約に疑問符

2年前に別れた元彼からの電話。それは、婚約中の美咲さんを心配するものだった……。(イメージ)

 結婚の「分岐点」をレポートするシリーズ。今回は、婚活中の美咲(みさき)、34歳の場合。結婚の約束をした現在の彼氏と、未練の残る元彼との間で揺れる女心。その背景には、現在の新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあるようだ。危機が炙り出すのは人間の本質か、それとも──。

 * * *

◆2年ぶりにかかってきた元彼からの電話

 美咲さん(34)には、付き合って半年になる彼氏がいる。4つ年下の耕太郎さん(30)。結婚を前提で付き合いはじめ、今年の正月には、耕太郎さんが美咲さんの実家に挨拶に来てくれた。35歳までに結婚、という美咲さんの目標は、ほどなく達成されようとしていた。

 だが、いま、美咲さんは迷っているという。きっかけは、元彼からの連絡だった。

「別れて2年以上になる元彼から、3月に、突然電話がかかってきたんです。何だろうと思ったら、この新型コロナウイルスの状況で、私を心配してくれる電話でした。美咲ちゃん、大丈夫? って。信頼できるお医者さんの先生の話しとか、彼は海外の仕事をしているから、海外の情報を教えてくれたりして。以来、たまにZOOMで話したり、ラインは毎日するようになって……。ちょうどその頃から、彼とぎくしゃくし始めたんです」

 ここで、美咲さんと元彼、そして耕太郎さんとの出会いに遡ろう。コンサルタントとして働く美咲さんは、仕事を通じて、元彼の俊太(しゅんた)さんと出会った。俊太さんは美咲さんの3歳年下。三人きょうだいの長女の美咲さんは、「私は年下でないとダメ」ときっぱりと言う。

◆同棲したものの「まだ結婚は考えられない」

「元彼とは、出会って、すぐに付き合い始めました。お互いフリーだったから、すぐに意気投合したんです。私は、彼の見た目が好みだった上に、やっぱり仕事で出会ったので、仕事ができるところも好きだった。合理的で、リベラルで、海外生活が長いんですよ。よく旅行にも出かけました。私には将来、海外で生活したいという目標があるんです」

 大学生のときからロングヘア以外したことがない、という美咲さんは、長身で、スリムで、フジテレビの三田友梨佳アナに雰囲気が似ている。転職を2回経験し、キャリアを積み重ねてきたバリキャリである一方、結婚して子どもが欲しいという気持ちも強く、35歳までに結婚、という明確な目標を掲げていた。その目標が、俊太さんとの付き合いを阻むことになる。

「付き合い始めた時、彼はまだ26、7くらいだったんです。仕事でも、仕事以外でもやりたいことが多くて、結婚を考えている感じはまったくなくて。それはそうだよね、まだ若いもんね、と私も納得して、彼が30歳になるまではあまりプレッシャーをかけず、じわじわ攻めていこうと思っていたんです。で、同棲したんですよ。忙しくてなかなか会えないから、一緒に住んだ方が合理的だよねって。二人の生活が心地よくなってくれることを期待して、料理も頑張っていました。でも、彼の30歳の誕生日のときに、まだ結婚は考えられないとはっきり言われて、ショックを受けたんです」

 美咲さんはすぐに前を向き、別れを決意した。決断は早いほう、と自己分析する。

「目標を立ててそれを実現する人生を歩んできたので、自分が今、何をすべきかを考える癖がついているんです。それに、ぐずぐずしているうちに、あっという間にアラフォーになる独身の先輩をたくさん見てきたから。ただ、彼は本当に理想的な人だったし、私たち、すごく気が合っていたから、すごく後ろ髪を引かれる思いでした……」

◆こういう人と付き合うとラクだろうな

 俊太さんを忘れるためにも、必要なのは新しい出会いだった。そこで美咲さんは初めて合コンに参加する。これまで、出会いのための出会いには否定的だったが、30歳をすぎた今、持論を曲げることも必要だと考えた。何度か合コンに行き、慣れてきた頃に出会ったのが耕太郎さんだった。

「第一印象は……真面目な普通のサラリーマン(笑)。その合コンでも目立ってるほうではありませんでした。ただ、クラシックやオペラが趣味で、私も小さいときからフルートを習っていてクラシックが好きなので、案外話が合ったんです。子どもが好き、とも言っていたので、好感を持ったというのもあります」

 大手企業で働く耕太郎さんと美咲さんは職場が近く、仕事帰りに食事に行くようになった。真面目なサラリーマンのイメージは変わらなかったが、いつも優しく穏やかで、料理や家事が好きだという耕太郎さんと付き合うとラクだろうな、と思うようになった。美咲さんが大きなプロジェクトを担当し、充実感はあるもののヘトヘトになっていた時でもあった。

