難しいと言われる営業職のテレワークで労働生産性上げる方法

難しいと言われる営業職のテレワークで労働生産性上げる方法

テレワークでも営業はできる(イラスト/井川泰年)

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと緊急事態宣言が全国に及ぶ事態となった。休校や在宅勤務が推奨されているため、リモート授業やオンライン会議が急速に普及しているが、なかなか使いこなせないという声も多い。長年、ビジネス・ブレークスルー大学(BBT)で学長を務め、オンライン教育に取り組んでいる大前研一氏が、営業職でも可能なテレワークのやり方について解説する。

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 実際にクライアントと会って密にコミュニケーションを取らなければならない営業のテレワークは、とくに難しいとも言われている。しかし、それもやり方次第で労働生産性を上げることは十分可能である。

 たとえば、セールスフォース・ドットコムのような営業支援ツール(SFA)を活用すると、効率的なルート管理ができる上、ネットにあるクライアントの情報を全部集めてくれるので、営業トークのきっかけができる。

 さらに、アバターロボットやオンライン会議システムのようなコミュニケーションツールを活用しつつ、文書やデータでやり取りを残せば、顧客にとってもメリットがある。営業日報も出先からメールで送れば、上司は「成果」を明確かつ瞬時に把握することが可能になる。「こんにちは」「また来ます」という“顔を出しただけ”の営業は通用しない。

 その代わり、営業マンは直行直帰が当たり前になる。日本の場合、札幌支店や仙台支店の営業マンは北海道や東北地方の広いエリアを担当するケースが多いため、移動時間が長くて実質的に仕事をしているのは週3日で顧客に接触しているのは勤務時間の20%とも揶揄されているが、それもテレワークとSFAなどを併用すれば解消できるのだ。

 国土が広いアメリカではテレワークが広く浸透している。営業マンはレップ(Rep/Manufacturer's Representative)と呼ばれ、旅ガラスのように転々と移動しながら、いくつかのメーカーの製品やサービスを営業して回る。彼らは、車を運転して次の目的地に向かっている間にその日の成果を口頭で各社に報告し、それをメーカー側はアウトソーシングや音声変換装置などを活用して記録に残す。

 日本の営業マンもそういう働き方ができるようになったら、物流拠点以外に支店や営業所は必要なくなり、そこにいる中間管理職も不要になる。担当者が交代する場合も、顧客データの引き継ぎが簡単にできる。

 また、研修はすべて遠隔で可能になるから、通勤がなくなって余裕が出た時間を利用して新しいスキルを身につけるとよい。日本が遅れていた「リカレント教育」に取り組む千載一遇のチャンスである。

 今回の新型コロナ禍を奇貨として、これらの技術や手法を立体的に組み合わせてテレワークによる真の「働き方改革」が拡大すれば、日本の労働生産性は飛躍的に向上するだろう。そうなれば「稼ぐ力」が一気に高まり、災い転じて福となすことができるのだ。

●おおまえ・けんいち/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。

※週刊ポスト2020年5月8・15日号

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