ブームの炭酸水シェア1位・アサヒ飲料社長が描く未来予想図

ブームの炭酸水シェア1位・アサヒ飲料社長が描く未来予想図

アサヒ飲料の米女太一社長

 競争激しい飲料業界で、特に売り上げが伸びているのが「炭酸水」。このジャンルを牽引するのが「ウィルキンソン」を擁するアサヒ飲料だ。今後の展開を3月に就任した米女太一社長に訊いた。

──このインタビューシリーズではまず、平成元年(1989年)当時の仕事を伺います。

米女:私は1986年にアサヒビールに入社しました。最初は博多工場(福岡県)に配属され、労務管理に携わりました。

 翌1987年には「スーパードライ」が爆発的にヒットして博多工場でも生産することになった。生産ラインの組み換えやビールタンクの増設などがあって、活気に溢れた若手時代でしたね。それでも生産が間に合わないので、「社員はスーパードライを飲むな」というお達しが出たほど。当時は焼酎ばかり飲んでいた(笑い)。

 その後、1988年夏に東京本社の人事部能力開発課に異動となり、社員研修の企画立案や研修受講者のサポート、採用などの仕事に関わりました。

──1998年と2008年の2度、出向で内閣関連の仕事をされている。

米女:1998年当時、樋口廣太郎(アサヒビール元社長、会長)が経団連副会長を務めていた縁で内閣中央省庁等改革推進本部事務局に勤務しました。

 当時は橋本龍太郎内閣で中央省庁改革が行なわれたばかりの時期で、民間の人事担当者として意見を申し上げました。

 2回目は内閣国家公務員制度改革推進本部事務局に参事官として入りました。各官公庁の人事を横断的に行なったり、官民交流を進めるにはどうすべきか、様々な課題に取り組みました。

 このようなビッグプロジェクトでは、関わる全員が「使命感」を共有しなければならないし、細かな調整力も必要となる。それを知ることができたのは貴重な経験でしたし、当時の人脈はいまでも大きな財産です。

──その後、2009年にアサヒビールからアサヒ飲料に転じている。大手4社のビール業界と違い、飲料業界は競合相手も多い。

米女:上位5社(日本コカ・コーラ、サントリー食品インターナショナル、アサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園)にシェアが集中しているとはいえ、プレーヤーが多く、競争が厳しいのは確かです。

 その中で、「ウィルキンソン」は無糖炭酸水市場でシェア48%のナンバーワン商品となりました。

 ハイボールなど酒類の割り材という印象が強かったが、そのまま飲むという提案がきっかけで大きく伸びました。

──同業他社からも炭酸水が出ている中でヒットしている理由は?

米女:100年以上続くブランドであることに加え、最大の特徴である「強炭酸」の刺激と爽快感が支持をいただいていると考えています。炭酸が長持ちする工夫を施し、キャップを開けた時の「プシュッ」という音にもこだわっている。爽快感が伝わる広告宣伝も含め、総合力を評価していただいているのではないか。

──健康意識の高まりで、消費者の嗜好は無糖飲料へとシフトしている。

米女:その流れは確かにありますが、当社では有糖の炭酸飲料もよく売れています。とくに「三ツ矢サイダー」では、4月7日発売の「『三ツ矢』特濃オレンジスカッシュ」という新しいジャンルにも挑戦しています。

 有糖飲料がお好きな方、愛着を持っている方もたくさんいらっしゃる。海外では砂糖税を導入する国も広がっていますが、日本ではまだ有糖飲料市場が活性化する余地は大きいと考えています。

「三ツ矢サイダー」も100年以上続くブランドです。その認知度の高さと信頼をアドバンテージにしていきたい。

◆ビーガン需要にも期待

──100年超のブランドと言えば、2012年に味の素から買収した「カルピス」もあります。

米女:当時、私は人事総務部長の立場でしたが、素晴らしいブランドを築いてきた会社と一緒に仕事ができることにワクワクしたのを覚えています。「カルピス」101年目の今年は、新しいご提案にも挑戦しました。

「GREEN CALPIS」(4月7日発売)は、豆乳を使った植物ミルクをカルピス菌で発酵させた、乳成分不使用、初の植物由来のカルピスです。健康意識が高い40〜50代の女性が主力ターゲットですが、昨今はビーガン(卵や乳製品も摂らない純粋な菜食主義者)やエシカル消費(環境や社会問題の解決に資する商品を購入すること)の世界的なうねりもあり、そうした需要も期待しています。

──主戦場のコンビニでは24時間営業の限界が取り沙汰されており、そこに新型コロナウイルスの影響も加わった。今後の販路への影響は?

米女:厳しい社会情勢の中でも、コンビニ、スーパー、自販機の3つが主力販売チャネルであることは今後も変わりません。

 自販機の売上げは少しずつ落ちてきていましたが、24時間営業のお店が今後、少しずつ減っていく可能性があるなか、自販機が再び見直されるかもしれない。現在、当社の売上げに占める自販機の販売比率は約25%ですが、その利便性をもう一度ご提案したいですね。

 長年培ってきた当社のブランド力を最大化できるよう、今後も邁進していきます。

【PROFILE】よねめ・たいち/1961年、高知県生まれ。1986年早稲田大学法学部卒業後、アサヒビール入社。2009年アサヒ飲料人事総務部長、2016年同社取締役兼執行役員、2018年常務取締役兼常務執行役員、今年3月23日より現職。

●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。

※週刊ポスト2020年5月1日号

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