ゴーン告白本を読んだ江上剛氏「彼も社員もサル化していた」

ゴーン告白本を読んだ江上剛氏「彼も社員もサル化していた」

話題の本を江上剛氏はどう読んだ?(時事通信フォト)

 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。江上剛氏(作家)は2人の対話をどう読み取ったか。

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 ゴーン氏には一度、テレビ番組でインタビューしたことがあります。ともかく頭の回転が速く、質問に対して機関銃のようにまくしたてる。通訳が間に合わないほどのスピードで、相当緊張した覚えがあります。

 トヨタのハイブリッド車が普及し始めた当時、「これからの時代はハイブリッドではない。電気自動車の時代になる」と断言していたことが印象に残っています。

 彼が日本に来たときは、日本人の中にある種の外国人信仰があり、マッカーサー的な存在として受け止められていたのではないでしょうか。日産も、ゴーン氏の指示に従うことを受け入れていた。

 ゴーン氏は本書の中で、自らを追放した西川廣人・元日産社長をこう評しています。

〈西川は非常に忠誠心が高く、自分を律する人だった。日産社内でのニックネームは「ミスターアグリー」。ゴーンさんにアグリーしている(“I agree.”)という意味だと最近知った〉

 西川氏に限らず、日産全体が会社を立て直すためにゴーン氏にアグリーだったのです。ところが、徐々にみな自分のことしか頭になくなってしまう。ゴーン氏は「日産を立て直した私が多額の報酬を得て何が悪い」となり、他の経営幹部はそれに嫉妬し、自分ももっと欲しいとなる。その上で起きた追放劇だったということでしょう。

 思想家の内田樹さんが『サル化する世界』という本を書きましたが、ゴーン事件というのは、“サル化”した経営者が、同じく“サル化”した社員に追い出されたということだったんじゃないか。今さえよければいい、自分さえよければいいというサル化が事件の本質だったと、本書を読んで思いました。

●江上剛(えがみ・ごう)/1954年、兵庫県生まれ。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。 1997年「総会屋利益供与事件」で広報部次長として尽力。その後、作家に転身。

※週刊ポスト2020年5月1日号

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