「思い返せば、元彼と付き合っていた頃、私の生活は恋愛重視だったんです。そんなに得意でもない料理を頑張っていたし、家事もほとんど私がやっていました。好きだから楽しかったんだけど、一方で、仕事はどこか疎かになっていた。そういう生活に疲れていた部分もあったんじゃないかと……、今になって思います」

 耕太郎さんに告白されたとき、迷わず「はい」と答えたのは、トキメキはなくても、共に生活をしていくにはこういう人がいいのだ、と、納得できていたからだ。付き合ってみると、俊太さんは想像通りラクな彼氏で、将来、子育てしながら働く自分の姿がクリアに思い描けたと美咲さんは語る。

◆危機意識のない彼は、現状を甘んじて受け入れるタイプなのか

 ところが、新しい生活へと踏み出そうとしていた矢先に事件は起きた。元彼・俊太さんからの電話をきっかけに、美咲さんの気持ちが揺れ動き始めたのだ。

「きっかけは新型コロナのことでかかってきた電話だったんですが、私と別れてからの仕事の話や近況でも盛り上がってしまって……、大人になってさらにカッコよくもなっていたし(笑)、やっぱりこの人面白いな、好きだな、と、思ってしまったんです。コロナのせいで、実際に会ったのは数回なんですけどね。同時に、今の彼氏のことは、この人ほどは好きじゃないなと、自分の気持ちに気づいてしまった」

 嫌いになって別れた相手ではないし、焼けぼっくいには火はつきやすい。とはいえ、トキメキだけに流されるような美咲さんではないはずだ。

「はい。いちばんは、危機への対応です。今って非常時ですよね。そういうときに人間の本質が出るというじゃないですか。元彼と今の彼との対応が実は対極で……、それで考えてしまったというのが大きいんです」

 つまりこういうことだった。元彼の俊太さんは早い段階で新型コロナウイルスの危険性を認識し、3月に入るとすぐに在宅ワークに切りかえ、複数人が集う会合や会食はすべてキャンセル、海外含めてさまざまな情報を入手、それらを積極的に発信してもいるという。アベノマスクなど、政府の対応への批判も強く口にする。そういう人だから、美咲さんにも心配の電話をかけてきたわけだ。この機に料理男子になりつつあるという変貌ぶりにも美咲さんは驚かされたし、美咲さんが手作りマスクの作り方を教えると、不器用ながらすぐに実践したという点も好ましかった。

 一方、耕太郎さんは、会社は可能な限り在宅ワークを進めてはいるものの、完全在宅とはいかず、緊急事態宣言が出された後も出社を続けていて、電車にも乗っている。さすがに夜の会食はなくなっているが、スーパーやコンビニに出かけ、これまでとあまり変わらない毎日を送っているように見える。在宅ワークをし、できるだけ宅配を利用している美咲さんとは「危機意識がぜんぜん違う」ことに、いら立ちを覚えていた。

「彼がコロナ前とほとんど変わらない生活を送っているから、怖くて、最近は会ってないんです。仕事の性質や立場上、やむを得ない部分はあると思うんですが、それに対して不満や疑問を持っていないことに怒りを覚えるんですよ。在宅できないの?って聞くと、『こういう仕事だから仕方がない』『自分にできる対策はやっている』と言うだけ。情報も遅い。この人は現状を甘んじて受け入れるタイプなのかなって思わざるを得ません。危機の時に大事なのは、現状を変えることだと私は思うんですが」

◆コロナ以前にはもう戻れない

 俊太さんからの連絡がこの時期でなかったら、元彼に一瞬ときめいただけで、二人の再会は終わっていたかもしれない。美咲さんの人生にとって結婚は大きな目標であり、通過点であるからだ。もちろんそれは今も変わっていないけれど、危機が眼前にあるいま、コロナ以前には戻れないと美咲さんは考えている。

「最近、話す話題もなくなりました。彼は私に、コロナのことばっかり考え過ぎだ、普通の生活を送ったほうがいい、って言うんです。コロナが落ち着いたらまた元に戻るよ、とか。なんてのんきな人だろうと、唖然としてしまう。いま、いちばん大事なのは生き延びることですよね。平時であれば、一緒に生活をするに何の不満もない、いい彼氏であることはわかっているんです。でも、非常時を共有できる気がしない。人生にはまた危機が訪れるかもしれないから、その時に一緒に戦っていけるパートナーではなないと感じているんです」

 耕太郎さんへの気持ちが冷めるのと反比例して、俊太さんへの思いが募っているという。危機が炙り出したのは、二人の価値観の違いだけではなく、美咲さん自身の本当の気持ちだったのかもしれない。
(※名前はすべて仮名です)

関連記事(外部サイト)